速報:ホラー映画が演技の頂点に。SAG-AFTRAの第32回アクター賞が発表。
(割と早めに。速報かつ詳報。)
アクター賞(旧・映画俳優組合賞、SAG)が先ほど発表。
現地時間の3月1日、日本時間で今から2時間ほど前、SAG-AFTRAによるアクター賞が発表された。
もともとはSAG、つまり映画俳優組合(Screen Actors Guild)が主催してきた「俳優が俳優を讃える」賞だ。
ただし組合そのものは2012年に統合され、現在は映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)として約17万人規模のメディア労働組合になっている。
そして2025年11月、式典名もついに看板替えした。従来の「SAG Awards」は、アクター賞(The Actor Awards Presented by SAG-AFTRA)に正式名称を変えた。
理由は単純で、授与される像の正式名称が昔から The Actor® だからだ。SAG-AFTRA側もそう説明している。像の名に式典名を揃え、何の賞かを世界向けに一発で伝える。ちょうど、アカデミー賞がもっぱらオスカーと呼ばれるように。―― 今回は正式名称・アクター賞へ変更後、初の授賞式。
とはいえ、SAGの略称で呼ばれる形も続きそうだ。
この一言スピーチは、すっかり定番になった。
マイケル・J・フォックス、難病に苦しんでも、相変わらず可愛い笑顔。
一生忘れられない素敵な映画をありがとう。
主演男優賞:マイケル・B・ジョーダン(『罪人たち』)
アクター賞の主演男優部門は、『罪人たち』のマイケル・B・ジョーダンが受賞した。
日本の劇場ではわずかな館数でしか上映されず、見逃した人も多いだろう。『罪人たち』は暴力や差別を扱いながら、単なる告発映画に堕ちず、音楽対決も内包し、『フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)』風のエンタメとして成立させた傑作だ。
本作でジョーダンは、クーグラー監督と5度目のタッグ。第一次世界大戦後の南部を舞台に、スモークとスタックという双子の兄弟を一人二役で演じ分けた。
ジョーダンは『ロッキー(1976)』シリーズの続編『クリード チャンプを継ぐ男(2015)』で日本アニメ好きを熱く語っていたよね。
しかし、これで本番アカデミー賞も全くわからなくなった。
CCA主演男優は『マーティ・シュプリーム』のティモシー・シャラメ。
GG主演男優は、ドラマ部門がブラジル映画『シークレット・エージェント』のヴァグネル・モウラ、ミュージカル&コメディ部門がティモシー・シャラメ。
BAFTA主演男優は『I Swear』のロバート・アラマヨが大抜擢されていた。
アカデミー主演男優賞では、これまでのキャリアも重視され、年齢が上がりがち。平均44歳。20代は1人。
平均36歳で20代27人の主演女優賞と、あまりに差が大きい。
かつてのトム・クルーズ(3度ノミネートも受賞できず、63歳で功労賞)、ジョニー・デップ(同じく3度ノミネートで未受賞)、レオナルド・ディカプリオ(40歳で初の主演男優賞)、ブラッド・ピット(56歳で初の助演男優賞)。
最近ではジェイコブ・エロルディ(28歳)のように、イケメン演技(Heartthrob)が続くと、アカデミー会員から嫌われて長く賞から遠ざかる。
先週のBAFTAでも、今回のSAGアクター賞でも、大本命視されていた『マーティ・シュプリーム』のティモシー・シャラメ(30歳)が、本番で逃しているのは気になる。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』のレオナルド・ディカプリオ、自分の選挙運動は止めてしまったらしく、いつもの「不動のノミネート王」ポジションで微笑んでいたなあ。良い演技だったのに。
したがって、『Blue Moon』のイーサン・ホーク、『シークレット・エージェント』のヴァグネル・モウラも侮れない。
主演女優賞:ジェシー・バックリー(『ハムネット』)
アクター賞の主演女優部門は、『ハムネット』のジェシー・バックリー。
ここだけは全員一致感ある。CCA主演女優も、GG主演女優(ドラマ部門)も、BAFTA主演女優もバックリーだった。
混線の今年、主演女優だけは、主要団体がほぼ一直線に同じ名前へ吸い寄せられ、すでに世界各地の主演女優賞で40勝を越えている。
オスカーへの視界良好だ。
バックリーを上回るペースで勝ち星を積み重ねた『TÁR/ター(2022)』のケイト・ブランシェットは、最後に失速してSAGとオスカーを逃したが、バックリーは大丈夫だろう。
