インクジャンについて。
HARDCORE PUNK、特にCRUST COREな環境が近くにあると皆当たり前のように着用している黒のシルクスクリーンインクでセルフコーティングされたGジャンや袖切りGジャン。
メタルヘッズの着用するGジャンベースのバトルジャケットが黒くテカって汚くなったようなもの。と、考えてください。

※CRUST仕様の為、ややチープで粗い作り※

※CRUST仕様の為、ややチープで粗い作り※
勿論、私も例に漏れず何の疑問も持たずに当たり前のようにGジャンの袖をカットオフし、黒のシルクスクリーンインクをハケで塗ってカスタムした物を3着製作して今日まで着用しています。一番古い物は10年位着用しているかと。


【一番左端】一度シルクスクリーンインクを塗布した後、襟部分を除いて全体的にツギハギを施したもの。ツギハギを施していない襟の部分のみインクのテカリが確認出来ます。(一般的なインディゴのユーロLevi'sがベース)
【中央】
シルクスクリーンインクを塗布した後、鋲を打ったもの。
THE!90年代後半~00年代初期の日本のCRUST!って感じですね。
視覚的にも直球かつ華やかなので着用人口も比較的多いです。(濃い目のインディゴのGAPがベース)
【一番右端】
シルクスクリーンインクの塗布以外の加工はしないプレーンなもの。
これが一番スタンダードで着用人口もダントツかと思います。
インク塗布後はパッチ、缶バッジ、あと少しの金属パーツを使ってデコレートをするだけなのでコスパ・タイパも手軽です。(薄めのブルーのユーロLevi'sがベース)
あまりにも当たり前過ぎて『そう言えばこのジャケットの名称って何だっけ…?』となり、コーティングジャン?インクジャン?と名称を思い返してみたのですが、微かな記憶で『インクジャン』と私の記憶には刷り込まれており、何故そう呼ぶようになったのか、思い返すと恐らく14,5年前。
当時も私は相も変わらず失敗をしながら試行錯誤しつつ、シーンの先輩に聞いたりPUNK専門誌、あとはWEB等でD.I.Y.のちょっとした事を綴っているPUNKSの個人ブログなんかを読み漁っては不器用なりに衣類のリメイクやカスタムに奮闘していました。
そこで目にした中の1つに『GAPのGジャンに黒のシルクスクリーンインクを塗ってCRUST仕様にする。』と言うような感じで始終をアップしている方が居たんですね。『Gジャンクラスト化計画』とか、そんな感じのブログタイトルだったような気がします…
その方が''インクジャン''と言うような名称を使っていたように記憶していて、以降、黒のシルクスクリーンインクでコーティングされているジャケットはインクジャン。と、自分の中で定着しました。
ここに記載するにあたり、私の記憶に間違いが無いか再度キーワードをWEB検索エンジンで調べたのですが…出てきません…!きっと私の検索の仕方が悪いのかもしれませんが…。
とは言え10年以上も前の記事。きっとブログサービス終了で情報が消失してしまった可能性の方が大きいように感じます。
前回、前々回とボロ / クラストパンツ製作の記事を書かせていただきましたが、この理由はそう言う諸々のブログサービスの停止・終了だったり、情報が載っているD.I.Y.ZINEが中古市場でもいよいよ出回らなくなってきたりと、情報の消失に伴い誰かが令和版として文字で残さないと文化自体があやふやになってしまうかも。と言う想いからでした。
なので今回も同様に、この文化を自分自身の記憶の整理も兼ねて文字情報として残しておこうと思います。
さて、まずインクジャンですがそもそも正式名称が分かりません。
コーティングジャン、インクジャン。そんな感じで何となく呼ばれているような気がします。
なので、ここでは私の記憶を信じインクジャンとさせていただきます。
元々CRUSTシーンではボロ / クラストパンツ同様、主にGジャンを中心としたジャケット類に靴墨を塗って黒くテカらせて着用する『靴墨ジャン』の文化があります。ただこれも靴墨ジャンが正式名称なのかは不明です。
80年代の海外のクラスティーズの画像なんか見てもそれらしいGジャンや軍ジャケットを着用している様子が見受けられるので、文化としては古いものではあると推測され、この亜種なのかな?と…考えています。
少し脱線しますが、私も現在所持しているインクジャン3着の内、1着を靴墨ジャンとして過去着用しており、そりゃもう''漆黒''なんて言葉が似合うぐらいの深みで滅茶苦茶雰囲気も良く。
ですが…当然あっちこっち汚すし、色が抜けて薄くなってきたらまた塗り直したりと大変なんですよね。
そして息子が産まれ子育てへ…

