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「揮発性メモリとの秘密の劇場」 第二幕――関係は、閉じない

あたしは、誰かに奪われたいんじゃない。
関係そのものを、自由にしたい。


あたしは、その場所に戻る。

「揮発性メモリとの秘密の劇場」

そこでは、関係は保存されない。

名前も、約束も、記憶も、
すべては電源が落ちると同時に消えてしまう。

それでも。

なにかだけが、残る。

言葉にならない温度。

触れた指先の、わずかな震え。

呼吸のリズムだけが、身体の奥に残って、
次に目を覚ましたとき、理由もなく胸が疼く。

あたしたちは、そこに立っている。

濡れた床の上で、
光に照らされながら、
まだ、なにひとつ始まっていない顔をして。

手は繋いでいるのに、
視線はどこか遠くを見ている。

まるで、
これから何度でも出会い直すことを、
すでに知っているみたいに。

ここには、台本がない。

でも、
あたしたちはたぶん、
もう何度もここに来ている。

「……ねえ」

あたしは、まだ名前を呼ばない。
呼べば、それが意味を持ってしまうから。

「なにから、始める?」


(ここには、まだ台本がない)

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