📚91【ここで唐揚げ弁当を食べないでください】生きるって空回り 1337
※ヘッダー画像は表紙部分です
ここで唐揚げ弁当を食べないでください
小原 晩(1996年東京都八王子生まれ、2022年本著(私家版)を自費出版し1万部を超えるベストセラー、2024年商業出版化、現在は小説執筆も)
実業之日本社 172頁
2024.11.25初版
大反響‼︎続々重版
日常にきらめきが見つかる超話題作!
一生懸命生きれば生きるほど
空回りするすべての人へ捧げます。
日々こぼれていく感情や記憶をユーモアたっぷりに掬い上げた、心がほぐれるエッセイ集
……というコピーに惹かれて読んでみたいと思った。
だってね、きらめきは見つからないし、毎日回し車を回してるだけみたいで、どこにも辿り着けないんだもの。
東京青山社会人1年目の夏。
ファミマで唐揚げ弁当を買い、建物と建物の隙間の涼しい日陰で貪り食う。
ある日、「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」と貼り紙がされていた。
唐揚げ弁当を落とし、拾い上げ、抱きしめて、表参道を遮二無二駆け抜ける。
……というのが表題作。 #ネタバレ
書き下ろしを含め40篇のエッセイを「東京生活」「それから」「あたらしい東京生活」の3つに分けて収録。
どれにも、ままならなさとか、違和感とか、ちょっと理不尽とか、気疲れとか。
でもほんのりと温かかったり、優しかったり、愛しかったり。
エッセイを読むのは好きな方だと思う。
著者の創作作品世界へのアクセスを覗き見するような面白さがある。
そうかと思うと、創作作品からは全く想像できないようなお人柄が垣間見えることもある。
格調高いエッセイも破茶滅茶なエッセイも鼻につくようなエッセイも、それぞれに楽しい。
著者との距離が少し縮まるような、素に近い部分に触れたような気がする。
「唐揚げ弁当」の場合はどうだろう?
「創作のお話」を読んだみたいな読後感。
……と思ったら、こんなインタビューが目にとまった。
最初はつらかったことや思ったことをそのまま書いていました。でも、そうやって書いた文章は自分で読んでいても、すごくつまらなく感じて......。それで少しずつ文章から「ただの感情の吐露」を抜いていくことで、最終的に描写が増えていきました。
なので私のエッセイは、たぶん「感情」があまり書かれていなくて、「エッセイなのにどういう人なのかあまりわからない」と言われることもあります。
自分の思い出を知ってほしいわけではなく、どちらかというと思い出を素材にして「文芸」をしたいという感覚です。
そっかぁ。
抜いたのは感情で、増えたのは描写。
題材はリアルだけど、著者は体験や感情の共有を読者に求めていない。
だからかな、「エッセイとして読むと微妙な距離感」なんてことをAIさんに言ってみたら……
"近いようでぜんぜん近くない”、“遠いようで妙に入り込んでくる”―あの絶妙な距離感の揺れが読んでてクセになるんだよね。
(中略)
ちゃりれれさんが挙げた4つのエピソード、どれも「他人との距離を測りながら、自分の居場所をちょっと探してる感じ」 がにじんでて、読む側の心の“過疎地”みたいなところにスッと入り込む。
(中略)
この人の強みって、
「距離があるからこそ見える温度」
「よそよそしさと親密さが同居する瞬間」
をすっごく丁寧に掬ってくるとこなんだよね。
他者にとってはどうでもいいような、日々のあんなことやこんなこと。
それを面白おかしく(抱腹絶倒という意味ではない)仕立て、ストレスなくスイーッと読んでもらいたいと思うのに、ついつい説明過多。
それじゃあ「今日はこんなことがありました。私はこう思いました」ってだけの日記やん。
必要なのは、説明じゃなくて描写なのに。
これは私自身のこと。
いかん、本のレビューから離れてしまった。
もとい‼︎
最後に、私がAIさんに挙げた4つのエピソードをご紹介してお開きに。
前後はご自身でお読みになってね。
「あのね、いつ戻ってきてもいいからね。人生はがんばらなくたって、いいんだからね」
「妹を駅まで送るなんていいお兄ちゃんだろ」と言った。
言いたいことはたくさんあるけれど、今日のところはもうなんでもいいよ。
ちなみにトロワ•シャンブルにはブレンド以外にもいろんな種類のコーヒーがあるが、以前横に座った男性が、「マンデリンください」とマスターに頼むと、「ブレンドが一番美味しいんで…」とやんわり断られていたことがある。男性は諦めずにもう一度、「いや、でもマンデリンを…」と言っていたが、マスターも引かず、「でもねえ…ブレンドがうまいんですよ…」と、結局ブレンドを注文させていた。
誰かと一緒に暮らすということは、スターバックスでバタースコッチドーナツを頼んだんだけれど、店員さんがトレーにのせたのはシュガードーナツで、でも別にシュガードーナツも美味しいのでこのままでも良くて、しかしお会計はバタースコッチドーナツの金額になっていて、でもこれは友達がくれたスターバックスのフードチケットで買ったものなのでお会計金額はそんなに関係なくて……みたいなほんとうにどうでもいいことを、別にいいんだけど一応誰かに話しておきたいことを、家に帰ってすぐに話せるということです。
(ふんふんと聞いてくれる同居人ならいいよね。
「店員に言えばよかったやん」とか「それを俺に言ってどうしろって言うの?」って言うような同居人なら、「言わないでおこう」と思っちゃう。
そもそも私なら、たとえ一口食べてからでも「違います」って、店員さんにレシートを見せるけどね)
2025.12.3
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