📚100【近親性交】家族神話の弊害 1459
※ヘッダー画像は本書帯部分です
近親性交
語られざる家族の闇
阿部恭子(1977年宮城県仙台市生まれ、ノンフィクションライター、東北大学大学院法学修士、NPO World Open Heart理事長、大学院在学中の2008年に日本で初めて犯罪加害者家族対象の支援組織設立)
小学館 253頁
2025.6.7初版
加害者家族の支援を
長年続けてきた第一人者が切り込む
家族神話が覆い隠してきた
日本社会のタブー
長年にわたり犯罪の加害者家族支援を行ってきた著者が、これまで頑なに沈黙を貫いてきた「近親性交」当事者たちの心の奥深くに分け入り、自ら関わった具体的な事例を提示。「家族神話」の弊害を詳らかにし、家族という密室から助けを求める叫びに蓋をしてきた社会のタブーに風穴を開ける。
本書は、
第一章父という権力
第二章母という暴力
第三章長男という呪い
第四章近親性交で生まれた子どもたち
第五章近親性交が生じる拝見
の5章から構成。
1〜3章までのタイトルを見ると、家父長制の残滓が感じられて仕方がない。
本書で綴っているのは、加害者家族との関わりの中で露呈した事実であり、これまで明るみに出ることのなかった家族の闇である。
近親性交はかつて「近親相姦」と呼ばれ(中略)
性的好奇心を掻き立てる醜聞として扇状的に扱われてきた。
著者は、犯罪加害者家族からの相談によって近親性交の実態に迫り、犯罪が近親性交につながった事例を紹介している。
著者に相談しなかった犯罪加害者家族もいれば、犯罪とは無関係に行われる近親性交もあるのだろう。
父親の子を妊娠したことがあると語る女性のことを新聞で読んだことがある。
彼女は父親から離れられたけれど、知的障がいのある姉は2人の子を産み父親と暮らしている。
うろ覚えだけど、こんな感じ。
父親の性暴力の結果、娘が父親の子を産んでも世間にバレさえしなければ大した事件にもならないし、父親が罰せられることもないのだと不思議な気がした。
このときの「なぜ?」が、本書を読んでみようと思ったきっかけ。
本書の中では、息子の子を産んだ母親、兄の子を産んだ妹などの事例も紹介されている。
近親性交が小児性愛からとは限らない。
レイプとも限らない。
性欲•性的嗜好•性的好奇心以外に、相手が家族でなくてはならない(当事者の勝手な)理由があったりする。
それは世間体だったり、挫折だったり、復讐だったり、誰かを守るためだったり、躾だったり、教育だったり。
双方が成人で合意していなければ性加害•性暴力なのに、被害に遭ったとは認識しにくい。
親子間でもきょうだい間でも、女性から男性への性暴力(母から息子•姉妹から兄や弟)も起きているのにあまり知られていない。
「男は強くあらねば」と無意識に刷り込まれている男性にとって性暴力被害は、恥以外の何ものでもなく、女性以上に告発に至らないことが多い。
以下は自分用の覚え書き。
太字は筆者。
成人同士の合意による性交であれば、家族同士であっても法的に禁止されているわけではない。(中略)
近親性交は遺伝性疾患を持った子が生まれるリスクが高いという説も法律で婚姻を制限している根拠のひとつといわれているが、障がいのある子を産んではいけないというのは差別である。
家族が抱える性の認知の歪みは、性教育の欠如の表れである。(中略)
性教育の本質は、「私の身体は私のものだ」と理解することである。胸や性器などのプライベートゾーンは、たとえ家族であっても侵してはならない。(中略)
性の自立を目的とした性教育が施されるならば、性暴力だけでなく、LGBTQの理解も進むはずである。
(不同意性交等罪が設けられても)家庭内で弱い立場に置かれている家族は、否応なしに権力者に従わざるを得ない。(中略)
同意は必ずしも言葉と行動からだけでは判断できないのである。
被害を告発した被害者に対して、「なぜ、今になって」と批判を浴びせる人もいるが、被害はその日から消えることなく継続しているのだ。
日本では加害者側だけでなく、被害者への風当たりも厳しい風潮がある。近親性交の被害者たちは、同時に加害者家族でもあることから被害者と見做されず(中略)
自らを被害者ではなく共犯者と位置付けている人も少なくなかった。
家族が有する暴力性を明らかにすることで、家庭内の被害者も社会における被害者であり、保護されるべき存在だという認識を(中略)
被害者は誰からも責められるいわれはなく、周囲に助けを求めて良いのだと伝えたい。
近親性交には、私が当初イメージしていたような過剰な性欲•性的倒錯だけではなく、それ以外の背景•要因もある。
家庭内で行われることだけに被害者が告発しなければ表に出ることはなく、被害の認識がなくて告発に至らないケースは多い。
これまでの経験は私に、「家庭」とは、もはや何が起きていてもおかしくない空間であり、最も身近で危険な場所だと認識させている。
安全で安心で信頼できる家庭•家族ばかりではない。
当たり前だと思われている、家族だから我慢しないと、助け合わないと、信じないとという意識(世間体?)の陰には、家族だからこそ抑圧され踏み躙られる人権があることを知った。
2026.4.1.水
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