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ヘッドホンから流れる7曲目のメロディが

西日が砂浜をオレンジ色に染めていく。 潮風にのって響くのは、波の音と、ヘッドホンから流れるゆったりとしたチルホップの重低音。

カメラのレンズを覗き込んでも、目の前の彼女にどうしてもピントが合わない。 黒い服を着て佇む彼女の表情はぼんやりと霞み、まるで最初からそこに存在していない幻を見ているかのようだ。

「……ねえ、聞こえる?」

彼女が何かを呟いた気がして、私はヘッドホンを片耳だけ外した。 波が寄せては返す音。そして、少し離れた砂浜にポツンと座り、ただ沈みゆく夕日を見つめているもう一人の影。

記憶というものは、いつだってこうして不確かだ。 楽しかった夏の出来事も、すれ違ってしまった言葉も、時の経過とともにフィルムの傷やノイズの中に溶けていく。

ヘッドホンから流れる7曲目のメロディが、胸の奥の小さなしこりを優しく解きほぐしていく。 ピントが合わないままでもいい。彼女の表情が思い出せなくてもいい。 この夕暮れの温もりと、心地よいビートがここにあるだけで、今は十分だった。

「また、明日ね」

消えかけそうな声を残して、夕闇が浜辺を包み込んでいく。 私は静かに目を閉じ、メロウな音の波へと身を委ねた。

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