星と洗脳
インド占星術に西洋占星術、数秘術、ルーン、聖人、手相に人相、タロットにオラクルカード。
神秘主義者の私はこれらの占いに目がなく、自分であれこれ試してみたり、関連書籍やサイトに当たるなど、知識と情報を集めることにも余念がありません。
全く興味のない人からすれば、そんなものは全て世迷言で、何やら記号の書かれた石を凝視したり、カードを繰ってはその微妙に扱いにくいサイズゆえに手元が狂い、床にばらまいては一枚一枚拾い集める、という行動に冷笑するのみかもしれません。
「いえいえ、特に人相学や占星術は、長い歴史と研究を積み重ねた、ほとんど科学のようなもので……」
などと私がいくら言い募っても、その熱心さは、かえってあやしさしか生まないでしょうし。
それを承知で、そう書いたわずか一行後に宣言するのも何ですが、占星術の人間判断は本当に頼りになります。正確な出生地と出生日時から割り出されるホロスコープは、下手な心理分析やキャラクターテストの類より、よほどその人を裏表なく浮き彫りにするほどです。
それはいわば、その人だけのスペシャルな自己取扱説明書も同然です。
友人の心理学教授は、私のそんな暴論を否定することなく、穏やかな笑みを浮かべてくれました。
「心理学なんて、人文系の中では一番新しい、まだまだ未熟な学問ですからね。あなたの言うことが正しいのかもしれない。今度、僕のホロスコープも出してください」
私の場合においてですが、ホロスコープのおかげで、自分自身との付き合いもずいぶんと楽になりました。自分の特性や傾向にも気づけ、長年の疑問や違和感が一気に溶解した気分です。
地に足の着かない“ふわふわ要素”と現実主義、いい加減さと厳格さ、エピクロスのような真の平穏への憧れと闘争心、楽観主義と批判精神。
自分の中にある、意味がわからないような散らかりぶりの理由も、惑星の配置とその影響が極めて大きいと知れたのは収穫です。
ゲーテの名言を引くならば「人の性格を作るのは世の激流」ですが、やはり元々の性向や感覚、好みなど、生まれ育ちや経験論では説明のつかない部分があり、そういった空白を埋めて深い洞察をもたらしてくれるのも、占星術の利点です。
私は“アセンダント”というその人の根底をなす星座が魚座のため、その支配星である海王星の影響を多分に受け、そう確信するものかもしれません。
魚座と海王星の世界は神秘や潜在意識、現実の境界線の消失を司り、各種の占いやスピリチュアリズムとも呼吸するように結びついています。
この文章だって、私自身の意識ではなく、海王星が書かせているのかもしれません。という言い方も、いかにもではありますが。
つい先日、人生を腸内細菌に支配されいるなんてショック、という話を書いたばかりなのに、星にも支配されているとは、ちょっと笑える話です。
まあ、そうだとしても、国の要請によりカルト宗教信者の脱洗脳も手がけた変性意識の専門家、苫米地英人さんによると、私たちは誰しも誰か、あるいは何かによって洗脳された状態にあるそうです。これには、ただ一人の例外もありません。
カルト宗教にブラック企業、いびつな人間関係など、外から見れば明らかに異常な状況に搦め取られている人に対して、私たちは複雑な感情を抱きますが、そんな自分たちもしっかりと洗脳が効いた状態にある、というのは驚きです。
いや、自分は違う、そんな訳はない、と反発を感じたとて、自分の信念や考えは隅々まで“自前”のもので、誰の影響も受けていない、と信じる時点で、しっかりとコントロールが効いた状態にあります。
何らかの洗脳状態にある人が、自分の正気に疑いを持っていることは、まずあり得ませんから。
たとえば、子どもは学校へ行って当然、という社会通念を当たり前に受け入れているのも、集団洗脳の一形態かもしれません。
あらゆる点で学校教育は必須である、と頑なに考えていて、子どもの生命に関わるような問題を前にしても、なお学校に行くべし、と信じて我が子を叱責する親は、どうしようもない洗脳に囚われています。
ただ、苫米地さんは、洗脳は全てが悪いものではない、とも言います。家族を大切にするべし、日々新たに学ぶべし、などは従って自分も得になる洗脳ですし、どうせならば、為になる良い洗脳を受ければいいのです。
洗脳の解き方自体が、その内容を真っ白にして消すのではなく、新たに別の内容を上書きしていく、という手法を用いるそうです。そして、専門家の手を借りなければならない重篤な場合以外は、自分でもそれを行えます。
そういえば、自分に何かを宣言し、それが叶うように持っていく“アファメーション”も、まさしく自己洗脳です。
恐怖心やトラウマの解消など、扁桃体や海馬に代わり、前頭前野を優位にさせ、脳から自分を変えていくという一種の洗脳法も、とても興味をそそられます。
いま私は、そのあたりには極めて面白い発見
の連続があると確信しており、これからそちらに傾倒する気配が濃厚なため、すでに立派な洗脳状態にあるのかもしれません。これは“良い方”の洗脳ですから、安心してどっぷり浸かってみるのも悪くなさそうですが。
不可思議さへの興味、アカデミックなものへの探究心、当てのない遠い旅を好む、というのも私のホロスコープに色濃く出ている特徴のため、この展開は不可避であり、やはり星の力の侮れなさをひしひしと感じます。
そして、私はこんな星による洗脳も気に入っているのが幸せなところです。