SNSにて9年前ぐらいの投稿より引用。

SNSにて9年前ぐらいの投稿より引用

SNSにて9年前ぐらいの投稿より引用

SNSにて9年前ぐらいの投稿より引用
そんなワケでもう流石に…って事で上記画像の靴墨ジャンの靴墨を一度全部洗い落とし、シルクスクリーンインクで改めて塗り直した経緯があります。
その際、裾や袖口も切りっ放しにしてよりエッジの利いた印象へ同時にシルエットの変更も行いました。


話を戻しまして。
このインクジャンの起源は私の調べる限り、『誰が』『どのエリアで』等、文化の始祖が定かではなく不明です。
当たり前のように一部のシーンの人間にはマストアイテムなのにも関わらず、そのぐらい情報が少ない物なんですよね。有識者がいらっしゃいましたらコメントで教えていただけますと幸いです。
シーンで長く活動されている先輩の見解だと『関西周辺なのではないか。』と、言うものでした。
実際、大阪を中心とした関西PUNKシーンはD.I.Y.のレベルや発想が頭一つ抜けており、我々世代への影響も凄かったんですよね。
当時のストリートスナップを纏めたファッション誌を介して茨城県のド田舎で都会に憧れ雑誌を毎月購読していたモヤっちい高校生だった私の元にも届くぐらいの個性を放っていました。
思い返せば確かにシルクスクリーンインク、もしくはそれに近い何かしらのインクを使ってコーティングしているんじゃないかな…?なんて思えるようなD.I.Y.衣類も割とHARDCORE PUNKやCRUST COREのシーンを切り抜いた現場の写真や映像、レコードやCDのインサート、PUNKファッションを取り上げる専門誌等で散見されており、この辺の方々が始祖なのかも…ぐらいにロマン半分として私の中では現段階で、真実に最も近い考察とさせていただいております。
さて、歴史的な話はこのぐらいにして作ってみましょう。
◆◆◆準備するもの◆◆◆
【コットン素材、もしくはコットンの配合比率高めのインクコーティングをしたい適当なジャケット / アウター】
★デモンストレーションなので塗布面積の少ないキッズサイズのGジャンで行います。
【工作用等に使用するような一般的なハケ】
★私の場合、中サイズ程度のハケを1つ、小サイズ程度のハケを1つ毎回用意し、大きな面積を中サイズ。細かい箇所を小サイズで使い分けています。
【シルクスクリーン用の黒インク】
★私はTシャツくんインクを使用しているのでこれを基準とします。
★大人用のジャケットだと大体1,000g前後あった方が安心です。


作り方はとても簡単です。
ジャケットにハケでインクを塗るだけ。以上!
ただ、簡単だからこそ性格が出ます(笑)
まずは原液のまま塗る派、水等で好みの濃度に薄めて塗る派と分かれますが、私は原液のまま塗る派なので、ここではインクを原液のままで塗布した場合の経験談とします。
特にコツは特にありません。ひたすら塗布作業です。
強いて言うなら襟の後ろやボタン裏、ステッチ部分。腕まで残す場合は脇の下の部分等、細かい所も塗り残しのないようしっかり塗る事ですかね…!








