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#シロクマ文芸部 夏の音

夏の音
私が少女だった頃、そこには
音が溢れていた。

朝のラジオ体操、6時30分
眠い目をこすりながら首からカードをかけ、ゴム草履をパタパタ音を立てて近所の公園に集まった。
『新しい、朝が来た希望の朝だ♪』から始まるラジオ体操、全国の子ども達が一斉にイチニ、サンシ、
懐かしい朝の音

ラジオ体操から帰ると母さんは台所でご飯の用意、菜っ葉を刻む音がトントンと小気味良い。
父さんのせわしげに新聞をバサバサする音も聞こえる。

夏の友を済ませ、友達の家に駆けていく。蝉の声がジィー、ジィー、シッシッシッーとシャワーのように降りそそぐ、見ると大きなクマゼミだ、手をそっと伸ばすとシャーッとおしっこをかけられた。

八月に入ると突然、町のサイレンがなって、母さんは仕事の手を止めて頭を下げた。私も真似して頭を下げる『ウーーーウーーン』とても長い音だ、終わるといつもの日常に戻った。平和って祈ること
子供ながら何かを感じていた。

プールから帰ると決まって応接室の長椅子に横になった。書棚にある少年少女世界名作集の中からジュール・ヴェルヌの
八十日間世界一周を取り出す。
イギリスの紳士フィリアス・フォッグと使用人パスパトゥの二人が八十日で世界一周の旅を賭けて、冒険の旅をするワクワクドキドキの冒険小説。夏は私に本の楽しみを教えてくれる大切な時間。心臓のトクトクの音がした。

お盆になると町は賑わいを増し、都会からお土産を手に懐かしい顔が集まる。ワイワイ、ガヤガヤ
いつもの家が2倍明るい。テレビを見ながら高校野球の応援、どこの家も窓を開け放ちカキーンと打てばウァーーと喚声が沸く、今は静かな里の懐かしい音。

やがて人は去り静けさを取り戻した里に響くのは甲子園の終わりのサイレン、ウォーーーンと物悲しく響く音。甲子園の空が高かった。
球児の日焼けした顔が、涙でグショグショだ。
私も泣きたくなる。
夏が終わる
終わってしまう
カランコロンと蹴飛ばした
カンカンに赤とんぼが止まった。

秋はそこまで来ていた。
懐かしい音はもうかえらない。

終わり
夏の音、この頃感じない。
子供の頃はあんなに音に溢れていたのに…、

お読みくださり有難うごさいました。







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