札幌におりました、続き
美人のお姉さんに搭乗手続きをしてもらったところから進んでいなかった一時帰国記である。ローカルでミニマムな空港でボケっとして、乗る飛行機は国内線だから小さい。
「あ、テレビがない。ないよ」
うちの子は赤ちゃんの頃から飛行機に乗せてますが、私のポリシーで一時帰国の時だけは贅沢しように便乗し、いつもテレビのある飛行機に乗せていた。いつだっけか?テレビのない飛行機に乗せた時に、この人キレたんですよ。
「ないよ。テレビ!」
キレる10代に備えて繰り返す。
「いや、ないと思ってたよ」
「……」
息子も中学生になると、めっきり子供っぽさがなくなり返しもつまらなくなりました。やれやれ。国内線である。国際線が横綱くらい太かったら、国内線は相撲取りになろうと思ったところの16歳ぐらい細いな。国内線である。どうでもいいこと考えてたらさっさとついた。
電車に乗って札幌市内で、窓外の景色に目を凝らす、正直申しますと、東北の我が田舎とあまり違いがないような……。この札幌行きに往復でいくらかかったっけ?でも、なんか我が田舎とあまり変わらない気がするんですが、神様。どうでもいいことで話しかけてくんなと神に怒られる。
ちなみに、この時、札幌の電車は東京や深圳と比べて本数が少ないだろうと思ってた。札幌駅まで行ってから、私の趣味で札幌ビール博物館へ行ってお昼の予定だったけど、都会のように電車やバスへの乗り継ぎがスムーズにいかず、腹の減った10代にキレられるのでは?と思った。しばし逡巡。その後、断腸の思いでタクシーに乗る。日本のタクシー、高いんだよ。運転手さんも生活あるからしょうがない。ただ、便利な足として使える値段ではないなぁ。深圳のタクシー価格になれ、バンバン使っている身で思う。
「今年の雪ってすごいんですか?」
タクシーに乗って試しに運転手さんに話しかけると、喋る喋る。結論から言うと、とにかく気候変動で、風向きが変わった?そのせいで札幌では降らなかったようなドカ雪がすごくて、都市機能が麻痺してるのだとか。
札幌って、全国で上から5番に入る規模の大都市なんですよね。雪の降る地域でこの規模の大都市は世界レベルで見ても珍しいそうだ。
「ついた」
母の趣味で、サッポロビール博物館に来ることになった。息子を連れ回す注意点は、腹を空かせすぎない、歩かせすぎない、待たせすぎない。確かにすごかった道脇の雪壁を眺めながらの下車。さて、三大キレ原則は金払ってタクシー乗せて回避したが、まさかの「こんなつまらねえとこ連れてきやがって」モードで、飛び蹴りを喰らったりするだろうか、と不安になる。
どうも、最近、不安症で。
ところがサッポロビール博物館は、ビールだけに10代にはウケないと思ってるあなた、大丈夫だったんです!なぜか?
とにかく建物がエモかったんですよ。煙突のある煉瓦造りの旧工場。これが、明治時代、江戸幕府から天皇制へとシフトした新しいながらも不安定な夜明けに力を入れて開拓された歴史を象徴するような建物だった。
明治の建築物には、日本の夜明けを感じる。不安な行き先の見えない海に踏み出す。この時、新政府はとにかく西洋化を目指してたのでしょう。そんな息吹を感じるようなレトロな中にモダンが同居する建物。
とにかく10代は写真が好き。良い写真が撮れる場所へ連れて行くと、脇腹目掛けて蹴りが飛んでくることはありません。やれやれ。
私の目当てはビールとジンギスカンであり、写真ではなかった。レストランがいくつもある中で、タクシーでお金を払った庶民でケチな自分は、お金持ちがいきそうなお高いレストランをはずし、無難に一般庶民が行くであろうレストランをセレクト。
これもレトロな煉瓦造り。雰囲気に酔い、
「お飲み物は?」
「生ビール、ジョッキでええ」
サッポロビール博物館である。グラスビールを頼むのは失礼ではないか。ところで、
「ジンギスカンの焼き方は分かりますか?」
「分かりません」
このウェイターのお兄ちゃんは、少子化の中での希少な若者でしたが、おそらく新入社員だったのでしょう。ドカ雪が降っても、雪をみたい世界各地からの観光客が押し寄せ、バカじゃないの?と思いつつ込み込みのレストランで、ジンギスカンの焼き方がわからない中年女性にイラッとしたようだ。顔に出てたよ、お兄ちゃん。
「まず野菜を下に敷いて、その上にお肉を置いて食べます。こちらのデバイスでも確認できますので」
後から見ると、箸袋の裏にも焼き方が書いてあった。わからないならデバイスをみてとか、箸袋をみてとか言えずにきちんと説明をする、これが日本人の丁寧さだなと思う。某国の人なら即刻、それみてねで終わりだ。混んでてめんどくさくても、子供の頃から学校で言われてきた規則に沿って体が動く。それは素晴らしいのだが、オーバーツーリズムの中で、負担は丁寧な人々に乗っかっていくんだよな。
ちなみに、メニューをよく見ずに頼みました。トラディッショナルな丸く薄く切られたラム肉と野菜と肉好きな息子のために牛の肩ロース。その後、デバイスをちまちま見ていると、
当店人気No.1
トラディッショナルよりもその当店人気No.1のラム肉の方が美味しそうだった。しかし、すでに二人前のラムに牛肉まで頼んでしまっている。私は牛のように4つの胃袋を持っているわけでなし、追加で頼むわけにいかない。大体、ジンギスカン屋で牛肉頼むって何よ。
失敗した……
当店人気のラム肉は薄切りではなく厚みを持たせて切っていて、見れば見るほどうまそうだった。お腹減ってるからってメニューをよく見もせずに頼むなんて……
もちろん、こんながっかりは頭の中でのみ思い、口にも表情にも出さない。なぜならば、口に出して失敗を認めれば、後ろ回し蹴りが飛んでくるかもしれない。もぐもぐ。
レトロなレストランでジンギスカンを頬張り、その後、博物館見学へ、サッポロビール博物館は有料のツアーが人気です。出来立ての生ビールも飲める。未成年はソフトドリンクね。さっきもジョッキでいっぱい飲んじゃったけどなと思いながら逡巡してると、
「いらないいらない」
フォトジェニックな風景には興味あってもビールの歴史や製造に興味のない息子に拒否られ、我々は無料見学ゾーンをちょっぱやで回った。その超スピーディーな見学で理解したのは、サッポロビールって最初国営だったんだよ。へー。明治天皇も行幸されて飲んだと書いてあったような。

