「全部知っている必要はない」海外大学でアドバイザーとして学んだ気持ちがラクになる働き方のコツ3選
ブリティッシュコロンビア大学で、アカデミックアドバイザー兼プログラム運営担当として働いていた頃の話です。
入社初日から学生からの問い合わせメールがバンバン届き、最初の数ヶ月はほぼ毎日頭痛に悩まされていました。でも、その中で少しずつ身につけた「気持ちがラクになる働き方のコツ」があります。今日はその中から、特に印象に残っている3つの学びをまとめます。
これから学生支援に携わる方、すでに現場で日々向き合っている方、あるいは他部署から学生支援の現場を知りたい方に、少しでも参考になれば幸いです。

① 全知全能である必要はない
入職後まもなく、私はある事実に気づきました。
「わからないまま、学生対応が始まる。」
前任者と重なる期間は約2週間。総合的な研修も、網羅的なマニュアルもない。でも、学生からの問い合わせは容赦なく毎日届く。当然、「このケース、どうすればいいの?」という状況が次々に発生します。
そんな時に自分を救ってくれたのが、この一言でした。
"Let me look into this. I'll get back to you."
「少し調べさせてください。後ほどまたご連絡します。」
最初は口にするのに少し勇気が要りましたが、この言葉を使い始めてからは、「その場で完璧に答えなくていい」という安心感が生まれました。
実際、私が対応していた専攻プログラムの制度はかなり複雑で、何かあるたびにAcademic Calendar(学則)を開いては調べる日々でした。
仕事に慣れてからも、想定外のケースは必ず出てきます。そして、コロナ禍を受けて制度変更が幾度とあった大学だったからこそ、「調べて戻ってくる」という姿勢は、最後まで自分の支えでした。
② 実践共同体:一人で悩まないための「横のつながり」
入職して間もない頃、私は学内の「学科マネージャー向け情報共有ミーティング」に声をかけてもらいました。本来、私のポジションは専攻プログラムの担当であり、厳密には学科マネージャーではありませんでしたが、「よかったら参加しない?」と、先輩職員が声をかけてくれたのです。
このミーティングでは、
他部署とのやりとりで発生したトラブル事例の共有
制度改正の情報交換
学内の実務運用の違いに関するディスカッション
などが、毎月行われていました。特にコロナ禍以降は、制度変更のスピードが早く、オンラインで週1回集まることが定着しました。
こうした横のつながりができたことで、
「この件は、あの部署の〇〇さんに聞いてみよう」
「あの学科も似た問題を抱えていたはず」
と、「頼れる人がいる」という感覚が生まれました。

一方で、私のようにアドバイザー職を担当している人たちは、学内に散在していて、情報交換の場がありませんでした。
そこで私は、他学科のアドバイザー数名に声をかけ、少人数での情報交換会をスタート。この取り組みは瞬く間に広がり、最終的には25部署以上からスタッフが集まるネットワークに成長しました。
この「実践共同体(Community of Practice)」があったからこそ、「一人で悩まない」「誰かに相談できる」環境が作れたのだと思います。
今振り返ると、あの場があったことで、私は何度も救われていました。
「誰かに聞ける」
「同じ悩みを抱えている人が他にもいる」
それだけで、日々の学生対応への気持ちの余裕が大きく変わったと感じます。
③ 心のケア:「プロだからこそ、一人で抱えない」
この仕事をしていると、どうしても避けられないのが感情労働です。
不安でいっぱいの学生
怒りをぶつけてくる学生
理不尽な言葉を投げつけられる場面
相手に悪意がないことは分かっていても、受け止め続ける側の心は、確実に疲弊していきます。
そんな時、私にとって大きな転機となったのが、個人的にカウンセリングを受けたときの経験でした。
カウンセラーの方がこう話してくれました。
「私たち心理カウンセラーにも、カウンセラーがついています。特に負荷の大きいケースの後は、必ずデブリーフィングの時間を取るんです。」
この言葉を聞いて、私は初めて「プロだからこそ、一人で抱えないんだ」と気づきました。
それ以来、私は「感情的にしんどい対応があった日は、必ず誰かに話す」「一人で抱え込まない」ことを意識するようになりました。
さらにその後、私は自分が立ち上げたアドバイザー実践共同体のミーティングに、学内の学生支援部門の心理カウンセラーをお招きし、「感情労働とセルフケア」についてのミニ講義をしていただきました。その時、特に印象に残ったのがこのメッセージです。
「相手の感情は、あなたの責任ではありません。」
感情的な言葉を、そのまま心にため込まないこと。それは、「長くこの仕事を続けるために必要なプロのスキル」だと学びました。
おわりに:「支援する側にも、支えが必要」
アドバイザーの仕事は、「正解がひとつではない」ことの連続です。
学生一人ひとりに合わせた対応をしながら、制度も運用も変化していく中で、「すぐに答えが出ない」ことも多々あります。
だからこそ、
わからないことは調べればいい
自分のケアも、仕事の一部
横のつながりを、少しずつでも育てていく
この3つを、これからも大事にしていきたいと感じています。
もしこの記事が、どこかの誰かの「少し気が楽になるきっかけ」になれば、嬉しく思います。
