推しだった人と繋がった話①
推し()と繋がった話をしようと思う。
でも。
最初に言っておく。
その人は私の推しだったのか少し怪しい。
デビューして一ヶ月くらい。
通った。
たぶん。
そのくらい。
特典会は行ってもチェキ一枚。
他に好きな推しができて。
自然と行かなくなった。
その後も。
たまに気が向いたら公演に入る。
気が向いたら特典会までいる。
そんな距離感。
正直。
人生で一番お金を使わなかった推しだと思う。
でも。
一番不思議な縁があったのもその人だった。
当時は今よりもっと距離が曖昧だった。
ファンも少なかった。
DMもできた。
特典会も手探りだった。
アイドル側も。
オタク側も。
何が正解か分かっていなかった。
私はその空気が好きだった。
慣れていない感じ。
ぎこちない感じ。
アイドルになりきれていない感じ。
でも。
だんだんアイドルになっていった。
対応も。
話し方も。
距離感も。
ちゃんとアイドルになっていった。
それは良いことだと思う。
たぶん。
でも私は。
だったら他の人でいいや。
と思った。
そして行かなくなった。
まぁ。
たまに公演には行っていた。
完全に興味を失ったわけでもなかった。
ただ。
完全な推しではなかった。
少なくとも私の中では。
それでも不思議だった。
よく覚えてるな。
とは思っていた。
名前とか。
昔話したこととか。
私は特典会なんて毎回行くわけじゃない。
行ったり行かなかったり。
チェキも一枚。
そもそも通っていた期間も短い。
なのに。
会えば普通に話が続く。
あれ。
覚えてるんだ。
くらいの驚きはあった。
その頃には。
ファンも増えていた。
接触も上手くなっていた。
むしろ上手くなりすぎていた。
私は少し萎えた。
最初に好きだったのは。
慣れていない感じだったから。
手探りだった頃だったから。
ぎこちなさだったから。
ちゃんとアイドルになっていく姿は。
正しい。
正しいんだけど。
私が好きだった部分は。
そこじゃなかった。
だから。
応援はしていた。
でも推してはいなかった。
そんな感じ。
そんなことを続けていた。
一ヶ月に一回。
二ヶ月に一回。
思い出したように公演へ行く。
推しではない。
でも知っている。
そんな距離感。
すると。
ある日。
急に解散が発表された。
正直驚いた。
結構人気だった。
客入りもどんどん増えて。
むしろ順調そうに見えた。
でも。
蓋を開けてみれば。
解散ではなかった。
メンバーの分裂だった。
グループが二つになるらしい。
再デビューみたいなもの。
噂によると。
人気メンを二分して。
新メンバーを加入させて。
効率よく回したいらしい。
知らんけど。
地下アイドル界隈は。
だいたい知らんけどで出来ている。
SNSで発表されたそれは。
あっという間に広まった。
界隈も騒いでいた。
解散まで大盛況だったらしい。
友達から聞いた。
私は。
なんとなく。
良かったね。
と思った。
それだけだった。
どうせまたデビューするんだろうし。
解散と言われても。
そんな感じがしなかった。
だって。
誰もいなくなるわけじゃない。
卒業でもない。
引退でもない。
グループ名が変わるだけ。
くらいに思っていた。
だから。
最後の公演も行かなかった。
最後の特典会も行かなかった。
今思うと。
たぶん。
私はその人を本気で推していなかったんだと思う。
ある日。
対バンがあった。
もちろん。
私は別の推しを見に来ていた。
その頃にはもう。
完全にそっちだった。
会場に入って。
何気なく関係者席を見た時。
彼がいた。
黒マスク。
黒パーカー。
黒ずくめ。
一瞬で分かった。
見たことのある服だったから。
まぁ。
友達のライブを見に来るなんて珍しくない。
この界隈は狭い。
みんな顔が広い。
友達多いな。
くらいにしか思わなかった。
推しの出番が終わった。
私は後方へ下がった。
のんびり他のグループを見ていた。
すると。
背後に気配がした。
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