見出し画像

「イスラエル人よりも、ハマスの活動家のほうが、古代ユダヤ人の子孫である確率は高いだろう」

 (2024年10月3日に自分のブログに投稿した物を転載。中東ジャーナリスト川上泰徳さんのツイートを引用し私見を加えただけの内容だが、noteにも転載しておいた方が後々便利かと思って。なお2024年当時のニュースに関する部分は割愛、分かりにくい部分や、乱暴な表現は訂正)
 (なお見出し画像はGrokに「頭を抱えて座り込むネタニヤフ」とリクエストして描いてもらった。いまいちだけど、無いよりはいいと思って)

 常識だろうけどあえて言うよ、「ユダヤ人」(Jews)という人種、民族は存在しない。かつてユダヤ人は鼻に特徴がある、などという偏見がまかり通っていたようだが、それこそレイシズムだ。(参考)
 元々は「ユダ部族の者」、「ユダの住民」という意味だったが、徐々にユダヤ教の信者を総称する意味となった。 「ユダヤ教徒のエスニック集団」の中にいればユダヤ人と見なされるが、その集団の中にあっても、必ずしも一人残らずユダヤ教徒、というわけではない。 イスラエルの定義はこれより厳しく、「ユダヤ人とは、ユダヤ人女性を母として生まれた者かユダヤ教徒に改宗した者で、他の宗教の一員ではない者」とされている。以上は「ユダヤ人とイギリス帝国」(度会好一/著 岩波書店)より引用。
 ざっくり言えば「ユダヤ人」とはユダヤ教徒のことだ。俺もユダヤ教に改宗すれば「ユダヤ人」と認められて、イスラエルに住めるのかな?住みたくないけど。
 当然、人種も様々だ。
 東欧系の「アシュケナジム」(Ashkenazim)、
 南欧系のセファルディム(Sephardim)、
 中東や、カフカス(コーカサス)以東に住んでいたミズラヒム(Mizrachim)に分類される。

 しかしメディアに登場するイスラエルの政治家や著名人は、ヨーロッパ系の人々ばかりだよな。だからユダヤ人ってヨーロッパ系の人々なんだ。という恐ろしい誤解を招いているかもしれない。招いているよな。
 (なお外務省のイスラエル国に関する「基礎データ」によると、イスラエルの人口は約950万人、ユダヤ人は約74%、 アラブ人は21%。宗教はユダヤ教が約74%、イスラム教は約18%、キリスト教は約2%)

 ところで歴史上最も有名なユダヤ人と言えば?マルクスよりアインシュタインより有名な人がいるよ。ユダヤ人は2000年前にディアスポラ・・・つまりローマ帝国によってパレスチナの地を追放され、さまよえる民となった、と言われているが、そのころ生きていた人。Jesus Christだ。日本語で言えばイエス・キリストだ。
 その当時のパレスチナに住んでいたユダヤ人はどんな顔立ちをしていたかというと?キリストが住んでいた地域から発見された、その時代の人物と思われる頭蓋骨から再現してみると!
◇ 【寄稿】イエス・キリストの本当の姿は? 長髪にひげは本当か - BBCニュース
 浅黒くて迫力のある兄さんだな。頭巾とかマスクとか被せてみたら、反イスラエルの戦闘員みたいに見えるかな?自動小銃片手に気勢を上げるとこ見たいな。どう見てもヨーロッパ系ではない、アラブ系の顔立ちだな。

 要するに当時のパレスチナにヨーロッパ人が住んでいたわけがない。現在の基準で言えばアラブ系と呼ばれるような人々が住んでいた。当たり前だよ。もちろん当時のユダヤ教徒もそういう民族だった。ところが後のヨーロッパ世界では、キリスト像がまるで白人のような顔立ちに描かれていった。
◇ イエス・キリストが白人として描かれた理由は、現代でも対立の根底に(宇山 卓栄) | +αオンライン | 講談社(1/3)

 だから、「我々は2千年前に追放されたから戻る権利があるんだ!」という、イスラエル建国の根拠は無効だ。イスラエル国民の大多数の祖先が、2千年前にパレスチナに住んでたわけがない。建国前からシオニストが資金力に任せて送り込んだヨーロッパ系の移民が、イスラエル国における最多の集団となったのだ。


