ふぉれすとどわあふ|ダークフォレストのカラス
ヤバ猫さんの 時の旅人は語り、そして #ふぉれすとどわあふ の
③『薬草の書』を取り戻す
歩行者bさんの ふぉれすとどわあふ⑨
の
②魔女の正体
に続けます。
これまでとテイストの違うお話です。
⚠️残酷描写注意⚠️
オーウェンが外に飛び出すと、一天にわかにかき曇り、瞬く間に空は黒雲に覆われて、ゴウゴウと風が吹き荒れ始めた。
驚いて他の者たちも出てきたが、オーウェンは厳しい声で言った。
「私以外、手を出してはいけません」
そこへ、魔女が現れた。
はじめは美しい女性の姿をしていたが、みるみるうちにその姿を変え、空を覆わんばかりの巨大な大鴉になった。
「やはり、お前の仕業だったか、カラスよ」
大鴉の目は憎しみに燃えていた。
「やっと会えたなオーウェン、長かった……ずっとこの時を待っていた」
大鴉は語り始めた。
「あの時代、あの次元、お前はハイタカに転生していた。そして俺の母を殺した。」
オーウェンは表情を変えなかった。
「あの時代、長く続いた旱魃で俺たちは皆飢えていた。母は俺たちに食わせるためにハイタカの雛を襲った。お前の子だった。
怒り狂ったお前は、母をその鉤爪と嘴で八つ裂きにした。
俺はなんとか生き延びたさ。そしてお前をずっと探していたんだ。
何百年も時空を彷徨いながらな」
大鴉はオーウェンににじりよった。
風がいっそう強く吹き付け、立っているのもやっとだったが、オーウェンは揺らぐこともなく大鴉を見据えて言った。
「私もお前に会いたかった。これを渡したくてな」
そう言うと、オーウェンは自らの右手を胸に突き刺すと心の臓を取り出して大鴉に差し出した。
後ろではミユもシドニーもケイも、皆が凍りついて見ていた。
大鴉はオーウェンの手に握られた血の滴る心臓を食い入るように見つめた。
そして一歩踏み出した。
「ダメッ」
そのときケイが飛び出して、大鴉とオーウェンの間に立った。精一杯毛を逆立てて膨らませ、牙を剥き出して大鴉を睨みつけた。
大鴉はケイを見つめ、少し哀しい表情を浮かべると、羽ばたきひとつでケイの頭上を軽々と越えてオーウェンの正面に降り立った。
そして、おもむろに頭を下げると自らの胸に嘴を突き刺して心臓を咥えた。
大鴉は自分の心臓をオーウェンの心臓に触れさせた。
途端にに激しい火花が散り、あたりに目も眩む閃光が走った。
誰もが目をぎゅっと瞑った。
目を開けると、風が止んでいた。
雲が流れ、光が差してきた。
オーウェンの足元には、軽石のように萎んでカサカサになったカラスの心臓が転がっていて、その横でカラスが事切れていた。
カラスはいつのまにか真っ白な羽毛に覆われていた。
オーウェンは自分の心臓を胸に戻して言った。
「生き物たちの食うか食われるかに、本来罪悪感も恨みもないんだ。だがこのカラスは、なぜだか憎しみの心に囚われてしまった。そのことにずっと長い間苦しめられていたんだ。
それで、薬草の書で憎しみの心を消す薬を作ろうとした。
ところが、憎しみはあまりに強いから植物の力だけでは足りなくて、恨みのもとになった相手と自分の心臓の血を混ぜたものが必要だったんだ。
憎しみの心だけで生きていた奴は、憎しみが消えたらその命もやっと終わらせることができたんだ」
皆、黙って聞いていた。
ケイがそっとカラスの亡骸に歩みよった。
そして、ちろ、とその羽毛を舐めた。
すると、真っ白なカラスの亡骸は、ふわりと浮かび上がり、そのまま天に昇っていって消えた。
カラスがいた場所には「薬草の書」が残されていた。
「みんな、中に入りましょうか」
ミユが言った。
オーウェンは「薬草の書」を拾い上げ、皆に続いてドアから入ったところでくずおれた。
「カラスの……血が……混ざったからな」
次回テーマ
①オーウェンを助けて
②都会の人の正体
