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【連載】~昭和パソコンオタク列伝~ 第9回:Windows95がすべてを変えた 〜GUI革命の衝撃〜


1995年。
その年に発売された一本のソフトウェアが、日本中の空気を変えた。

それが、マイクロソフトの Windows 95 である。

深夜販売に長蛇の列ができ、ニュース番組がパソコンソフトの発売をトップで扱う。いま思えば異様な熱気だったが、当時はそれほどまでに「新しい時代の入り口」が開いた瞬間だったのだ。


オフコンの時代の終わり

私が初めてWindows95に触れたのは、職場だった。

それまで会社では、いわゆる“オフコン”が稼働していた。黒い画面に緑色の文字。キーボードからコマンドを叩き込み、決められた業務処理をこなす。そこに遊びも自由もない。ただ、正確さだけが求められる世界だった。

しかし時代の波は確実に押し寄せていた。

「これからはパソコンの時代らしい」

そう言いながら、会社も徐々にオフコンからパソコンへと舵を切っていった。そして導入されたのがWindows95搭載マシンだったのである。


これが“あの”スタートボタンか

初めて電源を入れ、起動音が鳴り、画面にカラフルなデスクトップが広がった瞬間のことは、いまでも鮮明に覚えている。

そして画面左下に鎮座する、あの四角いボタン。

「これが有名なスタートボタンか……」

「すべてはここから始まった。伝説のスタートボタン。」

それだけで妙に感動した。
雑誌で何度も見た“あのボタン”が、いま自分の目の前にある。まるで未来を触っているような気分だった。

スタートボタンを押すと、メニューが現れる。プログラム、設定、検索、終了…。
コマンドを覚えなくても、クリックするだけで世界が広がる。

これは革命だった。


ウィンドウ地獄の混乱

だが、感動はやがて混乱へと変わる。

Wordを開き、Excelを開き、マイコンピュータを開き、コントロールパネルを開き……。

気がつけば画面は無数のウィンドウで埋め尽くされていた。

「いま何をしているんだ?」

どれが手前で、どれが裏に隠れているのか。
最終的には何が何だかわからなくなり、ただ呆然とマウスを握っていた記憶がある。

MS-DOS時代は基本的に“一画面一作業”だった。
だがWindowsは違う。複数の作業を同時に進められる。

それは“便利さ”であると同時に、“自由すぎる世界”でもあった。

GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)は確かに直感的だったが、直感に任せすぎると迷子になる。
あの混乱こそが、新時代への戸惑いだったのだと思う。


小さな衝撃 ― EPSONのノートパソコン

そしてもう一つ、忘れられない衝撃がある。

会社に導入された Epson のノートパソコンだ。

当時のノートパソコンといえば、いまでいう“モバイル”とは程遠い存在だった。厚く、重く、武骨。持ち運ぶというより「移動可能なデスクトップ」と言ったほうが正しい代物である。

しかし、それでも私は目を丸くした。

「小さい……!」

デスクトップが当たり前だった時代に、パソコンが折りたためるという事実。机の上を占領しないという驚き。未来はこんな形をしているのか、と本気で思った。

「いま見れば重厚。だが当時はこれでも「小さい!」と感動した。」

いま街を歩けば、薄くて軽いノートパソコンやタブレットが溢れている。だが、あの頃の“武骨だけれど小さい”ノートの衝撃は、二度と味わえない種類の感動だった。


すべてを変えた存在

Windows95は単なるOSではなかった。

それは、
・マウス操作の一般化
・Plug & Playによる周辺機器の簡略接続
・インターネット普及の土台づくり

といった、数々の変化の起点だった。

パソコンは「一部の専門家の道具」から「誰でも触れる機械」へと変わった。

会社でも、パソコンを扱える人が特別視される時代は終わり、やがて“使えて当たり前”になっていく。あのスタートボタンは、実は働き方のスタートでもあったのだ。


あの混乱があったからこそ

いま振り返ると、あのウィンドウだらけの混乱は決して無駄ではなかった。

あのとき「わからない」と感じながらも触り続けた経験が、その後のパソコン人生の土台になった。
恐る恐るクリックした一回一回が、確実に自分のスキルになっていった。

Windows95は、私たちに“自由”を与えた。
そして同時に、“自分で考える力”も試した。

スタートボタンを初めて押したあの日。
あの小さなクリックは、実は時代そのものを動かすクリックだったのかもしれない。


🔔 第10回予告

東京本社へ転勤したあの頃、秋葉原で出会った一枚のカード。
その名は FreeWave

プロバイダ不要、電話線につなぐだけでインターネットへ――
深夜11時のテレホタイムと、あの接続音の向こうに広がっていた“ネットの海”。

次回、「ネットの海へ漕ぎ出せ!」
インターネット前夜の熱と混沌を語ります。


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