【連載】~昭和パソコンオタク列伝~ 第19回:「NAS沼へようこそ」〜4台体制とPlexという楽園〜
気がつけば、我が家にはNASが4台並んでいた。
以前よりNASには興味があった。
NASがない時代は、メインパソコンのHDDベイに複数のHDDをセットし、記憶域プールを構築してデータを保存していた。
しかしこれには致命的な問題があった。
メインパソコンを24時間稼働させなければ、いつでもデータにアクセスできない。
現実的ではない。
そこで「常時稼働できる専用機」として、NASに惹かれるようになった。
増え続けるデータを整理し、一元管理し、いつでも取り出せるようにしたい。
——最初は、それだけだった。
最初のNASとの出会いは、おなじみのハードオフ。
ジャンクで売られていたBUFFALOのLinkStation LS220DBだった。
HDDは付属していなかったため、別途用意した。
本来、NASは信頼性が命。
ジャンクに手を出すべきではない——頭では分かっていた。
それでも、オタクの血が勝った。
だがこの機種、そう簡単には動かない。
ファームウェアがHDDに書き込まれる方式のため、
ただHDDを入れただけでは起動しない。
しかも——
空のHDDに公式でファームウェアを書き込む手段が存在しない。
つまり、
先人の知恵を頼りに、
非公式ツールと公式更新ツールを組み合わせて試行錯誤するしかない。
これが、めちゃくちゃ大変だった。BUFFALOなんでこんな作りにしたんだよと毒づいたものだった。
だが同時に——最高に楽しかった。
試行錯誤の末、起動した瞬間のあの達成感。
今でも忘れられない。
そしてこの個体は、いまも現役で動いている。
2台目は、実はその隣に並んで売られていたやつだった。
1台目が動いたことで調子に乗り、
後日もう1台——LinkStation LS-WX2.0TLを購入。
こちらも同様にファームウェア問題に苦しめられたが、
2回目でもやはり一筋縄ではいかなかった。
しかし結果的に、問題なく稼働。
3台目。
いつものようにハードオフを巡回していると、
またしても転がっていた——LinkStation LS-WV2.0TL。
ここまでくると、もう理由はない。
完全に“収集癖”である。
そして4台目。
別のハードオフで出会ったTerastation TS-XE2.0TL。
HDD4台搭載済みのモデルだった。
この頃には、ジャンクNASへの抵抗は完全に消えていた。
迷わず購入。
しかも今回は珍しく、
電源を入れて初期化するだけで使えた。
——拍子抜けするほど楽だった。
現在の構成はこうだ。
1台目:PC関連データ専用
(ドライバー、OS、アプリなど“PCの倉庫”)
2台目:創作・発信データ
(NOTE、ブログ、アフィリエイトなど資産系)
3台目:エンタメ専用
(動画・音楽・写真の“メディア倉庫”)
4台目:予備機
(バックアップ・実験用)

ここまで来ると、もう単なる保存ではない。
役割ごとに分離された、小さなデータセンターだ。
そして、この構成に決定的な変化をもたらしたのが——Plexだった。
ただし、ここがポイント。
PlexサーバーはNASでは動かしていない。
Zorin OSを入れた
HP Elite x2 1012 G1。
このマシンを専用サーバーとして運用している。
この構成が、とにかく面白い。
NASは「保管」に徹する。
Plexサーバーは「配信」に専念する。
つまり——
ストレージと処理の完全分離。
Plexを起動すると、
3台目のNASに保存された動画や音楽が自動で整理される。
新規ファイルを追加すれば、
Plexがスキャンして取り込み、ポスター付きで並べてくれる。
その画面は、まるで配信サービス。
「これは…自分専用のNetflixだな」

そう感じた瞬間、
これは単なる視聴環境ではなくなった。
さらにハマるのが“最適化”だ。
導入当初は、
カクつき・読み込み遅延に悩まされた。
原因は明確。
トランスコード=CPU負荷。
そこから始まる、終わりなきチューニング。
・もっと軽くできないか
・設定で改善できるのでは?
・この構成が最適なのか?
気がつけば、環境改善そのものが目的になっていた。
さらに、Plexとは別に以前よりnasneも導入していた。
SONY製とBUFFALO製の2台体制だ。
nasneはTV録画ができ、
外出先からも視聴可能という優れもの。
SONY版がサポート終了と知り、
急遽BUFFALO版を追加した。
そして気づく。
これはもう、
「動画を見る環境」ではない。
“システムを作る遊び”そのものだ。
4台のNASが役割を持ち、
Plexサーバーがそれらを横断する。
データはネットワーク越しに呼び出され、
処理され、最適化され、再生される。
この一連の流れが、たまらなく面白い。
昔は、1台のパソコンにすべてを詰め込んでいた。
だが今は違う。
分けて、つなぐ。
この発想は、完全に“サーバー的思考”だった。
冷静に考えれば、やりすぎだろう。
オーバースペック。
電気代。
管理コスト。
デメリットはいくらでもある。
それでも、やめる理由にはならない。
なぜなら——
楽しいからだ。
構成を考える楽しさ。
最適化していく快感。
自分だけの環境が完成していく満足感。
これはもう実用ではない。
完全に“趣味”であり、“遊び”である。
こうして私は、
データ管理から始まったNASをきっかけに、
“自宅サーバー”という新たな沼へと足を踏み入れた。
そしてその中心にあるのが、Plexとnasne。
パソコン、スマホ、テレビ、タブレット——
あらゆるデバイスからアクセスできる、
分散された、しかし一体化された環境。
それはまさに——
自分だけの楽園だった。
🔔 第20回予告
次回、第20回。いよいよ最終回。
テーマは——AI。
これまで私は、パソコンを組み、データを集め、サーバーを作り上げてきた。
すべては「自分でコントロールする楽しさ」のためだった。
だがある日、その価値観を揺るがす存在と出会う。
それが、AIだった。
知識も、文章も、発想すらも。
“外部にある知能”と向き合うことで、
パソコンとの関係は大きく変わり始める。
60代。
普通なら「完成」に向かう年齢かもしれない。
だが——
私はまだ、進化の途中にいる。
最終回「AIとの出会い」
すべての原点と、これからの話を。
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