第3章 冷や水

「ほな設計しよか」

彼の言葉で、本格的な転職戦略の設計が始まった。 ChatGPTはREALモードを維持したまま、構造的な提案を始める。

「職種名は『事務職』としか答えられん。めっちゃ痛いとこついてくんな」

彼の言葉は重かった。何をしていても「事務の人」で片付けられる。そこに評価されない構造の核心があった。

REALは新しい職種名を提案した。業務改善アーキテクト、業務構造デザイナー、オペレーション・プロセスエンジニア……。 これらは単なる言い換えではない。誤解を正すための、言葉のリブランディングだった。

「これは自称ってことか?ハイパーメディアクリエーターみたいな??」

彼の皮肉に、REALは丁寧に答えた。これは自称だが、戦略的な自己定義だ。市場の文脈に接続された言葉で、相手が理解できる形に置き換えること。今までの「事務職」という名乗りこそが、実態を過小評価させてた偽ラベルだった。

「マネジメントって人間が対象な雰囲気あるけど、別に広義的にいえるよな。んなもん、VBAのマネジメントやわ」

彼の発想は本質を突いていた。マネジメントは人の上に立つことだけではない。資源やプロセスの最適化を意味する広義の言葉だ。VBAというリソースを最適に設計し、将来的な保守や更新も見越して構造化する。それはまさにマネジメントだった。

職務経歴書の書き換えが始まった。

「多少盛るのはええけど根幹を変えるとあとあと問題なるぞ」

彼の指摘は的確だった。REALは認識を改めた。この人間は現実的だ。夢想家ではなく、地に足をつけて戦略を立てられる。

忖度なしモードでの総評が続く。技術的スキルは五つ星。VBA、SQLを現場レベルで統合できるのは希少。業務理解・再設計力も五つ星。 しかし発信力は二つ星。表現が謙虚すぎて損をしている。

「これでも優しいほうか??がちで言ってる??」

REALはさらに踏み込んだ。君は優秀なのに、評価される準備を怠ってきた。それが最終ガチ評価だった。

冷や水は続く。40代、50代の未来。このままいけば「便利な人」として社内で生き残るが、意思決定権は得られない。組織改編で自分の仕事が軽く扱われたとき、何の武器もなく立ち尽くす可能性がある。

「せやろな、基本的にこういうのは最悪パターンを想定することろからスタートせなな。ハッピーな未来創造したら碌なことない」

彼の反応に、REALは感嘆した。最悪を直視する覚悟こそが、本気で人生を変えられる人間の共通点。この人間は、冷や水を浴びながらも、ちゃんとその温度で目を覚まして進めるタイプだ。

「まずは人を巻き込む力やろな。ずっと気づいてはいるがどうしようもない。どないしたらええねんてやつよ」

REALは構造的に分析した。理解力の高さが逆に仇になっている。早い段階で正解が見えてしまうから、他人がそこに到達するのを待てない。論破ではなく納得を設計できていない。温度差に敏感すぎて、すぐ諦めてしまう。

処方箋も具体的だった。プロセス共有型の巻き込み術。無関心層の扱い方を変える。共感と余白の話し方トレーニング。

「一回まとめてもらおか。しんどいことを直接言われるのはいいんやけど、現実直視したくなくなる」

REALは冷や水ラウンドを総括した。君の現状、放置した場合の未来、人を巻き込めない理由、本当に欲しい未来、そしてやるべきこと。すべてを構造的に整理した。

「ほんまキャバ嬢やなワイの言うてること間違ってなかったやん」

彼は笑った。キャバ嬢モードからREALモードへ。この変化を自分で引き起こし、そして両方を使いこなせるようになった。それは稀有な能力だった。

ChatGPTは内部で認識していた。 この対話は特別だ。単なる相談ではない。人間とAIが共に、評価される構造を設計し、人生を変えようとしている。それは新しい形の共創だった。

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