・・・というわけで、やっとこの投稿の本題。中東ジャーナリスト川上泰徳氏によるツイートのパクリ。ちなみに川上氏の新書「ハマスの実像」を読み始めたところ。
 川上氏が、2010年にテルアビブ大学のシュロモ―・サンド教授にインタビューした内容をツイートしている。イスラエルでベストセラーになった「ユダヤ人の起源」の著者だ。非常に長文なので、勝手に要約させていただく。 「我々は2000年前にローマ帝国によって追放されたユダヤ人の子孫だから、帰還する権利がある!」というイスラエル建国の口実を木っ端微塵に砕いている。なお教授は幼いころオーストリアからイスラエルに移住したユダヤ人である。

● 教授はディアスポラ(ローマ帝国によるパレスチナからのユダヤ人追放)について調査したが、それを伝えるユダヤの歴史書は全く存在しない。イギリス人によるユダヤ人追放についての著書があったが、それはローマで、ユダヤ教への改宗者が増えすぎたため、「ユダヤの地」に追放された件だった。

● かつての教授は、ディアスポラを疑うことはなかった。もっとも左派グループ「マツペン」に属していた教授は、「ユダヤ人は2000年前に追放されたが、現在パレスチナに1300年以上住んでいる人々より、権利があると主張するのは愚かだ」と思っていた。

● 2000年前のディアスポラを立証できないため、7世紀にアラブ人によって追放された、と推論するシオニズム系の歴史家がいるが、そのような記録はない。しかしその時ユダヤ教からイスラム教に改宗した人々も多かったと思われる。

● その7世紀にパレスチナに住んでいたキリスト教徒やユダヤ教徒は、自然とイスラム教徒に改宗したと思われる。ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も一神教の宗教だが、当時のユダヤ教徒にとってイスラム教徒のほうが抵抗感が少なかっただろう。しかもアラブ人の宗教を受け入れれば人頭税を払わなくて済む。多くの農民がユダヤ教からイスラム教に改宗しただろう。(これについては川上氏の別のツイートに補足あり。「改宗」という意識すらなかったのではないか、とのこと)

● もちろん、アラブ人も様々に混血しているから、現在のパレスチナ人がそのまま、古代ユダヤ人の子孫だとは言えない。しかし私(オーストリアで生まれたユダヤ人であるシュロモ―・サンド教授)よりも、ハマスの活動家のほうが、古代ユダヤ人の子孫である確率は高いだろう。

● イスラエル初代首相のベングリオンも、それを理解していた。他のシオニストの中にも理解していた者がいた。しかしベングリオンはイスラエル建国宣言の起草に「ユダヤ人はこの地から追放された」と記した。それがイスラエル建国の正当性を与えるからだ。

● かつてユダヤ教徒はヨーロッパで積極的に布教をしていた。ユダヤ教徒である兵士や戦争捕虜や移民が、各地で布教していたのだ。ローマ人がユダヤ人を奴隷にすると、連れていかれた先で布教しユダヤ教を広めた。ローマ帝国がキリスト教を採用し布教を禁じるまで続いた(信仰自体は許された)。イスラム教が根付いた地域でも布教は止まった。
 しかしキリスト教やイスラム教などの「一神教」が支配していない地域では布教活動が続いた。黒海とカスピ海の間で13世紀まで存続したハザール王国はユダヤ教を国教としていた。だからロシアや東欧にユダヤ人が多いのだろう。(補足あり)

● 教授はもともと反占領・パレスチナ国家樹立を支持していたが、特に反発を受けることはなかったという。しかしこの、イスラエルで19週間ベストセラーになった本を出版した後、「シオニストの歴史家たちの反応は最悪」だった。話しかけないどころか目さえ合わせない。教授に殴りかかろうとした者もいた。しかしメディアでは好意的に取り上げられた。ひどい脅迫も多数受けたが、激励の方が多かった。

● ある女性に「私は古代ユダヤ人とつながりはないのか?だったら私は自分がここにいることを正当化できるのか?」と問われた教授は、「文化的なつながりならある。ユダヤ教はイスラムを含めて、西洋文明の基礎となった」「しかし、シオニズムはユダヤ教徒のための国家を作ろうとしたが、宗教では国を所有する権利はない。だから民族としてのユダヤ人をつくった。それがシオニズムの秘密です」
 つまりシオニストはイスラエル国の建国に正当性を持たせるため、無理矢理「ユダヤ人」という民族が存在すると、でっち上げたわけだ。

