📚84【給水塔から見た虹は】きっと忘れない 1288
※ヘッダー画像は表紙部分です
給水塔から見た虹は
窪美澄(1965年東京都生まれ、2022年「夜に星を放つ」で直木賞)
集英社 380頁
2025.7.10初版
各界からの反響続々‼︎
あなたと私は違う。
だから、一緒にいよう。
今日の”あなた”に、読んでほしい。
はじめてできた
「ルーツ」の違う友達、母とのすれ違いー。
この世界のさまざまな分断に戸惑う2人の”こども”が、少しずつ”おとな”になるひと夏を描いた、
ほろ苦くも大きな感動を呼ぶ、ある青春の逃避行。
中2の桐乃が両親と住む給水塔がある古い団地群には、外国にルーツを持つ人も多く住んでいる。
桐乃は団地から抜け出して日本人しかいない町で暮らしたいと望んでいる。
中学校にもヒュウ(ベトナム)など、外国にルーツを持つ生徒が在籍している。
桐乃の母•里穂は、スーパーでパートをする傍ら、無償で外国人の相談に乗ったり、支援に繋げたり、自宅で日本語を教えたりして忙しく過ごしている。
桐乃は、自分より外国人たちを優先する母親に不満を抱いている。
ヒュウも桐乃と同じ団地群に住んでいる。
小5のとき両親は離婚し、母親とふたり暮らし。
部屋は荒れ、給食費は滞納、母親とはすれ違いの毎日。
学校にも家にも居場所がないと感じているヒュウは、公園でたむろしている外国人の若者のコミュニティに入り、「仲間だろ?」と万引きや運び屋?を強要される。
中学で起きた虐めや誤解がキッカケになり、桐乃とヒュウに交流が生まれるが、ヒュウは万引きなどの悪事を桐乃に打ち明けられない。
ヒュウは現状から逃れるため、父親を探しに家を出る。
あるベトナム人コミュニティと過ごすうち、所持金を盗られ?、「お金を貸してほしい」と桐乃に連絡。
里穂を困らせたいと思っていた桐乃は、書き置きを残して家を出る。
半狂乱になるヒュウの母親、桐乃の寂しさに気づけなかった里穂。
団地に戻りたくない桐乃とヒュウは、尚も逃避行を続け、長らく会ってないヒュウの祖父宅に身を寄せる。
ボートピープルとして日本に渡ってきた祖父の苦労話を聞き、頑なな気持ちがほぐれ「勉強しよう」と目覚めるヒュウ。
里穂とヒュウの母親は居場所を突き止め、2人を連れ帰る。
やれやれ一件落着……とはならない。
ヒュウは父親と再会を果たすが、会いたかった気持ちは霧散。
万引きをした店に謝罪し、桐乃にも万引きを告白。
警察にも自首するつもりだが、団地の外国人コミュニティのリーダー格が、ヒュウが帰るのを待ち侘びており、無抵抗のヒュウに馬乗りになって殴り続ける。
ヒュウは殴られながら給水塔にかかる虹を見て、一生忘れないだろうと思う。
桐乃•ヒュウ•里穂の視点で進む第一章「一学期」•第二章「夏休み」と、エピローグの三部構成。
分量の割りにはスイスイと読めるのだけど、何だかスッキリしない。
「救いがない」とまでは言わないけど、読後感にはハッピーがなくて、「これで終わっちゃうの?」という感じ。
あえて余韻?余白?を残した感じとでもいうのかな。
著者自身がこう語ってる。
この小説は、外国人と仲良くしましょうというメッセージにはしていないので、読んでいてすっきりしないと思う。でも、今まで考えたことのなかったことを考える着火点みたいなものになってくれたらいいなと思う。
ヒュウが殴られながら見た虹についても語ってる。
読んだ人によって色んな受け取り方ができるのが、豊かな物語と言えるのではないでしょうか。
ヒュウには「祝福の色」に見えた虹の色。
私が感じたのは、「微かな望みがあるかもしれない」というか、「いつ、どんなときでも、どこかに救いがあるのかもしれない」という、淡くて脆くて不確かで漠然とした期待未満。
みんな短くて強い「薬」がほしいと思ってる。でも一言になってしまうのはすごく怖い。そこを一言にまとめない小説に今すごく意味があるんじゃないかと思っています。
殴られても無抵抗を貫くヒュウ。
「僕は自分の人生を愛し、生きる」とつぶやくヒュウ。
警察に万引きを自首することは、コミュニティの存在や、リーダー格からの指示であることを話すことにもなる。
逆恨みや逆襲は大丈夫?
それでもヒュウを支える人はいる。
もう絶望しなくていい。
居場所はあるから。
人って、ふとした瞬間の誰かの一言で、何か人生の風向きが変わることがある。
多国籍、ボートピープル、移民、不自由な日本語、慣れない生活習慣、虐め、不登校、技能実習生、理不尽な労働条件、低い賃金、不法滞在、強制送還……
どれも私達のすぐ側で実際に起きていること。
読み終わった後には、ふーっと息を吐くしかないようなやるせなさが残る。
全記事をマガジンに収録しています 2025.10.14
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