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90歳に高額医療は過剰では?──“年齢で保険適応を決める”は是か非か

「90歳にTAVI──“できる治療”は“やる治療”か?」

今の日本では、90歳の患者さんに対しても経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)が行われています。

最新医療の恩恵を誰もが受けられる──それは素晴らしいことです。
でも、同時にこう思う人も多いはずです。

「それ、本当に必要なの?」
「税金、どれくらい使われてるの?」

“できる治療”と“やる治療”は違います。

問題は、どこまでを「社会で支える医療」とするかです。


想定コストと「高額療養費制度」の裏側

TAVIの総医療費はおおよそ400〜500万円前後

患者さんの自己負担は「高額療養費制度」によって数万円〜十数万円に抑えられます。

つまり、残りの約8〜9割は保険=税金と社会保険料で賄われています。

個人は守られる。
しかし、その分、社会の財源は確実に減っていく
超高齢社会の今、「誰のために」「どこまで」使うのかを議論せずにはいられません。


年齢で線を引くのは“悪”なのか?

「年齢で医療を制限するなんて人権侵害だ」という声があります。

一方で、財源が有限である以上、“年齢で適応を考える”ことも避けて通れません。

年齢制限を設ける“賛成派”の論理

  • 財源は限られている。

  • 費用対効果を考えれば、長期的なQALY(健康寿命の延び)が乏しい高齢層への高額治療は抑制すべき。

  • 治療後の生活の質や回復期間を考えると、医学的利益が減る。

“反対派”の論理

  • 年齢だけで切るのは差別。

  • 「生きる価値」を数字で測るべきではない。

  • 高齢者でも元気に社会に関わる人が増えており、個別判断が必要。

結局のところ、“年齢だけで判断すること”も、“何でもやること”も、どちらも極端なのです。


海外ではどうしているのか?

イギリスやスウェーデンでは、HTA(保健医療技術評価)という制度が整っています。
医療技術や治療を、QALY(質調整生存年)という指標で評価し、
「1年分の健康寿命を延ばすのにいくらかかるか」を社会的に議論した上で、公的保険を決めています。

一方、日本にはそのような“線引きの仕組み”がありません。
結果として、高齢でも“できる限り全部やる”文化が続いています。
それが“美徳”だった時代は終わりつつあります。


感情と制度の両立へ

ここで大事なのは、「年齢で切るかどうか」ではなく、
“年齢 × 予後 × 機能 × 希望”の4軸で考えることだと思います。

  • 年齢“だけ”ではなく、その人がどんな生活を望み、回復の余地がどれくらいあるか。

  • 医療者が一方的に決めず、家族や本人と話し合う「院内適応会議」の透明化。

  • 「なぜやらないのか」「どこまでやるのか」を説明できるパンフレットやスクリプトを整備する。

こうした仕組みがあれば、“過剰医療”も“見捨て医療”も防げるはずです。


あなたの“最後の数年”に、社会は何を用意すべきか?

命は尊い。
けれど、医療資源にも限りがある。
この二つをどう両立させるかが、これからの医療の核心です。

もし、自分や大切な家族が90歳を迎えたとき──
「すべての治療をやってほしい」と言えるでしょうか。
それとも、「もう十分生きた」と穏やかに話せる社会を望むでしょうか。

その選択を、いま私たちは突きつけられています。

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