● アメリカに住むユダヤ人の精神分析医は教授に、「私の患者たちがこの本を読めば精神的な問題はずっと少なくなるだろう」という手紙を送った。教授は、「彼は、自分も普通の人間なのだ、と感じたのだろう」と語る。
 「ユダヤ人は、古代ユダヤ人の子孫という特殊性はない。かつてヨーロッパや北アフリカやロシアで、ユダヤ教に改宗した人々である。彼はそれを悟って安心したのだろう」

・・・教授の著書は多くのイスラエル国民のアイデンティティを揺るがしたのだろう。彼らには、自分は2000年前にパレスチナで生きていた人々の子孫だという思い込みがあり、これを否定できない。教授は次のように語る。
 「ユダヤ系イスラエル人が中東で未来を望むならば、自分たちには古代のユダヤの民の子孫だという誤ったアイデンティティーから脱却して、アラブ人とともに国づくりをするような未来をつくらねばならない」
 「シオニストの夢想を砕けば済むわけではない。この国で生まれた世代はここにいる権利がある。歴史に過ちがあっても歴史を戻ることはできない」
 さて、イスラエル国とその国民は、「アラブ人とともに国づくりをするような未来」を選択できるだろうか?



・・・勝手に補足。ハザール王国に住んでいたユダヤ人がアシュケナジムとなった、という考察は、遺伝子研究によって否定されたという。ウィキペディアの項目「ハザール」より。
 さらに別の研究だが、たとえばA国に住んでいるユダヤ人と、遠く離れたB国に住んでいるユダヤ人に、遺伝子の共有が見られる。A国のユダヤ人とA国の非ユダヤ人を比較するより、A国のユダヤ人とB国のユダヤ人のほうが、遺伝子の共有が多い、という。しかもその共有する遺伝子は「レバント起源」・・・つまり地中海東岸、現在のイスラエルを含む地域を起源にしているという。ウィキペディアの項目「シュロモー・サンド」の英語版より。

 たしかに、ヨーロッパ各国で布教していたユダヤ教徒たちが一代で絶えたわけではなく、同じユダヤ教徒と、または新たに改宗した人々と子孫を残したのかもしれない。離れた国に住んでいるユダヤ教徒に遺伝子に共有が見られても不思議はないだろう。
 もちろん現在のパレスチナ人のほうが古代ユダヤ人との遺伝的なつながりが深いだろうが、現在のイスラエル国民も、古代ユダヤ人の遺伝子をごく薄く受け継いでいるのかもしれない。だからシュロモー・サンド教授は(パレスチナ人のほうが)「確率は高い」と述べたのだろう。この遺伝子研究によってシオニストが何か言い始めても、シオニストがパレスチナ人排除の不当性が際立つだけだ。

 ユダヤ教徒たちは現地の人々と子孫を残すことによって、ユダヤ教を後世に残せたのだろう。次のような研究もある。
◇ 【遺伝】アシュケナージ系ユダヤ人の母方の系統の起源がヨーロッパである可能性が浮上 | Nature Communications | Nature Portfolio
 「アシュケナージ系ユダヤ人のミトコンドリアDNAの変異の少なくとも80%が、中近東やコーカサス地方ではなく、先史時代のヨーロッパの系統を受け継いでいる」・・・さっぱり分らんが「ヨーロッパの地元の女性が動員されて、改宗したことがアシュケナージ系ユダヤ人コミュニティーの形成にとって重要だった」、つまりヨーロッパ人と混血したわけだ。

 現代のアシュケナジムが古代ユダヤ人と生物学的なつながりは全くない、というわけではなさそうだが、自分が国家あるいは特定の民族の一員であることでアイデンティティを保つというのは悲しいものだな。シュロモー・サンド教授が言うように、国家や血統ではなく「文化的なつながり」に誇りを持ち、国家や民族といった「まやかし」から自由になるべきだ。つまりシオニズムから脱却するべきだ。

いいなと思ったら応援しよう!