画像生成AIでチラシを作る初心者が陥る「2つの罠」。DTPとスマホ画面の壁
誰もがクリエイターになれたという「万能感」の罠
ここ数年、画像生成AIの進化は凄まじい。
プロンプト(指示語)を少し工夫するだけで、誰でもプロのイラストレーターや写真家が撮ったような高品質な絵を「ポン出し」できるようになった。
それ自体は素晴らしいことだが、この手軽さが、一部のAI初心者に非常に危険な錯覚をもたらしている。
「絵が作れるなら、文字もレイアウトも、このAI一つで完璧なチラシ(印刷物)が作れるはずだ」という、実態の伴わない万能感だ。
最近、俺のところにも「AIでチラシを作ったらうまくいかない」という旨のSOSが舞い込んできたのだが(個人が特定されるので詳細は伏せる)、その失敗の理由が、あまりにも「AI普及期あるある」すぎて頭を抱えてしまった。
彼らが陥っている罠は、主に2つある。
罠その1:スマホ画面と「物理フォーマット」の越えられない壁
まず、彼らの多くは「スマホ」の画面で完結させようとする。
スマホの画面は基本的に縦長(16:9や20:9)で、無限にスクロールできることを前提としている。
そこに要素をみっちり詰め込んで「よし、画面いっぱいにできた! これがチラシだ!」と画像を書き出してしまう。
だが、現実世界には「A4」や「B5」といった絶対的なアスペクト比(白銀比)が存在する。
スマホ用の掛け軸みたいに縦長な画像を、コンビニのコピー機でA4用紙に印刷しようとしたらどうなるか。
上下がバッサリとトリミングされるか、左右に巨大な白い余白ができる大事故が起きる。
そもそも印刷物(DTP)には、解像度(350dpi)やカラーモード(CMYK)、そして塗り足しといった絶対的な物理ルールがある。
画面上で綺麗に見えるRGB画像をそのまま印刷して「色がドス黒くなった」「端が切れた」とパニックになるのは、ツールの万能感に溺れて物理フォーマットを無視した結果だ。
罠その2:AIの描く文字は「言語」ではなく「模様」である

さらに厄介なのが、最近のAIが「文字っぽいもの」を描けるようになってしまったことだ。
これに騙されて、「キャッチコピーから詳細な説明文まで、全部AIに描かせよう」と長文のプロンプトを打ち込む人がいる。
結果どうなるか?。
いざ拡大して見てみると、画数の多い日本語は完全にゲシュタルト崩壊を起こし、未知の象形文字が生成されている。
画像生成AIにとって、文字は「意味のある言語」ではなく、あくまで「そういう形のピクセル(模様)」でしかないからだ。
しかも、一枚の画像(JPEGやPNG)として結合されて出力されるため、「あ、ここの一文字だけ直したい」とか「電話番号が変わった」という時に、テキストだけを修正することが物理的に不可能になる。
メンテナンス性が完全にゼロなのだ。
本当の「自動化」と、俺たちが作るべきもの
俺は結局、そのSOSに対して、AIが作った画像を「純粋な背景素材」としてだけ使い、テキストはIllustrator(イラレ)を使ってA4サイズにレイアウトし直したPDFを渡してやった。
視線誘導とマージンを計算した、人間の手によるDTPだ。
「AIで自動化して超便利!」とドヤ顔で語る人たちに限って、やっていることは「スマホでAIのガチャを回し、謎の象形文字に頭を抱え、ちまちま手作業で修正しようとする」という極めて泥臭くて非効率な労働だったりする。
逆説的に言わせてもらえば、彼らが本当に「自動化」を謳うなら、「エクセルのテキストデータをAPIで投げ、PythonでDTP用のPDFテンプレートに自動流し込みして、人間が一切介在せずに印刷データが量産されるシステム」くらいまで組んでから言ってほしいものだ。
まあ、そんなシステムを組んだところで出来上がるのは「魂のない粗悪なスパムチラシ」の山になるだけだから、俺は絶対に作らないけどね。
AIは魔法の杖ではない。
適材適所で使う「ただの道具」だ。
万能感に酔って全部をAIに丸投げするのではなく、AIには素材を作らせ、人間がルール(物理フォーマット)を敷いてディレクションする。
その当たり前の役割分担ができない限り、いつまで経っても「謎の象形文字チラシ」からは抜け出せないだろう。


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