手のひらのイリュージョン(ミステリ小説第14話 意外な事実?)
翌朝の午前9時半。黒塗りの車が、週刊スプリング社に到着した。中からは本山都知事とSPらしい2人の男の3人が現れる。
本山は今45歳。筋肉質の、アスリートのような体型をしていた。この3人と、綿引は会議室で同席する。
が、知事と共に来た2人の男は部屋を出ていき、綿引はサシで向かい合う形になった。
「はじめまして。警視庁捜査一課の綿引です」
「東京都知事の本山です」
知事は、人好きのする笑みを見せた。
「本山さんが出てきたって事は、やはり今回の事件は権力がらみなんですね。一体あのでっかい手はなんですか?」
「あれは、グレートノイドの男性の手だ」
「グレートノイド?」
「その通り。かれらは自分達をそう呼んでいる。そして我々をマイクロノイドと呼んでいるのだ」
確かにあの手は大きかった。多分綿引の手の10倍はあっただろう。
「マイクロノイド?」
話の急激な展開についていけてない。
「私も都知事になるまでは知らなかったが、我々マイクロノイドはグレートノイドの科学者達により遺伝子操作で作られたのだ」
一瞬本山が何を口にしたのか理解できなかった。
「我々は、遺伝子操作で作られたんですか?」
「その通りだ。我々は学校や親から、この東京だけが世界の全てと教えられるが、それは嘘だ。実際の我々は、地球という巨大な球体の上にいる。その表面の3分の2が海で、海に浮かぶ日本という島国があって、首都の東京にある建物内にあるミニ東京に、我々は住んでいる」
「ここはミニ東京なんですか?」
驚いて、綿引は聞く。本山の話が突拍子もなく、頭がついていけてない。
「グレートノイドは、そう呼んでる」
「想像を超えてます。グレートノイドは、何でそんな計画を始めたんですか?」
「かれらは西暦という暦を使っている。これはキリスト教のイエス・キリストが誕生した年を西暦1年としている」
「日本人というのはキリスト教徒なのですか?」
「キリスト教徒もいるにはいるが、少数派だ。が、グレートノイドの世界ではキリスト教を信じる者が多いアメリカとかヨーロッパという地域に住む者の影響力が強いのだ」
本山が、解説した。
「西暦2019年末から、新型ウィルスのパンデミックが地球全体で始まったのだ。数年でパンデミックは収まったが、いつ似たようなパンデミックが起きても心配ないように、人間の住む都市を屋内に移すプランが考えだされた。それだけじゃない。増えすぎた人口問題を解決するため遺伝子操作で、10分の1の人類を作る事にしたのだ」
「グレートノイドは、そんなに人口が多いんですか?」
「日本人自体は少子高齢化で減っていたが、地球人全体は増えていたのだ。石油などの地下資源の消費を減らし、排出される二酸化炭素を減らそうとしたわけだな。グレートノイドの世界では、そんな設定のSFドラマがそれ以前に作られた事もあったそうだ。つまりはSFの世界を実現させてしまったわけだ」
途方もない話に、綿引は愕然とする。どう考えてよいのかわからない。騙されているのじゃないかという気もした。
「そのグレートノイドが、なぜ3人の人間を殺し、僕を殺そうとしたんです?」
「先に断っておくが、3つの殺人はグレートノイドの総意じゃなかった。ある1人の男の暴走が原因だった。まず最初に、犯人は君のお父さんを殺害した。ちなみに犯人は君からの報告を受けてグレートノイドに通報したので、かれらの警察に逮捕されたよ」
「本当ですか? あなたの話だけでは、信じられない」
「私も、自分の言葉でだけ信じてもらおうとは思わない。これを観てくれ。グレートノイドのニュース番組で流れている映像だ」
本山は、自分のスマホを差し出した。
