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📚66【ナチュラルボーンチキン】ルーティン女は私? 1101


※ヘッダー画像は表紙部分です

ナチュラルボーンチキン

金原ひとみ(1983年東京生まれ、2003年『蛇にピアス』ですばる文学賞受賞しデビュー、翌年芥川賞受賞)

河手書房新社 211頁
2024/10/20初版



兼松書房労務課に勤務する浜野文乃はまのあやのは45歳。
趣味も特技も仕事への矜持もパートナーも友達も仲の良い家族もペットもない。
突出した才能も情熱も素養も欲望も切実さも技術も発想力もない。
非日常に支配されるのは好きではない。
仕事と動画とご飯がルーティン。


毎日決まって、鶏か豚か牛肉と、もやし•キャベツ•にんじん•玉ねぎの内の2〜3種を炒め、シャンタンか「ほりにし」か焼肉のタレで味を付け、パックご飯と共に食べる。
簡潔で合理的で倹約で安定した美味しさと単純さを提供してくれるご飯には、信仰に近いものを抱いている。


平木直理ひらきなおりは、奇抜なメイクと髪型でスケボー通勤する兼松書房編集部員。
スケボーによる捻挫のため出社できないと言いながら、ホストクラブ通いをする二十代。 
浜野文乃は、部長から頼まれ理不尽な気持ちのまま平木直理の自宅に様子を見に行き、交流が始まる。


「ホスクラは会社とか病院の千倍楽しいところなんですよ?むしろ、会社に行けなくてホスクラに行けるのは当然じゃないですか?」と平木直理は言う。
平木直理の楽しいことは、飲み会、クラブ、ライブ、フェス、カラオケ、ナイトプール、バーベキュー、パーティー、ダーツ、ショッピング、友達、旅行、海岸……
浜野文乃とは対極。


浜野文乃は、行き先を告げない平木直理に誘われチキンシンクのライブに行く。
ヴィジュアル、デスボイス、煽り、ダイブ、モッシュ、初めての体験に、楽しかったのかどうかわからない。
ひょんなことからバンドの打ち上げと合流。
ひょんなことから、ボーカルの「かさましまさか(まさか)」41歳から告白され、交際することになる。


もしかしてこれって破茶滅茶?ドタバタ?と思う勿れ。
いや実際に思いましたよ、思いましたけど、著者が言ってます、
「この物語は、中年版『君たちはどう生きるか』です」って。
そうかもしれない……

本書帯



まさかは浜野文乃の心情を慮り、詰め寄りすぎない。
距離と取り方が絶妙でいいなと思う。

「(前略)浜野さんが話したくないことや、隠しておきたいこと、自分でも認めていないようなところとか、自分でも認められないようなこと、そういうことを暴きたいとか、無理矢理聞き出したいとは思わないということです。(中略)
過去にどんなものを抱えていようと、今どんなものを抱えていようと、内容が分からずとも僕はそれを丸っと受け止めたいということです」

本書P124〜125 まさかのセリフ


「(前略)僕らあとはもう自分にできることをして老いていくだけです。家のことも子供のことも義実家のことも考えなくていい。渡り鳥が渡り鳥に出会って、ちょっと疲れたから死ぬまで一緒に飛ばない?ってナンパしたみたいなもんです。(中略)美味しいものを食べたり、お酒を飲んだり、深夜目が覚めちゃった時に電話することも、僕らにはまだまだできます。(中略)今は今できることを、していきましょう」

P181〜183 まさかのセリフ



親子関係、不妊治療、離婚、世代差、ジェンダーバイアス、エリート、推し活、ファンの死、延命治療、いろいろな背景を交え、浜野文乃とまさかの距離はゆっくりと近づいていく。
中年ラブストーリーであり、生き方のストーリー。

平木直理の奔放さや、まさかの優しさによって、ルーティン女から脱し変わっていく浜野文乃の成長?の物語。
微笑ましいし、めっちゃ羨ましいぞ。
             (4/10)












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