作詞家 井上陽水
井上陽水は大麻所持で捕まったことがある。懲役8年、執行猶予2年だった。だからといって井上陽水のことを「シガーソングライター」と呼ぶのは妥当ではない。
あいみょんが挑むラスボスは吉田拓郎ではなく井上陽水なのではないかと思う。
井上陽水は軽くて深い言葉を艶のある声にのせて歌う。そして何よりも井上陽水は稀代の作詞家である。そう、作詞にこそ井上陽水の魅力が詰まっているのだ。
そんな、言葉を巧みに操る才能の一端をどうぞ!
1.【ワインレッドの心】より
<1回目のサビ>
あの消えそうに燃えそうなワインレッドの
心を持つあなたの願いがかなうのに
<2回目のサビ>
あの消えそうに燃えそうなワインレッドの
心をまだもてあましているのさ この夜も
<3回目のサビ> ※エンディング
あの消えそうに燃えそうなワインレッドの
心を写しだしてみせてよ ゆれながら
1回目2回目のサビの歌詞は過不足なく完成している。しかし3回目のサビは1回目2回目の息苦しさから彼女を救うことを目的とした変換の言葉「ゆれながら」を充てて、溶けていく余韻を創造している。
2.【恋の予感】より
<1回目のサビ>
夜は気ままに あなたを躍らせるだけ
恋の予感が ただかけぬけるだけ
<2回目・4回目のサビ> ※4回目はエンディング
風は気まぐれ あなたを惑わせるだけ
恋の予感が ただかけぬけるだけ
<3回目のサビ>
星のあいだを さまよい流されるだけ
夢のつづきを またみせられるだけ
「ワインレッドの心」と同じ手法が取られているが、ここではタイトルの「恋の予感が」を最も印象的な3回目のサビで「夢のつづきを」に変換していることに驚く。「星のあいだを」とフィットする気持ちの良さ、そしてなんといっても「夢のつづきを」という隠し玉のフレーズは「恋の予感が」以上の魅力を備えている。
「夢のつづき」という別の歌が、「恋の予感」を収録したアルバム「安全地帯Ⅲ」の次のアルバムである「安全地帯Ⅳ」の一曲目にあるのも面白い。
3.【アジアの純真】より
地図の黄河に 星座を 全部 浮かべて
ピュアなハートが 誰かに めぐり会えそうに
流されて行く 未来の方へ
光輝く宝石のような歌詞。これが井上陽水の底力。
4.【5月の別れ】より
星の降る暗がりでレタスの芽がめばえて
眠りから醒めながら夢をひとつだけ
あなたに叶えてくれる
“井上陽水の「5月の別れ」という曲に「レタス」の歌詞が出てきます。これは聴く人にどんな印象を与えるものですか?”
以下の文章はこの質問に対するAIからの回答です。
“井上陽水の「5月の別れ」は、5月という季節に別れを歌った曲です。歌詞には、夜空を見上げて星を眺めたり、レタスの芽が芽生える様子が描かれています。この曲は、青春時代に別れを迎えた人々にとって、切ない思い出を呼び起こすものとして親しまれています。
「レタス」という言葉が出てくる箇所は、「星の降る暗がりでレタスの芽がめばえて」”という部分です。この歌詞からは、新しい命や希望が生まれるという印象を受けます”
AIの回答がとても見事だったのでそのまま引用した次第です。
「レタス」の登場に井上陽水の天才を感じました。
5.【氷の世界】より
人を傷つけたいな 誰か傷つけたいな
だけどできない理由はやっぱりただ自分が恐いだけなんだな
ふるえているのは寒さのせいだろ 恐いんじゃないネ
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
吉田拓郎に「落陽」があるように、井上陽水には「氷の世界」がある。以前井上陽水を特集したテレビ番組の中で、作家の伊集院静氏がこの歌の世界観をドストエフスキーの「罪と罰」に喩えていた。
心の世界は氷の世界によく似ている。この一曲だけでも井上陽水の名は残る。
シンガーとしてもソングライターとしても最高!
井上陽水は優れた作詞家である。

