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皇室典範「改正」の正体ーー「立法府の総意」を踏み越えた強行と「静謐」を盾にした非公開工作


結論——今国会での成立は確実

2026年6月30日の閣議決定からわずか10日後の7月10日、皇室典範改正案は衆院本会議で与党などの賛成多数により可決される見通しで、参院に送付される公算が極めて大きい。17日の会期末までに成立する見込みだ。

与党がこの国会で最優先したのは、高市首相肝入りの皇室典範改正案の成立である。与党は「定数削減法案」を次の国会に先送りする代わりに、改正案の審議入りを実現した。自民党が野党側の要求(高市首相出席の予算委員会集中審議)を受け入れたことで、国会は「正常化」した。

しかし、この「改正」のプロセスには、三つの深刻な問題がある。

問題① 「立法府の総意」を踏み越えた「男系養子の継承権」

衆参両院の正副議長が与野党の代表者を集めてまとめた「立法府の総意」は、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ、②旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える——の2案を「了」としただけだった。皇位継承のあり方(女性天皇・女系天皇の是非)は、与野党の協議ではあえて論点から外され、「総意」でも「引き続き、検討する」と記すにとどまっていた。

ところが、政府がまとめた改正案には、「養子の子が男子の場合、皇位継承資格がある」という規定が盛り込まれた。この規定は総意の骨子や要綱には明確な記述がなく、最終段階の条文案になって初めて明るみに出た

朝日新聞の社説は、この改正案を「『立法府の総意』でも『国民の総意』でもない」と断じた。自民党内からも疑問の声が上がった。船田衆院議員は「国会の総意とは違った内容がいくつか含まれている。政府の改正案は国会の総意から逸脱したものと言わざるを得ない」と述べた。

問題② 「静謐」を盾にした非公開工作

自民党は当初、参院での委員会審議をテレビやインターネットでの中継なしで実施したいと提案した。理由として「皇室のあり方を議論するには静謐(せいひつ)な環境が必要」と主張した。

憲法57条は「両議院の会議は、公開とする」と定める。国会法52条に委員会を非公開にできる規定はあるが、汚職事件の機密調査や参考人のプライバシー保護など例外的な場合に限られる。政府提出法案の審議を非公開にするのは極めて異例である。

毎日新聞の社説はこの提案を「静謐をはき違えた姑息さ」と断じた。皇室のあり方を議論する際に「静謐な環境」が必要であることは確かだが、中継によってそうした環境が損なわれることはなく、非公開とするのは「はき違え」だと批判した。

さらに同社説は、「そもそも『静謐』はすでに崩れており、その責任は政府にある」と指摘する。与党がわずか3時間の審議で採決して本会議に緊急上程し、即日衆院通過させることを急ぐ姿勢は、「必要と主張してきた『静謐な環境』を自ら壊す暴挙」と批判された。

自民党の磯崎参院国対委員長は「反対意見がたくさん中継で出る状況はどうなのかという懸念があった」と述べており、反対意見が国民に見えることを恐れていた実態が明らかになっている。

問題③ 拙速すぎる審議——3時間で決める「国のかたち」

朝日新聞の社説は、この審議の拙速さを厳しく批判する。

「与党はわずか3時間の審議で採決して本会議に緊急上程し、即日衆院通過させることを急いでいる。国のかたちに関わる重大テーマであるにもかかわらず、力ずくで押し切る構えだ」

読売新聞も、通常国会(会期末17日)が迫る中、与党が実質的な議論をせずに成立を急ぐ姿勢を報じている。

中道改革連合は、養子の子の皇位継承権の扱いを「将来の検討課題であることを明確にすべき」として付帯決議の修正を求めた。しかし、自民党はこれに応じなかった。朝日新聞は「与野党協議では皇位継承のあり方について議論しておらず」と指摘する。

立憲民主党は改正案に反対する方針を決め、「立法府の総意」との位置付けは遠のいた。

国民の声は「女性天皇」を支持している——それでも無視

各紙の世論調査で女性天皇への支持は7割前後に達している。愛子内親王は国民の間で広く親しまれている。

にもかかわらず、今回の改正案は「男系男子」の維持を最優先している。養子の子が男性であれば皇位継承資格を持つという規定は、女性天皇への道を閉ざすための制度的な歯止めだ。

朝日新聞の社説は「女性・女系天皇への道をできる限りふさいでおこうという思惑が前面に出た形だ」と指摘する。また、旧宮家からの養子縁組については「賛否が割れる」とし、国民の総意を得たとは到底言えないと論じる。

なぜ止められないのか——与党の議席数と政治判断

衆院では与党が過半数を占めており、国民民主党や参政党などが賛成する見込みで、成立の公算が極めて大きい。参院でも国民民主党などの協力を得て可決される見通しだ。

与党は定数削減法案の成立見送りという譲歩をしてまで、この法案の通過を優先した。高市首相は今国会での成立に強い意欲を示しており、政治的な優先順位が極めて高い。

まとめ——この「改正」は国民不在の「乗っ取り」である

今回の皇室典範改正案は、以下の三つの点で問題だ。

1. プロセスが歪んでいる

「立法府の総意」と称しながら、実際には与党主導で決められ、野党の懸念は軽視された。養子の子の皇位継承権という重大な項目が、最終段階で「こっそり」追加された。

2. 「静謐」を盾にした非公開工作

自民党は審議の非公開を提案し、反対意見が国民に見えることを恐れた。毎日新聞はこれを「姑息」と断じた。

3. 拙速すぎる

わずか3時間の審議で決める「国のかたち」——朝日新聞は「このまま成立させれば、歴史に汚点を、将来に禍根を残す」と警告した。

皇室は国民のものであり、特定の派閥や政治家のものではない。国民の総意を無視した密室の決め事は、いずれ必ず歪みを生む。

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