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📚71【天使は見えないから、描かない】たとえ健全でなかろうと 1170


※ヘッダー画像は表紙部分です

天使は見えないから、描かない

島本理生(1983年東京生まれ、2018年「ファーストラヴ」で直木賞ほか受賞作多数)

新潮社 251頁
2025.1.30初版


許されなくてもいい。だから優しく無視して。
絶望的な幸福感とモラルの間で揺れる、18歳差の叔父と姪の愛の行方は――。

弁護士の永遠子は33歳。結婚3年目の夫と問題のない関係性を保ちながら、18歳年上の実の叔父・遼一としばしば逢瀬を重ねている。
しかし信じていた夫が浮気相手を妊娠させ離婚し、その後、惰性で付き合った若い恋人とも別れてしまう。
子供の頃から抱く自らの叔父への歪な欲望に向き合った永遠子が気付いた唯一無二の愛とは。

内容紹介 新潮社

本書 目次


タイトルの「天使は見えないから、描かない」は、19世紀フランスの画家ギュスターブ•クールベの言葉(らしい)。
理想化された架空の情景ではなく、あるがままの自然や非俗で醜悪な人間の姿を描いた写実主義者。


永遠子と18歳年上の実の叔父の関係自体が、倫理にもとる。
ある意味、赤裸々で非俗で醜悪。
はっきり言えば「タブー」。
「天使は見えないから、描かない」というギュスターブ•クールベの言葉をタイトルにしたのは、正統的ではなく理想的ではない永遠子の恋愛(生き方)を忠実に描いたからか。
とはいえ、性愛描写が濃密すぎるとか、多すぎるとかいうわけではない。

初め永遠子には晴彦という夫がおり、晴彦の不倫相手が妊娠し離婚する。
離婚後、永遠子は歳下の志文と交際するが、最終的には永遠子の方から別れを告げる。
どちらのときも、永遠子には叔父遼一(独身)の存在があった。

永遠子と遼一は相思相愛であるけれど、中心になるのはふたりの想いというより、永遠子の遼一への想い。
そこには、永遠子と父(遼一の実兄)との関係、父と母との関係が大いに関係している。

そして永遠子の親友萌の存在。
萌には入婿で家族思いの夫と子どもがおり、永遠子とは家族観•恋愛観が大きく異なる。
到底永遠子と遼一の関係を理解したり許したりすることはできず、「不健全だ」と言い放つ。
しかしそれは、永遠子を思ってのこと。

「色んなことを言ったけど、本当は、永遠子が必要としてくれるのを待ってた。離婚したときだって、遼一さんと暮らし始めたときだって、私が会いに行っても、不安そうな顔してるわりには平気みたいなことしか言わないから。それなら、私にできることなんてない」

「頭はいいかもしれないけど、人の気持ちに鈍感だよ」

「改めてよね。あと、今度こそ、幸せになって」

P250 萌のセリフ


近親姦、不妊、不倫、離婚、絶縁……
どろどろするだけの官能小説になっても、決しておかしくはないテーマ。
倫理的には「なしっ‼︎」なのに、圧倒的な恋愛小説。
しかも終章の「ハッピーエンド」は、タイトルに偽りなし。
読者の好みは分かれるだろうし、賛否はあるだろうけれど、読後感は決して重苦しくない。
永遠子は充分に幸せ者だ。








2025.6.16

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