雪の文学フリマ広島、そして「神の島」へ
2026年2月8日、広島県立広島産業会館東展示館にて開催された「文学フリマ広島8」に初出店した。会場には400余りのブースが並び、主催者によれば、来場者は1,297人(出店者464人・一般来場者833人)。と、まずまずの盛況と言えるだろう。今回の文学フリマは、これまで参加した文フリの中と比べても、とても記憶に残る回となった。理由は、雪である。
しんしんと降る雪のなかで
開催日、広島は大雪に見舞われた。会場の外では雪が静かに、しかし容赦なく降り続いていた。瀬戸内の温暖な気候を想像していた身には、いささか意外な光景だった。
私は前日に空路で広島入りしていたため混乱に巻き込まれなかったが、隣のブース「音食紀行」の遠藤さんは、羽田発広島行きの便に遅れが生じ、さらに広島空港と市中心部を結ぶリムジンバスが運休となるという二重苦に見舞われたという。雪とは、ときに詩情を運ぶが、ときに現実的な試練も課す。
雪の影響もあってか、来場者数は伸び悩んだ感もある。しかし、それでも多くの方がブースを訪れ、「カフェバグダッド」のZINEを手に取ってくださった。寒気のなかで交わした言葉の温もりは、いっそう深く心に刻まれると感じた。

30年ぶりの広島、そして宮島へ
広島を訪れるのは実に30年ぶりであった。この機会を逃すまいと、文学フリマ翌日、思い立って「安芸の宮島」へ足を延ばした。
広島駅から山陽本線で宮島口へ向かい、そこからフェリーで厳島へ渡る。デッキに立つと、雪化粧した島の山々が視界に広がった。

朱塗りの大鳥居が、白く霞む山々を背景に静かに立つ。その姿は、観光ポスターの一枚を超えた、宗教的な荘厳さをたたえていた。「神の島」であることを実感した。

海上に浮かぶ鳥居の朱色と、雪の白、瀬戸内海の灰青色。その色彩の対比は、まるで自然と人間が共同制作した絵画のようでもあった。
雪の宮島をあとにし、運行停止中のJR山陽本線の再開を待つあいだ、宮島口近くの「花子」に入った。冷えた身体に、鉄板の熱気がありがたかった。

「国泰寺焼き」という、この店オリジナルのお好み焼き。チーズを追加してみた。チーズの塩味とコクが思いのほかよく合う。今さらながらの発見である。
呉、そして潜水艦の町へ
さらに足を延ばして泊りがけで呉へ。目当ては戦艦大和の十分の一模型であったが、あいにく施設はリニューアル工事中。歴史との対面は、次回への宿題となった。
代わりに向かったのが、「アレイからすこじま」である。
国内でもここだけといわれる、海上自衛隊の潜水艦を間近に望める場所。黒灰色の艦体が並ぶ姿をはじめて間近にみた。

呉の中心部を歩いていて印象的だったのは、商店街と歓楽街の面積の広さである。通りのスケールは、かつてこの街がいかに多くの人々でにぎわっていたかを雄弁に物語っている。

時代の移ろいとともに人波は変わったのだろう。しかし、現在の呉にもまた、独特の陰影がある。
衰退と呼ぶには惜しい、時間の層をまとった味わい。むしろ静かな現在だからこそ、建物や路地の一つひとつが、よりくっきりと語りかけてくるように感じられた。

雪の文学フリマ広島。思いがけぬ気象の祝福(あるいは試練)とともに、忘れがたい一日となった。
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