朝の珈琲を、少しだけ後ろにずらしてみたら。
毎年、夏が近づくにつれて憂鬱になる理由がひとつあった。
それは、自分でも呆れるほどの「汗かき」だ。
通勤の電車に揺られ、会社に到着する頃には、額からも背中からもじわりと汗が噴き出している。動きを止めると涼しい室内に入ったのに、途端さらにドッと吹き出す汗に、毎年のように頭を悩ませていた。
何気なくAIに尋ねてみると、どうやら夏の汗かきの原因は「内臓の冷え」や自律神経の乱れにあるらしい。冷たいものの摂りすぎやエアコンで体が芯から冷えると、体温調節がうまく機能しなくなるのだという。
そこで、長年の朝のルーティンを少しだけ変えてみることにした。
これまでは、目覚めの1杯として楽しんでいた朝の珈琲。
それを、この夏は「生姜紅茶」に変えてみた。
凝ったものである必要はない。スーパーの棚に並んでいる、ごく安価なティーバッグ。そこに、生の生姜をとすり下ろして入れる。仕上げにほんの少し、蜂蜜を。
朝仕事をこなしながら、その特製生姜紅茶をゆっくりと飲む。
喉を通るたびに、お腹の底からじんわりと、心地よい温かさが広がっていくのがわかる。「ポカポカする」と、体が喜んでいるような感覚。
そして、いつものように家を出て、会社へ向かう。
驚いたのは、会社に着いたときだった。
いつもならハンカチが手放せないはずの通勤路だったのに、心なしか首筋を流れる汗が引いている。あの、焦るようなドバッと出る汗が、どこか穏やかに落ち着いている気がするのだ。
「順番を変えただけなのに、気のせい?」
半信半疑だったけれど、AIに答え合わせをしてみたら、どうやら私の体の中で起こった変化は、医学的にも理にかなっていたらしい。
朝一番に内臓を温めることで、体温調節のスイッチが正しく入り、日中の異常な発汗が抑えられたのだ。
だからといって、愛してやまない珈琲を諦めたわけではない。
会社に到着し、席について一息つく。そこからが、私の第2の朝の時間。
家から持参したお気に入りのドリップ珈琲を飲む。「やっぱり、朝は珈琲ね」と、この至福の瞬間だけはやめられない。
朝一番の珈琲を、生姜紅茶へ。
そして大好きな珈琲は、会社に着いてからのご褒美へ。
ほんの少し、飲む順番を前後させただけ。
それだけで、あんなに毎年苦しんでいた夏の朝が、驚くほど快適に、そして愛おしい時間に変わり始めている。
そうは言っても、まだまだ5月、夏はこれから
少しだけ、今年の夏の過ごし方を変えてみよう。
今この新しいリズムと一緒に、心地よく乗り越えられそうな予感がしている。
