同じスピーキング課題を6回繰り返す、生徒は本当に飽きるのか

タスク・リピティション(同じ課題を繰り返し行う練習)は、スピーキングの流暢さを伸ばす効果的な方法だとされています。ただ、多くの教師はこの練習法の採用に及び腰です。理由は「同じことを繰り返すと生徒が飽き、やる気を失うのではないか」という懸念です。


今回紹介するのは、この懸念に実験で向き合った2023年の論文です。著者は Hanzawa, Keiko, Suzuki, Yuichi。同じ課題を6回繰り返す練習を、間隔の取り方を変えて行わせ、学習者の「感じ方」と「実際の伸び」の両方を追跡しています。


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何を調べた研究か


対象は日本人大学生64人(英語学習歴は平均6年程度、TOEICでCEFR A2〜B1相当)。全員が同じ絵描写スピーキング課題(6枚のイラストからストーリーを英語で語るタスク)を6回行いましたが、そのスケジュールを3パターンに分けました。


  • 集中グループ(massed、n=20):休憩を挟まず6回連続で実施

  • 短期間隔グループ(short-spaced、n=23):授業の前半に3回、45分ほど別の活動を挟んで後半に3回

  • 長期間隔グループ(long-spaced、n=21):2週間かけて週3回ずつ、計6回


6回目終了直後に、以下2種類のアンケートを実施しました。


  • メタ認知判断:「何回繰り返すと効果的だと感じたか」(Lambert, Kormos, & Minn (2017) の設問を使用)

  • 感情的エンゲージメント:楽しさ・集中力に関する11項目、7段階評価(Lambert, Philp, & Nakamura (2017) の設問を一部改変)


さらに、発話そのものを音声分析ソフト(PRAAT)で処理し、「mean length of run」(ポーズとポーズの間に発せられた平均音節数。速度と途切れの両方を反映する流暢さの指標)を1〜6回目まで測定し、自己評価と実際の伸びを突き合わせています。


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結果1:反復練習は総じて好意的に受け止められていた


まず前提として、「反復練習は苦痛」という一般的な懸念に反し、参加者は全体として「同じ課題の繰り返しは効果的で、やる気の出る活動だ」と回答しました。効果的だと感じた回数は平均4.66回(SD=1.43)で、6回中の後半、4〜5回目あたりが「ちょうどいい」という感覚だったようです。感情面の評価(楽しさ・集中力ともに7段階中平均3.9〜4.0)も、中間点をやや上回る程度で、明確にネガティブな反応というわけではありませんでした。


結果2:間隔を空けたグループの方が、楽しく・効果的だと感じていた


スケジュールごとの差を見ると、「効果的だと感じた反復回数」は集中グループが最も少なく(平均3.9回)、短期間隔(4.8回)、長期間隔(5.1回)の順に多くなりました。一元配置分散分析でも有意差が確認されており(F(2,61)=4.8, p=.01, η²=.14、大きな効果量)、多重比較では集中グループと長期間隔グループの差が特に大きい結果です(p=.01, d=-0.94)。


感情面については、まず3グループ(集中・短期間隔・長期間隔)を比較する分散分析を行ったところ、楽しさには有意差がなく(F(2,61)=2.1, p=.14)、集中力にはやや有意に近い傾向が見られました(F(2,61)=2.94, p=.06)。短期間隔グループと長期間隔グループの間にはほとんど差がなかったため、この2つをまとめて「間隔あり群」とし、集中グループと比較するt検定を改めて行ったところ、楽しさ(t(62)=2.04, p=.046, d=0.55)・集中力(t(62)=2.44, p=.02, d=0.66)の両方で、間隔ありグループが有意に高い評価でした。


結果3:間隔の長さ次第で、「自分を正しく評価できるか」が変わる


ここがこの論文の核心です。自己評価(メタ認知判断)と実際の流暢さの伸びの相関を調べたところ、パターンがグループごとにきれいに分かれました。


  • 短期間隔グループ:自己評価と実際の伸びが有意に相関(r=.44, p=.03)。「これくらい伸びた」という感覚が、実際の伸びとほぼ一致していた

  • 集中グループ:自己評価と実際の伸びに相関はなし(r=-.28, p=.23)。一方で、別の分析(付録に記載)では、自己評価は「楽しさ」の評価と強く相関しており、実際の伸びではなく「楽しかったかどうか」を根拠に自己評価をしていた可能性が示唆される

  • 長期間隔グループ:自己評価と実際の伸びに相関はなし(r=.10, p=.67)


集中グループで見られたこの「実際の伸び以上に自分を高く評価してしまう」現象は、心理学で「有能感の錯覚(illusion of high competence)」と呼ばれるものです。休憩なしで詰め込んだ結果、その場では一番上手く話せた(実際、6回目の流暢さは集中グループが最も高い)ため、「うまくできた=上手くなった」と結びつけやすくなったと考えられます。


なお集中グループでは、自己評価とは別に、集中力の高さが実際の流暢さの伸びと相関していました(r=.46, p=.04)。詰め込み練習でも、集中して取り組めた学習者は実際に伸びていた、ということです。


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気になった点


素直に興味を引かれたのは、「反復練習は嫌われる」という教師側の直感的な懸念が、この実験ではあまり支持されなかった点です。個別(1人で黙々と行う)形式のスピーキング練習でも、ペア形式を扱った先行研究(Lambert, Kormos, & Minn, 2017)と近い、ポジティブな結果が出ています。


一方で、「間隔を空けた方がいい」という結論だけでなく、「間隔の長さ」まで踏み込んで結果が分かれている点が読みどころです。短期間隔(45分)は自己評価の正確さと感情的エンゲージメントの両方を満たしていましたが、長期間隔(1週間おき)は感情的エンゲージメントは高いものの、自己評価の正確さでは集中グループと同様に相関が出ませんでした。つまり「間隔を空ければ空けるほど良い」という単純な話ではなく、著者らも「短すぎず、長すぎない間隔」を推奨しています。


ただし、各グループの人数は20〜23人と少なく、著者ら自身も検出力分析の結果(長期間隔グループの相関を検出するには39人が必要という推定)を挙げて、群ごとの分析結果には慎重な解釈が必要だと述べています。また、今回使われた課題は語彙リストなどの支援が手厚く用意されたもので、支援が少ない条件やペア形式、手続き的な反復(内容を変える反復)では結果が変わる可能性もあります。


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授業との距離


同じ課題を何度もやらせることに気が引ける、という感覚を持つ先生は多いと思いますが、この研究を見る限り、「反復=苦痛」と決めつける必要はなさそうです。ただし、やり方次第で学習者の感じ方も、自己評価の正確さも変わってくるという点は実践に直結します。


  • 6回連続でやらせるのではなく、3回終えたところで30〜45分ほど別の活動を挟むと、やる気・集中力の両方が上がりやすい

  • 「効果的だと感じる回数」はおおよそ4〜5回。反復メニューを組むときの目安になる

  • 詰め込みで一気に練習させた直後は、「できた気がする」という感覚が実際の伸びより大きく出やすい。生徒の手応えだけで判断せず、録音や記録を後から確認する機会を用意したい


反対に、間隔を空けすぎる(1週間おきなど)と、感情面は良好でも、生徒自身が自分の伸びを正確に把握できなくなる可能性がある、という点も覚えておく価値がありそうです。


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参考文献

  • Hanzawa, Keiko, Suzuki, Yuichi(2023). How Do Learners Perceive Task Repetition? Distributed Practice Effects on Engagement and Metacognitive Judgment

  • [https://eric.ed.gov/?id=EJ1389125](https://eric.ed.gov/?id=EJ1389125)

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