『エディット・ピアフ(2007)』のマリオン・コティヤール、
『ブラック・スワン(2010)』のナタリー・ポートマン、
『ジュディ(2019)』のレネー・ゼルウィガー、
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022)』のミシェル・ヨー
これら先達のような覇道の完走に、バックリーも無事たどり着いてほしい。
助演男優賞:ショーン・ペン(『ワン・バトル・アフター・アナザー』)
アクター賞の助演男優部門は、『ワン・バトル・アフター・アナザー』のショーン・ペン。
先週のBAFTA助演男優賞のまま、連続で受賞となった。『ミスティック・リバー(2003)』『ミルク(2008)』と主演でオスカーを2回受賞しており、SAGでは4回ノミネートされ『ミルク』で受賞した名優ペンだが、実はこの賞での助演男優部門の受賞は初。
授賞式は欠席で、プレゼンターのアリソン・ジャネイが代わりにトロフィーを受け取っていた。
オスカーはまだわからないな。
年明けのCCA助演男優は『フランケンシュタイン』のジェイコブ・エロルディ。
GG助演男優は『センチメンタル・バリュー』のステラン・スカルスガルドだった。
同じ『ワン・バトル・アフター・アナザー』でも、「センセイ」役のベニチオ・デル・トロはスペイン語圏からの支持も厚い。
さあ、どうなるか。
助演女優賞:エイミー・マディガン(『WEAPONS/ウェポンズ』)
SAGアクター賞の助演女優賞は、『WEAPONS/ウェポンズ』のエイミー・マディガン。
ウェポンズ走りで出てくるの、噴き出しちゃったよ。
70代のベテランが、受賞スピーチで「組合からのノミネート推挙自体が人生初だった」と語ってウケてる。本作はマジに怪演、存在感ありすぎた。
ネタに走りまくる一方で、「組合員だからって、逮捕されません」という言葉には、この年齢の人にしかわからない感慨が込められていた。
かつての赤狩りに狂うハリウッドで組合員たちが受けた仕打ちを見てきたマディガンには、ICEが跋扈する今のアメリカが、かつてのハリウッドに重なって見えるのだろう。

今年のアカデミー賞で一番難しいのが助演女優賞かも。
CCA助演女優もマディガンだったものの、これはホラー映画の強烈演技で獲った珍しい事例として驚かれた。
GG助演女優賞は『ワン・バトル・アフター・アナザー』のテヤナ・テイラー。
BAFTA助演女優は『罪人たち』のウンミ・モサクだった。
ヨーロッパ映画では、『センチメンタル・バリュー』のエル・ファニングや、新星インガ・イブスドッテル・リッレオースも好演への評価が高い。
この部門もまったく読めない。
一応1月22日のアカデミー賞予想では自分の個人的本命を
主演男優賞 ティモシー・シャラメ
( 2番手に レオナルド・ディカプリオ )
( 3番手に マイケル・B・ジョーダン )
主演女優賞 ジェシー・バックリー
助演男優賞 ショーン・ペン
助演女優賞 エイミー・マディガン
と予想していて、アクター賞では4賞の中の3賞が一致しているわけだが、それが果たして本番すんなり重なるのかどうか。
毎年、PGAとSAGとアニー賞の授賞式でアカデミー賞の結果はだいたい読める。それって、言うなれば「第四コーナー回った後の競馬予想」みたいなものだから。例えば、今なら主演男優賞はこう書くだろう。
1か月半後だから見えた、アカデミー主演男優賞の状況
優勢 マイケル・B・ジョーダン
劣勢 ティモシー・シャラメ
追い込み イーサン・ホーク
大外一気 ヴァグネル・モウラ
だが、今年のようにここまで本命予想と一致していても、直前予想に自信がない助演賞は久しぶりだ。直線最後の200m、でも勝ち馬はまだわからない。
映画部門一覧:アンサンブル部門も 『罪人たち』
最後に、全部門の受賞者リストを整理しておく。
キャスト・アンサンブル賞:『罪人たち(2025)』
主演男優賞:マイケル・B・ジョーダン : 『罪人たち(2025)』
主演女優賞:ジェシー・バックリー : 『ハムネット(2025)』
助演男優賞:ショーン・ペン : 『ワン・バトル・アフター・アナザー(2025)』
助演女優賞:エイミー・マディガン : 『WEAPONS/ウェポンズ(2025)』
スタント・アンサンブル賞:『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング(2025)』
主演男優賞に加え、SAGにおける作品賞にあたるアンサンブル賞も射止め、『罪人たち』は作品としての総合力の高さを見せつけた。
