「20年前、僕は父親になった」
20年前、僕は父親になった。
娘は今、20歳になった。
あの小さな赤ん坊が、こんなにも僕を喜ばせ、
こんなにも心配させる存在になるとは思わなかった。
ある夜、嫁は、予定日より早く、破水した。
急いで病院に電話して、陣痛はあるのか質問され、
陣痛のおさまっている時に病院に来て下さいとのこと。
焦っている僕たちは、少し落ち着いて病院に向かった。
病院の先生は、落ち着いていた。
「陣痛の間隔が近くなったらね」
僕には陣痛の痛みは分からないが、
嫁は、とても苦しそうにしていた。
誰かが言っていたのを思い出す。
陣痛は、鼻の穴からスイカを出すほど痛いと。。。
僕は、横になった嫁の背中をずっと摩っていた。
明け方になり、
ついに間隔が10分ほどと迫ってきて、
僕のても汗で濡れていた。
生まれてすぐに嫁が抱いた。
女の子と分かっていたが、可愛くて仕方がない。
あれから20年、可愛くて仕方がない。
いつまで経っても、成人しても子供は子供。
今の娘は、もう自分の人生を歩いている。
親として出来ることは、昔よりずっと少なくなった。
それでも、破水の知らせに慌てて病院へ向かったあの夜から、
僕の願いはひとつも変わっていない。
いや、正直、見失っていた時もある。
親としてどうしたらいいのか分からない時もある。
ただ、幸せに生きてほしい。
それだけだ。
