自己紹介note:『お前、本当に東大出身か?』〜東大医学部でも現場では通用しなかった僕が「医学教育を変えよう」と誓った話〜
はじめに
『お前、本当に東大出身か?』
研修医1年目のとき、患者対応であまりに立ち往生していた僕に、上級医が放った一言です。
東大医学部に合格したあの日、僕は「将来、患者さんに最善の医療を提供したい」と誓いました。
試験勉強は誰よりも頑張ってきた。知識なら誰にも負けない。
そう信じて医師になった僕が、臨床の現場で“何もできなかった”。
このnoteでは、「知識があっても現場で動けない医師」だった僕が、
なぜ今、「医学教育を変えたい」と思うに至ったのか。
その原点となった挫折と覚悟について、正直に綴ります。
1. 東大医学部卒でも、研修医では「無能」だった
学生時代は、参考書もガイドラインも、論文も人一倍読んできたつもりでした。
でも、いざ現場に立つと何もできない。
点滴はどうする?
検査やモニタリングは?
本当にこのまま帰宅させていいのか?
覚えていたはずの知識が、現場で出てこない。
「知っている」と「使える」の間には、深くて大きな谷がありました。
そして何よりつらかったのは、「ずっと努力しているのに、できるようにならない」こと。
本を読んでも、上級医の話を聞いても、現場で動けない自分がいた。
それは、ただの努力不足よりも、はるかに苦しい体験でした。
2. 知識の“順番”が違うだけで、医師は動けなくなる
例えば、高カリウム血症を扱う医学書を開くと、こんな書き出しが多いですよね。
「体内のカリウムの総量は〜」「細胞膜電位が〜」「病態生理的には〜」
……そんなの、患者の目の前で考えますか?
高カリウムで倒れている患者に必要なのは、
緊急度評価
初期治療(カルチコール・グルコン酸Caなど)
鑑別とフォローアップ
この順番です。
現場では「何を考えるか」というより「どの順に考えるか」が命を分けます。
それが今の医学教育には、圧倒的に欠けている。
知識を“教える”ことに偏りすぎて、
知識を“どう使うか”という教育が足りない。
3. 教育の理想は「塾」、現状は「学校」
現場で使える知識は、塾のように
出題傾向を踏まえて
実際の使い方を強調し
優先順位を整理して
教えるべきなんです。
でも今の医学教育は「学校」に近い。
項目を網羅することが重視され、使い方は放置されている。
4. EBMの呪縛と、クレーム社会の圧力
最近はEvidence-Based Medicine(EBM)が浸透したことで、「それ、エビデンスあるんですか?」という言葉が何より強い武器になっています。
でも、それが“考える力”を奪ってはいないでしょうか。
ある往診医の先生は、患者の血圧変化に応じて降圧薬の量や種類をきめ細かく調整し、素晴らしい血圧コントロールを実現していました。
文字にすると普通のことのように見えます。しかし、その精度が尋常じゃなかったんです。
『血圧130以上なら普段の薬にアムロジン2.5mg、150以上なら5mg頓服、血圧が低めならこの内服は飲まない』
、、、と患者さんが日々の血圧を見てdailyに内服を調整できるように指導していたんです。
でも、それに対してある大学教授がこう言いました。
「それで心血管イベントが減るというエビデンスはあるんですか?」
…あるわけがない。
そんな個別化医療に、前向き試験なんて組めるはずがない。
「現場の知恵」を「エビデンスがないから無価値」と切り捨てる風潮に、僕は違和感を持ちます。
5. 「教授が書いているから正しい」わけではない
これは、研修医時代に実際にあった話です。
高カリウム血症に10%塩化カルシウムを使え、と医学書には書いてあります。
有名な雑誌、著名な大学教授の文章にもそうありました。
でも、実際には日本で10%製剤は流通していない。
使えるのは2%か6%製剤だけ。
「教授が書いているから」と鵜呑みにしていた自分が、
「この人、現場で本当に使ったことあるのか?」と疑念を抱いた瞬間でした。
6. 知識の“正しさ”より、“現場との整合性”が大事
僕はこう思います。
知識は所詮道具です。
大事なのは「それを現場でどう活かすか」「患者にとってどう役立つか」。
たとえエビデンスがなくても、
たとえ論文がなかったとしても、
理論と臨床経験から「有用」と思えるものは、医師として胸を張って使えばいい。
その判断基準となるのが、大学で学んだ薬理学・病理・生理学。
つまり**“医学的常識”との整合性**です。
7. だから僕は、「使える知識」を発信したい
僕はいま、
「明日から現場で使える医学」
をテーマに、noteやSNSで情報発信をしています。
鑑別疾患を『どの順番に』鑑別するか
ショックを目にした時、どう動くか
「とりあえずこうしろ」のマニュアル的な思考の型
こうした「現場の優先順位ベースの思考法」を、
日本全国どこにいても学べるようにしたい。
それが、僕が医師としてのキャリアを通じて成し遂げたい目標です。
おわりに
知識を得るだけなら、今はネットでいくらでも学べます。
でも、“知識の使い方”を学ぶには、「現場感」と「優先順位」の教育が不可欠です。
僕は、それを届けたい。
「できない研修医」だった自分が、
「動ける医師」になれたプロセスを、
次の世代に還元したい。
そう強く思っています。
プロフィール
東大医学部卒
現在、循環器内科勤務(医師歴10年目前)
医学教育に携わりながら、実臨床のマニュアル化と発信に力を入れています。
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