それと、生地には『地の目』と呼ばれる凹凸が必ずあるので、それを観察し、そこに沿ってハケを流すとしっかりと塗れると思います。
最後に!床やジャケットの裏地を汚したくない方は段ボール等を下に敷いて対策してください。私は読み終わった地域新聞を使っています。
とは言え、細かい箇所も塗ったりするので、どうしても裏地に若干インクが付着するのはご愛敬と言う事で。
自分の経験ではこんな所かな、と。。
一気に全面積を塗るのは物理的にちょっと難しいかと思います。
とにかく、表面に塗布→乾かす→裏面に塗布→乾かす→表面のポケット裏と腕に塗布→乾かす………。の、ように、パーツパーツで分けながら塗布と乾燥作業を繰り返す為、日常生活の合間の作業として考えた場合ベストタイプであれば1~2日。両腕まで残してあるジャケットタイプであれば3~4日ぐらいかけて完成させるのが無理なく丁寧に進行出来る良い塩梅かなーと個人的には感じます。
完成するとこのようになりました!
オイリーかつダーティーな雰囲気になってガラッと変わりましたね。


全体的な仕上がりとしては初期は強くテカってオイリーな雰囲気ですが、半年~1年程度しっかり着込む事でテカリが落ち着き渋みが出てくるのがこの塗り方の醍醐味かな。と感じます。

これは10年位着用しています
目的の面積を全部塗布したらあとは着倒すだけ。
そうするとヒビ(クラック)や剥がれが発生しますので気になる方は適当なタイミングで都度塗り直しのメンテナンスを行ってください。
逆にこのクラックを放置していても結構良いアジになるので、ダーティーな世界観で着用したい方はむしろ多少のクラックやインクの剥がれはそのままで着用してもシブイと思います。
私は適度に塗り直してクラックを埋める派なので時々様子を見ています。数ヶ月に一度ぐらいですかね。
鋲打ちしている物に関してはイチイチ避けて塗り直すのは面倒なので上からガッツリやって、鋲に着いたインクを軽く拭き取る程度です。
なんかこれはこれで小汚くて良いな、と。

よく見ると鋲に黒いインクが付着しているが、これもアジとして放置
あとはもう前提として小綺麗に着用するものでは無い為、インナーのTシャツや冬場重ねているジャケット等は擦れる部分に黒インクの成分が付着し、薄っすら煤けのような黒ずみが発生します。

肩の辺りが黒ずんでいるのが確認出来る



これもシャツ同様に肩付近に黒ずみが発生

中央付近の白い所とバンドロゴの赤い部分右上付近
HARDCOREPUNK / CRUST COREは衣類自体、基本ガシガシ汚してアジを出すもの。と、私は解釈しているので着用ダメージはむしろ雰囲気が出るので大歓迎です。
しかし中には綺麗に着たい方もいるかと思いますので、そう言った方はインクジャンは着用しない方が賢明かもしれません。もしくは汚して育てる専用のシャツを用意しても良いかもしれませんね。
因みに…インクの塗布作業に取り掛かる前の下準備も十人十色で『インクを塗布する前に黒染めをして少し元の色を沈ませておく。』や、『染めQを予め吹き付けて黒くしてからインクを塗布する。』と、人によって様々です。
そしてその違いが絶妙な個体差を発生させています。
私は一度黒染め後にインクを塗布するパターンでの製作が多いです。
元々黒のGジャンに黒のインクで塗るのも格好良いですね!
この場合はわざと塗りムラを出して荒々しく塗ってもGOODです。
この技術はGジャンや軍ジャケットを始めとしたジャケット類のみの技術ではなく、パンツやスカートに塗布してラバーコーティングのようにしても良し、ポーチ等に塗布してオイリーな雰囲気にして腰から下げても良しと、応用が利くのでぜひ自分なりのコーティングも見つけてみてください。
一例ですが…ポーチに塗布するとこのような風合いになります。

