YOROSUI 第3章 ジェンネの町
No.8 もぬけの殻
「今日もやらん! 又だ。」
こう言うと、今度もひとごみに紛れかき消えてしまった。
そして次の日も、又次の日も、同様に
「今日はやらん。」
と言い残してどこかにいなくなった。
このようなことがしばらく続き、そのうち期待する者も徐々に減り、人垣もなくなっ た。 ついには見物の剛毛の男独りになって、醜い男が言った。
「はは、オレの衣もそろそろひっぺがすときが来たな。」 醜い男は、やおら、続けて3回ほど宙に舞い、そのままどっと棺桶に背中からはまり込んだ!
すると不思議に木琴の音色が何処からともなく天空に響いて、無数のロータスの華が天から降り注いで来た!
この世のものと思えぬうつくしさに、見ていた男は目を皿 のようにし、息を呑んだ!
棺桶は、しばらく腰の高さほどの空中に浮いていたが、男の 目の前まで来てどすんと落ちた。
剛毛の男は、恐る恐るその棺桶を覗き込んだ。
そこには男の着てた服だけが残され藻抜けの空だった。
このことがジェンネの町では大評判になり、その棺桶は人の行き交う通りの真ん中に そのまま置かれた。
それを覗き込んだ 通りがかりの山高帽の紳士が言った 。
「ヨロスィ。」
後にも近隣、遠方からこれを見物にたくさんの人が来て、そこにはいつも人垣で二重三重の輪が出来た。
剛毛の男は、いつかあの醜い小男が再び現れるのではないかと、この通りでパンロゴ
をたたき、日がな一日一日を送った。
