季節と身体シリーズ① 食欲がないのは身体のサイン? ― 夏バテ対策の前に、身体が伝えていること ―
毎年訪れる「土用の丑の日」。
この時期になると、スーパーや飲食店にはうなぎが並び、「スタミナをつけて夏を乗り切ろう」という言葉をあちこちで目にします。
もし今、
「暑くて食欲がないけれど、今日はうなぎを食べた方がいいのかな。」
そんなふうに迷っている方がいたら、今日は少し違う視点をお伝えしたいと思います。
実は、暑いときに食欲が落ちることは、身体が環境に適応しようとしている自然な反応の一つでもあります。
だから今日は、「夏バテだから食べなきゃ」という前に、身体では何が起きているのかを一緒に見ていきましょう。
7月の暑さの正体──湿気と自律神経の不協和音
7月の暑さは、8月の暑さとは少し質が違います。
梅雨明け直後は湿度が高く、汗をかいても蒸発しにくいため、熱を外へ逃がしにくくなります。
さらに、この時期はまだ暑さに十分慣れていない「暑熱順化」の途中。
体温を一定に保つため、自律神経はフル回転しています。
だから、
「なんとなくだるい」
「身体が重い」
「食欲がわかない」
そんな状態になることも少なくありません。
身体は今、暑さに適応するために思っている以上に働いているのです。
食欲が落ちるのは、身体の防衛反応
そんなときに起こる食欲低下。
私はこれを、身体が自分を守るための「省エネモード」だと考えています。
食べ物を消化し、吸収し、代謝することにも、たくさんのエネルギーが必要です。
外は暑く、自律神経も頑張り続けている状態で、さらに消化の負担まで増えれば、胃腸は休む暇がありません。
だから身体は、
「今は少し胃腸を休ませよう。」
と、食欲を落として負担を減らそうとします。
つまり、
「食べられない身体」ではなく、「身体が今できることを選んでいる状態」なのです。
土用の丑の日は、250年前のコピーライティング?
ところが私たちは、その身体のサインを
「夏バテだからスタミナをつけなきゃ」
と受け取ってしまうことがあります。
そこで思い出したいのが、「土用の丑の日」の由来です。
諸説ありますが、夏場は売れなかったうなぎを売るために、平賀源内が「本日土用丑の日」と掲げたことが始まりとも言われています。
「丑の日に『う』のつくものを食べると縁起が良い」という考えを上手く活かし、
「夏はうなぎを食べてスタミナをつける」
という文化が広まりました。
250年以上経った今でも、日本中の食卓を動かしている。
そう考えると、本当にすごいコピーライティングです。
でも、身体の仕組みから見ると少し違う景色が見えてきます。
胃腸が
「少し休ませてほしい」
と言っているところへ、
脂質やたんぱく質が多く、消化に時間のかかるものを無理に食べれば、
胃腸にはさらに負担がかかることもあります。
まるで、
休もうとしている胃腸に「残業しよう!」と声をかけているようなもの。
もちろん、食欲があり、「今日は美味しく食べたい」と感じる人まで我慢する必要はありません。
でも、身体が「今日は重たい」と感じているなら、そのサインも大切にしてあげたいのです。
今日の身体に合わせて選ぶ
では、暑くて食欲がない日は、どう過ごしたらいいのでしょうか。
まず大切なのは、暑さに少しずつ身体を慣らしていくこと。
無理のない範囲で身体を動かしたり、お風呂に入ったりして、汗をかける身体を育てることも夏の準備になります。
そして、食欲がない日は無理にスタミナ食を詰め込むより、胃腸を休ませることを優先してみてください。
例えば、
・おかゆや雑炊
・具だくさんの味噌汁
・豆腐
・やわらかく煮た野菜
・消化のよいものを少しずつ
そんな食べ方でも十分です。
スイカやきゅうり、トマトなど旬の夏野菜も、水分やミネラルを補う助けになります。
ただし、冷房の効いた室内で冷たいものばかり続いていると感じる日は、常温でいただいたり、温かい汁物を一品添えたりと、その日の身体に合わせて調整してみてください。
身体は、ちゃんと答えを教えてくれる
私が施術の中でも大切にしているのは、
「身体の反応を見ること」です。
水分は自然に飲めていますか
少しなら食べられそうですか
食べたあと、身体は楽になりましたか
それとも重たく感じましたか
身体は、
「何を食べるべきか」
ではなく、
「どう食べると心地よいか」
をいつも教えてくれています。
食欲がない自分を責める必要はありません。
「夏だからこうするべき」という情報だけではなく、今日の身体がどんな状態なのかを感じながら選んでみる。
それが、この暑い季節を心地よく過ごすための一番の近道だと私は思っています。
おわりに
身体は、季節とともに少しずつ変化しています。
夏のはじめには心地よかったことが、夏の終わりには合わなくなることもあります。
だから、昨日までの正解が、今日の正解とは限りません。
次回の「季節と身体シリーズ②」では、立秋を迎える頃から始まる「外は暑いのに、身体の中は冷えている」という夏後半の身体の変化についてお話ししたいと思います。
季節が変われば、身体も変わる。
だから昨日までの正解より、今日の身体の声を大切に。
そんな視点を持ちながら、この夏を一緒に過ごしていけたら嬉しいです。
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