第13話 火の行き先を確かめに
撮影が終わったあと、
いつもフィードバックをくれているミシュラン店のオーナーに連絡を入れた。
事情を説明し、
「食べに行くことになりました」と報告すると、
返ってきた言葉は一言。
「僕も行く。」
思わず笑ってしまった。
■ ミシュラン同士、でも行ったことがない
実はこの二人、
過去に焼き鳥の本を共著で出している。
同じ星を持つ料理人同士だ。
だが意外なことに、
互いの店に食べに行ったことはないという。
「いいきっかけだから、ぜひ行きたい。」
そう言ってくれた。
そして一ヶ月後、
私たちは東京へ向かった。
■ なぜ自分がここにいるのか
正直に言うと、
期待よりも緊張の方が大きかった。
ミシュランのオーナー同士が並ぶ中、
なぜ自分がその間にいるのか。
炭を焼いているだけの自分が、
この席にいていいのか。
そんなことを考えていた。
だが、店に入った瞬間、
その不安は少し和らいだ。
■ 焼き台の目の前
席は、わざわざ焼き台の目の前に用意されていた。
「炭を見てほしい」
そう言われているようだった。
串はストップ制。
止めなければ、永遠に出てくる。
焼き方は関西とは違い、
近火の強火。
焼き台も煙が上に上がらない構造になっている。
炭の組み方、火の起こし方、
すべてが合理的で美しい。
炭が、料理として完成していく様子を、
初めて真正面から見た。
■ 火の先にあるもの
営業が終わり、
すべてのお客様を見送ったあと、
少しだけ談笑の時間を作ってくれた。
二人が共著の本にサインをする姿を、
静かに眺めていた。

その光景は、
職人同士のリスペクトそのものだった。
帰り際には、
お弁当まで持たせてくれた。

最後まで、
作り手への敬意を忘れない人だった。
■ 朝方まで続いた討論
その後も夜は終わらなかった。
「せっかくだから」と、
いろんな方に声をかけてくださった。
音楽プロデューサーの方、
若手の焼き鳥屋オーナー、
炭や火に興味を持つ人たち。
気づけば朝方まで、
炭、火、料理、文化についての討論会。
正直、眠かった。
だがそれ以上に、
これ以上ないほど有益な時間だった。
あの夜、確信した。
炭は、山の中で完結するものではない。
火の向こう側に、
料理人がいて、
客がいて、
文化がある。
炭は、料理の黒子ではあるが、
確実に舞台の一部なのだ。
次回は、
この出会いがどのように
自分の炭づくりを変えていったのか。
第14話「炭のその先へ」
