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5分でわかる!『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(しっぱいのほんしつ にほんぐんのそしきろんてきけんきゅう)は、社会科学研究を用いた旧日本軍の戦史研究。研究者6名(戸部良一寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀野中郁次郎)での共著である。軍事史研究家と組織経営学の専門家がタッグを組んだ、1984年初刊の組織論の名著である。最近、『90分でわかる!失敗の本質-太平洋戦争に見る日本的組織の欠陥』という解説書も出版されている。そこで私独自の視点でも『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』の要点をまとめたいと思う。

本書の構成は、各戦史の概要とその過程での「日本的組織特有の失敗」を戦史ごとに考察し、最後に「総論」として「日本軍という日本的組織の組織論的特徴」を述べる形式になっている。

研究対象になっている戦史は、ノモンハン事件と、太平洋戦争におけるミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦である。

通読した感想として、この戦史の部分は読まなくてもよい。ほとんどの記述がWikipediaの当該ページの底本になっていると思われるからだ。結論だけ知りたいなら総論だけで良いが、もし、分析のプロセスに納得感を得たかったり、具体的な戦況自体に興味があるのであれば、戦史パートも有用かもしれない。

以下に、本書のオリジナルである、「日本軍の日本的組織特有の特徴」を挙げる。

戦略的失敗

  • 曖昧な戦略目標→統一した大戦略の欠如

  • 結果として採用した、短期決戦の戦略志向

  • 主観的で「帰納的」な戦略策定:空気の支配(客観的合理性よりも、その場の雰囲気や情緒的な人間関係が意思決定を規定すること)→精神主義の蔓延

  • 狭くて進化の無い戦略オプション:硬直化した戦略・戦術コンティンジェンシープラン(プランB)の欠如

  • アンバランスな戦闘技術体系:精神主義への傾倒

組織上の失敗要因


・人的ネットワーク偏重の組織構成
:日本的集団主義「階層がありながら、ほどよい情緒的人的結合と個人の下克上的突出を許容するシステムが共存していた(勝ち戦の時しか機能しない)」(※「人間関係重視、優先という前例・組織文化」
・属人的な組織の統合
・学習を軽視した組織 シングルループ学習(
現状の目的や前提を疑わない)、『硬直化した組織』 ※対義語:ダブルループ学習(前提を疑い、目的や価値観、意思決定の枠組み自体を根本から見直す学習プロセス)
・プロセスや動機を重視した評価:情緒主義

軍事組織の環境適応の分析枠組み


環境、戦略、資源、組織構造、管理システム、組織行動、組織学習

組織が「自己革新組織」であるかどうか?

自己革新組織の原則 ※アメリカ海兵隊との対比

  • 不均衡の創造『平時←→戦時の切替』硬直化した組織

  • 自律性の確保

  • 創造性破壊による突出

  • 異端・偶然との共存

  • 知識の淘汰と蓄積

  • 統合的価値の共有

→「日本軍の『過学習』『過剰適応』」が失敗の本質ではないか?
陸海軍の「分化(仮想敵の差異)」、過去の成功体験(日露戦争や日中戦争)や、特定の技術体系(海軍の「決戦主義」「艦隊決戦用艦艇への偏重、補助艦艇・兵站の軽視」、陸軍の「白兵戦主義・精神主義」、「技術力・生産能力の上限による砲兵の弾薬の備蓄不足」)への過度な執着など
「日本軍最大の特徴は『言葉を奪った』事である」by山本七平
:「言葉の支配」
「論理的な議論よりも『空気』が優先され、異論を唱えることが封じられた」「論理的な議論が封じられることで、組織が自己修正能力を失うプロセス」

現代日本組織への適応


→連続している面、非連続な面、両方存在する
連続している面:日本政府、マスコミ、
非連続な面:(高度経済成長期の)日本企業(統率に関しては連続している)

日本企業(日本的組織)の特徴


帰納的戦略策定
長所
・下位の組織単位の自律的な環境適応が可能
・定型化されないあいまいな情報を上手く伝達・処理できる
・組織の末端の学習を活性化させ、現場における知識や経験の蓄積を促進し、情報感度を高める
・集団あるいは組織の価値観によって、人々を内発的に動機づけ、大きな心理的エネルギーを引き出す事ができる

戦略面の欠点
明確な戦略概念が乏しい
急激な構造的変化への適応が難しい
大きなブレイクスルーを生み出すことが難しい
組織としての欠点
集団間の統合の負荷が大きい
意思決定に長い時間を要する
集団思考による異端の排除が起こる

「日本的企業組織も新たな環境変化に対応する為に、自己革新能力を創造できるかどうかが問われている。」
→文庫版あとがき(平成3年/1991年)「(日本が)世界の先頭を走るようになり、より一層、グランドデザインや概念創造、ブレイクスルーの創造がより必要とされている」

以上が『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』の概要である。

1991年に追記されているように、既に「日本的組織の『自己革新組織への転換』」が提言されているが、私には、「失われた30年」で「日本式組織の問題点」が改善されたとは、とても思えない。


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