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万平ホテルにて

 軽井沢に9日間滞在した。朝、小鳥の声で目覚め、涼しいというよりは、
はっきりと寒い・・・。新緑が眩しく、新鮮なサラダみたいな色彩の中を歩く。私の展覧会自体は信濃追分の「油や」が会場だ。そう、立原道造や堀辰雄の常宿だった古い旅館。それはそれは立派な木造建築だ。

そして私は今回、ぜひ、日本屈指のクラシックホテル・万平ホテルをどうしても見たかった。
ここのカフェは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが好きだったという「ロイヤルミルクティーとアップルパイ」を注文するお客様でいつもいっぱい。
でも私がここを見たかったのは、この万平ホテルを設計した久米設計事務所の創設者・久米権九郎の作品だから・・・という理由。
ちょうど昨年、一部リニューアルされて、古い骨組み構造などの調査が行われたそうで、その資料も展示されており興味深かった。

」これが「久米式耐震木構造」か・・。
ドイツに学び、関東大震災で東京の街が壊滅したのを目の当たりにして、久米は地震に強い木造建築の様式を考案した。
…それを学んだはずの弟子、異端の建築家・渡邊洋治こそが、歌志内市に現存する木骨トラス構造を持つ「旧上歌会館(悲別ロマン座)」を設計したのだ。巨大な木造建築。それを支える技術。考えたらコンクリートや鉄骨のほうが、むしろ早く朽ちてしまうのかも知れない。
そんなことを思いながら大きな万平ホテルを見上げる。
 幼少のころ、夏になるとこの宿で過ごしたという友人によると、エントランスやメインダイニングのステンドグラスの様子などは、昔と変わらないという。久米が生きていたら、「久米式耐震木構造」がいかに有効か?を誇らしく思うだろう。現在は耐震性を高めるために鉄骨の補強が施されているが、内部装飾などは本当にクラシックなままだ。
いつかここに泊まりたい。
そんな夢を抱いている。
(歌志内市地域おこし協力隊・石井葉子

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