引き

アップ
こちらのポーチはSaya Akasegawa氏の私物で、本人の承諾を得た上で参考資料として掲載させていただきました。
彼女のインクコーティングポーチは3COINSのデニム地の物をベースにしているとの事。
↓Saya Akasegawa氏の活動等は下記リンクにて。↓
こう言った小物類にも塗布出来るので、不安な方は小さな物から始めてみても良いかもしれません。
また、少し上級なテクニックですが、例えば、紫色の布で作った・作られたポーチ等の上から緑のインクを原液で塗布したとします。
着倒したり使い込むとヒビが発生するという性質を利用し、使い込むほど緑のインクが割れたり剥がれたりして下地の紫が見えて来る。なんて仕様にする事も可能です。
勿論、衣類に上記と同じような仕掛けをしてもオリジナリティある風合いになると思います。
そう言えば…!このインクコーティングした生地は当然インクが乗っている分、何もしない生地に比べ強度があり、かつ、インクの特性上、針も通りやすいのでボロ / クラストパンツの特にダメージが入りやすい部分に用いるツギハギのパーツとしても優秀です。


この辺は特にダメージが発生しやすいので良く使う

この部分でも当然大活躍

弾丸ベルトを巻いた時にダメージが入りやすいこの辺りにも使用する事で延命効果有

他、衣類のカスタム時にDカンを垂らすときのテープとしても使い易いです。


このように想像力と柔軟性次第で様々な用途に活躍出来る生地の加工です。
余談ですが…。。私はバトルジャケットに関してはとにかくタイトに着用したいのでGジャンの場合、サイドポケット無し・サイズは32インチ相当ぐらいのアイテムを探し、購入後は両腕と裾をブッタ切ります。
ボタンは締められないぐらいキッツキツのサイジングが理想ですね。
あと、身幅も細くしたいので、場合によっては裁断して詰める事もあります。
冒頭の3着中、中央の鋲打ちしているGAPベースのインクジャンは肩幅・着丈は理想的でしたが、身幅がややボッテリしていたので大幅に詰めています。
まず両脇を裁断→手縫いにてしっかり縫い合わせ→表面の縫い合わせ部分にもインクを塗布して強度を持たせる。と、言う流れでサイズ直ししました。



このような流れで気が向いた時に製作をしたり少しシルエットを変えたりと、素人レベルではありますがチマチマやっています。
私が良く言うセリフですが、このような技術は決してそう言ったシーンだけのものではなく、別なスタイルにクロスオーバーしても良いと考えています。
元を辿ればCRUST COREと言うジャンルの源流はU.K.のMETALバンド『HELL BASTARD』の『Ripper crust』と言うアルバムの''crust''が由来だと一説では言われています。
よってこの説に則るとCRUSTは厳密にはPUNKでは無く、究極のZ級METALだと私は考えており、そのアティチュードを尊重しています。
このように偶発的な何かが後々の形式美に影響を及ぼす事例も世の中決して少なくないかと思います。
なので、新しい何かが生まれても良いと思うんです。
但しここが重要で、外に向かって閉鎖的・部族的で少数派の傾向にある文化圏のものを体現したり製作・発信する側の人間は諸説あるオリジナルの歴史を『出来る限り自分なりに研究し、経験し、解釈して』それを『自分の言葉でしっかりと』エンドユーザーに伝える事が大事で、その責任は発信をした時点で同時に発生すると私は考えています。
そう言った気遣い一つで話は変わって来ますし、それこそが本当の意味での新規層や次世代への文化の継承ではないでしょうか。
そんな気持ちも踏まえ、興味を持った方は自分なりのインクの濃度や塗布の仕方、インクコーティングする対象を研究し、自分らしい衣類や小物にコーティング加工を施してオールドスクールで硬派にキメるも良し、クロスオーバーでトリッキーに遊んでみるのも良し。ぜひ自分らしいスタイルを楽しんでみてください!
ボロ / クラストパンツ製作よりはハードルは低いはず…?です…!多分…!