それから、とてもコンパクトにまとめた旅程をいく。回し蹴りをウケないためにもう一度タクシーで市内へ、赤れんが庁舎へ行きました。庁舎の門には星印。札幌ビールにもあった星印。開拓時代のシンボルなんでしょうか?
中には、中国語で通訳してるおじさんがいた。四声の存在しない、あえて言うなら弱々しい一声で淡々と続いていた中国語。流石にこれは私の方が上手だわと上から目線で思いつつ、心の中でがんばれ、おじさんと声をかけてまた外へゆく。

赤れんが庁舎も良かったのですが、その後の時計台がよかったなー。時計台は、ビルの合間にあるとても小さい建物です。有名な建物で絵や写真で知ってたけど、実際はこんなちっちゃいのかとあんぐり。それから、中に入ると不思議なタイムスリップができます。
時計台は、北海道大学の前身である札幌農学校の校舎の一部だったんですね。この建物にも赤い星印。やはりこれは開拓使のシンボルマークらしい。明治が始まり、時計塔はやはり先進を意味する西洋のシンボルだったらしい。そういう、新しい時代に乗り出そうとする伊吹のようなものを遠くに感じる建物です。
2階に上がると講堂になっていて、あの Boys be ambitious で有名なクラーク博士の銅像があり、その隣に座って写真を撮る。この講堂で講和を聞いたり、軍事教練を受けた昔の人の様子を想像する。ビルに囲まれていないもっと開けた大地に建てられた学校の様子を想像してみました。

それから外に出る。北海道といえば牛乳。真冬ですが、それでもソフトクリームが食べたい!

真ん前の土産物屋兼でソフトを食べる。美味でした。

それから徒歩でさっぽろテレビ塔へ
「わー!」
喜びの歓声!
街を旅すれば、馬鹿の一つ覚えのようにその街のタワーに登る。あるいはロープウェイなどで展望台のある山に登る私。もちろんスカイツリーも東京タワーも登ったし、函館では函館山に登り、五稜郭にも登った。そんな自分に言わせると、さっぽろテレビ塔は!
めっちゃ可愛いんです❤︎
つまり、スカイツリーよりは低かったです。控えめに言って。でもね、高さではないのよ。高さでは。可愛い❤︎
そして、いざ、高いところから札幌を!と思うと、
「強風のため、上がれまシェン」
「にゅうううう」(最近の我が家の流行の雄叫び)
しょうがないので土産物屋を散策。ポストカードを買って満足。それから、早めにホテルへと向かう。なんでって、我々観光目的で真冬の札幌に来たのではなく、明日の高校見学が本番なんです。地下鉄で、新札幌駅まで向かう。

この時、すでに雪がちらつき始めてたけど、それでも心配はしてなかった。ところが、地下鉄を降りて地下路をゆき外に出て呆然。
「にゅうううううう」(雄叫び再び)
横断歩道を渡って目の前がすぐホテルなのだけれど、まさにホワイトアウト、風な雪な、5分で遭難の世界。
「あにゃああああ」
真っ白になってホテルへ辿り着いた。そして、我々のわずか一泊二日の札幌滞在は、これからが本番だったのである。
終わらないので次回へ続く。
ちなみに本人はもう中国で普通に出勤しております。
汪海妹
2026.02.26