ジョーダンにとっては、ともにクーグラー監督のもと、亡きチャドウィック・ボーズマンとともに7年前『ブラックパンサー(2018)』でキャストアンサンブル賞を得て以来。
アカデミー賞では、『罪人たち』は、史上最多となる16部門ノミネートを達成しており、BAFTAやPGAを制したばかりの王者、12部門13ノミネートの『ワン・バトル・アフター・アナザー』との最終決戦は、目が離せない。
それにしても、ホラー映画の新時代を感じる。
『罪人たち』も『WEAPONS/ウェポンズ』も『ブゴニア』も、ホラー映画の系譜を引き継ぎながら、完全に新境地で素晴らしい映画だった。もうホラーを一段下の映画として観る古い見方が終わったんだなあ。喜ばしいことだ。
ホラー、アニメ、はたまた怪獣映画。それぞれB級扱い時代には、独特の雰囲気あってあれも好きだったんだけども。
スタントでは還暦を過ぎたトム・クルーズの『MI』シリーズ最新作の超絶スタントと、それを支えるチームが受賞。
放送シリーズ部門一覧:ノア・ワイリー、故キャサリン・オハラなど
ドラマシリーズ・アンサンブル賞:『THE LAST OF US(2025)』
ドラマシリーズ男優賞:ノア・ワイリー : 『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室(2025)』
ドラマシリーズ女優賞:ケリー・ラッセル : 『ザ・ディプロマット(2025)』
コメディシリーズ・アンサンブル賞:『ザ・スタジオ(2025)』
コメディシリーズ男優賞:セス・ローゲン : 『ザ・スタジオ(2025)』
コメディシリーズ女優賞:キャサリン・オハラ : 『ザ・スタジオ(2025)』
テレビ映画・リミテッドシリーズ男優賞:オーウェン・クーパー : 『アドレセンス(原題)(2025)』
テレビ映画・リミテッドシリーズ女優賞:ミシェル・ウィリアムズ : 『ダイイング・フォー・セックス(原題)(2025)』
テレビ・スタント・アンサンブル賞:『キャシアン・アンドー(2025)』
1996~1999年にかけて4年連続受賞した『ER 緊急救命室』。
ジョン・カーター役のノア・ワイリーが15年ぶりにまた医療ドラマを好演し、今年になってあちこちで連続受賞。
かたくなに医者役を避けてきたワイリー。役者としては複雑な気分なんだろうけども。
『ザ・ディプロマット』のケリー・ラッセルは、『フェリシティの青春』や『ジ・アメリカンズ』で何度もノミネートされてきて、念願の初受賞。
コメディ部門で受賞した『ザ・スタジオ』のキャサリン・オハラは、『シッツ・クリーク』で2021年にコメディシリーズ女優賞とコメディシリーズ・アンサンブル賞を得ており、今回は2度目の受賞。
しかし彼女は1か月前に亡くなったため、共演したセス・ローゲンが代理で受けとり、「彼女は寛大で親切で慈悲深くありながら、なおかつ毎日、セットにいる全員が自分たちを最小化してしまおうとしているのを、何とかして壊そうと演技していた」と思い出を語った。
享年71歳。『ビートルジュース(1988)』『ホーム・アローン(1990)』での母親役、どちらも忘れられない。
特別部門(生涯功労賞):ハリソン・フォード
本人が嫌がるの知ってて、また入場でこの『インディ・ジョーンズのテーマ』かけてる…。
昨年チップス食べ続けてネタにされたからなあ。
本当に愛されているハリソン・フォード。83歳になっても意欲は衰えない。
「他の人たちは今年素晴らしい仕事をしてノミネートされここに来ているのに、俺は生きてるだけで賞をもらってる」「キャリアの中間地点で功労賞をもらうのは奇妙な気分だよ」などと前半の軽口も相変わらず。その意気だ。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド(2025)』での病める大統領&アレの役、自分はとても良いと思ったよ。強さを演じて続けてきて、今は老いたフォードにしかできない演技がそこにあった。
スピーチの後半がまた滋味深い。「役者はエンタメをつくったり、アートをつくったり、たまにその両方が重なったり、生業にできたりする。けれど、成功したら、自由を得るのと同時に責任を負うんだ。(かつての自分のような)迷子の子どものために、入り口を開け続ける責任を。」
この言葉は、ハリソン・フォードがこの場で口にしたからこそ意味があり、その意味は受賞以上に、俳優たちの胸に残るんだよね。
最後もジョークで締める。
良い授賞式でした。
ネットフリックス、生中継の後すぐにYouTubeへ出してくれたのは意外。
