第9話 技術向上、自己研鑽の日々
ミシュラン店との出会いから、日々フィードバックを受ける生活が始まった。
この頃にはもう大きな失敗をすることはほとんどない。
だから「トライ&エラー」というより、
[職人が求められる基準に、ひたすら寄せていく作業]
という段階に入っていた。
■ 求められるレベルが違う
ミシュランを取る焼き鳥屋で必要とされること
・営業時間中に炭を足すことはしない
・2回転、3回転営業できる火持ちが必要
・鶏の脂が落ちて火が弱ってもすぐ復活すること
・最後まで勢いが落ちないこと
現時点ではまぁ普通の炭かなという意見だった。
正直どうすんの?って感じた。
でも実際それが“プロの基準”だった。
ミシュランを取るということは、
炭にまで徹底的な精度を求めるということ。
■ 「どこを大事にすべきか」を考え続けた日々
フィードバックをもらっては工程を見直す。
また炭を焼き、また使ってもらう。
この繰り返しを2年間ぐらいやった。
そこで嫌というほど気づいた。
一番しんどい工程が、一番手を抜いてはいけない工程
ということ。
楽をしたところは必ず炭に出る。
仕事は嘘をつかない。

■ 5センチの衝撃
ある日、師匠と仲の良い有名な製炭士の方が窯を見に来てくれた。
窯出しを見た瞬間、言った。
「火が奥に引っ込んでる。入口の口、5センチ上げろ。」
たった5センチ?
はいはい、と思いながら次の機会に上げてみた。

するとミシュラン店から連絡。
「今回何か変えました?」
あれ?悪かったかな…と思って聞いたら、
「いや、今まで以上に火力が安定してる。今までで1番良かった。」
入口を5センチ上げただけで“別物の炭”になった。
その時、心の底から思った。
炭を作るプロがいるなら
炭を使うプロもいる。
そして、こんな些細な差に気づかれるなら
絶対に手は抜けない。
あの日から、窯出しの緊張感は跳ね上がった。
でも同時に、理解してくれる人達が存在するという嬉しい瞬間でもあった。
第10話 時代の変化
