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📚85【熟柿】のように時機を待て 1291


※ヘッダー画像は表紙部分です

熟柿

佐藤正午(1955年長崎県生まれ、「月の満ち欠け」で直木賞、今作で中央公論文芸賞、本の雑誌が選ぶ2025年度上半期ベスト10•1位)

角川書店 365頁
2025.3.27初版



激しい雨の夜、酔い潰れて眠る警察官の夫を助手席に乗せ、千葉の自宅へとハンドルを握る妊娠中のかおりは、老婆を轢き逃げしてしまう。
その後の17年間が、12章に渡りほぼ年代順に描かれる。
村山由佳さんのコメントにある通り「ノンストップなので、皆さま覚悟してどうぞ。」

かおりは服役中に息子•拓を出産。
かおりは仮出所時、夫から「母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どっちがより不幸か、考えてみろ」と言われ夫と離婚。
かおりは息子に会いたいあまり3度警察沙汰を起こしてしまい、「死んだ母親」になる覚悟を決める。

前科があることがバレて職を追われたり、ルームメイトに貯金を盗まれたりしながら、かおりは職を求めて各地を転々とする。
どこにいても少ない収入の中から、会えない拓を受取人にした保険の保険料を払い込み、拓への思いをノートに書き綴る。

今は福岡で介護職として資格取得を目指すかおりは、元夫から連絡を受け、13〜4年ぶりに再会する。
元夫の言動から、元夫の保身•裏切りに気づき、「あなたは卑怯だ」と口にする。

ネタバレになるからこれ以上は書かないけれど、ラストに向かって、光は確かにある。
希望がある。
未来がある。
それが今よりずっと明るいものである筈だと予想できる。
そしてかおりはもう知っている。
熟柿のようにその時機を待てばいいのだということを。

「熟柿」とは……

熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと

大辞林 第四版(三省堂)



かおりの身辺に何かが起こる度に「また⁇」「もう勘弁してあげて」と思う。
何より、元夫って奴は‼︎
でもかおりには支えよう、力になろうとしてくれる人がいる。
その存在が、かおりを孤独にさせない。
いとこの慶太くん、友だちの鶴子ちゃん、久住呂くじゅうろさんと娘の咲ちゃん、百崎さん、そして土居さん。

咲ちゃんは幼稚園の頃から「かねがね」とか「密かに」とか「今さら」なんて言葉を使っちゃうオシャマさん。
幼稚園のキリン組のときから高校生の今も、拓と仲良し。
咲ちゃん、あなたの機転のお陰よ、ありがとう。

土居さん、機が熟すまで待っていてください。
これからもかおりの側にいて、支え続けてくださいね。

「市木さん(かおり)もお母さんだし」
「もし会いたくなったら福岡まで会いに行ってもいいですか」
「じゃあ電話してください。僕の電話にも出ると約束してください」
こんな言葉を聞ける日が来るなんて‼︎
拓、あなたはかおりの生きる力です。









全記事をマガジンに収録しています 2025.10.17

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