12年後、家族に「おやすみ」と言える夜に、婚活の話を書く
小さい頃から、結婚願望は強かった。
9歳、13歳、17歳、21歳と、4年おきにものすごく好きな人ができたが、なかなか実らなかった。
父が30歳で結婚したので、自分も「それまでに」とプレッシャーを感じ、20代では焦っていた。
ところが30歳を過ぎるとどうでも良くなり、気がつくと35歳になっていた。
その頃、知り合いの父娘は「35歳で子どもができた」ということが分かり、「ああ、今子どもができると、こんな感じなのか」と危機感を持ち始めた。
最初はネットで出会いを求めたが、なかなか返事が来ない。
そもそも相手が実在しているのかが分からない。
「業者か?」との疑いがぬぐえず、思い切って、信頼できる結婚相談所に入会しようと決心した。
たしか2日間で10社くらい回った。
「正社員でない」という理由で門前払いだった所。
入会するまで2時間以上粘られた所。
「幹夫様に外見的な魅力はありません」と断言されたメールが来た所。
入会する前から疲れ果ててしまった。
そして最後に訪ねた大手の結婚相談所が一番信頼できると判断し、入会することにした。
どこの結婚相談所でも似ているだろうが、まず自分のプロフィール作成。
相手の希望条件。
それらを登録すると、1ヶ月に2回、マッチングした人のプロフィールが送られてくる。
最初は数が多く、たしか10人前後送られてきた。
その中で気になるプロフィールの人がいたら、相談所の営業所に行き、パソコンで写真を見る。
「会ってみたい」と思ったら申し込む。
相手もOKであれば、後日、営業所で会うことになる。
私の場合は案外早く、入会してから1ヶ月以内に会うことができた。
営業所で30分ほど話し、お互いにもう少し話したければ、近くの飲食店へ。
夕方に待ち合わせたので、あらかじめ調べておいた、オシャレな居酒屋に行った。
話はまあまあ盛り上がった。
介護の話にもなり、「優しい人だな」と思った。
帰りの月がきれいだった。
次の約束をして別れた。
その後も昼に会ったり、テーマパークに行ったりしたが、いまいち「付き合いたい」とはならなかった。
お互いに決定的な言葉を口にしないまま、5回くらい会って自然消滅した。
その時に考えたのは、「相手と手をつなぎたい」と感じるかどうかということ。
それがその後の判断基準になった。
そんなこんなで出会いを重ねた。
「会いたい」と申し込んで断られることもあれば、1度会っても2度目につながらないこともあった。
逆に私が断ったこともあった。
パーティーにも参加した。
大きな会場での立食パーティー。
営業所ごとのアットホームなパーティー。
人間開店寿司のような時間制限で全員と話すパーティー。
パーティー後に1対1で会うこともあったが、それも多くて3回くらい会った後、断られたり、断ったり。
そうこうしているうちに、3年の月日が流れた。
その時点で40人くらいは、1対1で会っていた。
相談所主催のセミナーにも参加した。
話し方、ファッション、心理学など。
私は臨床心理士だが、それとこれとでは訳が違う。
だから必死に学んだ。
婚活本も読んだ。
ある本に「30代後半の年間成婚率は1%」と書かれていた。
上位1%に入るべく努力した。
ストレスからか、少し吃音気味になった。
そんなある秋の日。
ものすごく好きな人と出会えた。
初めて約束時間前に来た女性。
「なんでここに?」と思うくらい美人だった。
昼間の喫茶店で話し込み、次の約束もできた。
次の約束までが長い。
スマホのメールで間をつなぐ。
仕事の合間に確認し、返信が来た時はスマホを握り締め、未来に光が差した。
2回目は12月、映画を見てディナー。
私から指を絡めて手をつなぐと、「こっちのほうがあったかいから」と言って、ミトンつなぎをしてきた。
極寒のイルミネーションの前で、両手を握って告白した。
1週間前、下見した場所。
返事は保留。
メールの返信がないまま年を越した。
返信を待つのが辛い。
辛い。
辛い。
ひとり暮らしの布団の中、時計の針を見つめる。
1分1秒が苦しい。
息をするのも辛い。
相談所のカウンセラーにも相談した。
「まだ見込みはあるから待って」のようなことを言われた。
やっと返信が来た。
断りの返事だった。
その頃読んでいた恋愛本に、「相手をひとりに絞るな」と書かれていた。
だから半分待つことにした。
もう半分で、新しい人を探し始めた。
新しい人と会いながら、たまにその人にメールを送った。
返信がある時もない時もあった。
そのうち「復活できれば良いけど、新しい人が見つかるのも良い」と思えるようになった。
「ひとりに絞るな」は良い。
それを知ってから余裕ができた。
婚活は一途になったら負け。
正式な付き合いでなければ、同時進行も許される。
そんなふうにコツをつかんできた頃。
知らない番号から着信があった。
出ると1年前、1回で断られた人。
「1年間考え、また会いたくなった」とのこと。
会いに行くと、すでにその人が来ていた。
私はかなり時間前に行くタイプ。
そんな私よりも早く来ていた。
昼間の喫茶店で話すと、今まで会った50人くらいの中で、一番性格が良かった。
私のことを好きみたいだ。
「それも悪くないな」と思った。
その人とアミューズメントパークに行った。
ディナーの帰りに告白した。
OKだった。
この人と結婚しよう。
彼女もそう思ってくれた。
後日、ふたりで結婚相談所に退会届を出しに行った。
12年後、妻、娘、息子に「おやすみ」と言った後、この文章を書いている。
