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水タバコが大好きな写真家・山崎さんにイスタンブールのカフェについて聞く

イスタンブールのカフェといえば、私の頭にまず浮かぶのは、あの場所だ。旧市街、グランドバザールの近くにある「アリ・パシャ・メドレセ」。

https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g293974-d548937-Reviews-Corlulu_Ali_Pasa_Medresesi-Istanbul.html

石造りの壁に囲まれた中庭に足を踏み入れると、そこにはいつも、ゆるやかな時間が流れている。水タバコの煙がただよい、人びとは思い思いに座り、語り、あるいは黙っている。

この場所を、私と同じように愛している人がいる。写真家・山崎さんだ。きょう開催した「中東料理研究会」で、イスタンブールのカフェについて話を聞くと、話題は自然と、「アリ・パシャ・メドレセ」のほうに向かっていった。

「入り口がわからない」場所の奥にあるもの

「初めて行ったときは、入り口が本当にわからなかったんですよ」

山崎さんはそう振り返る。訪れたのは大学を出たばかりの頃、十数年前のことだという。「ただのドームにしか見えないんです。奥まで行かないと店らしくない。現地の人に連れていってもらって、ようやく入れました」

あの場所を知る者なら、誰もがうなずく話だろう。アリ・パシャ・メドレセは、一般的な「カフェ」の雰囲気がない。街路に開かれた看板があるわけでもなく、通りの延長のように、ひっそりと存在している。だが、その奥に一歩踏み込むと、風景は一変する。

「トンネルみたいな通路を抜けたら、いきなり人がいっぱいいて。100人以上が一斉にシーシャを吸っているんです。あれには本当に驚きました」

閉じた空間ではない。だが、外とも切り離されている。その中間にあるような場所。その独特の「気配」こそが、あのカフェの魅力なのだと思う。

トルコのシーシャは、なぜコーヒーの味がするのか

山崎さんの話で印象的だったのは、シーシャの「味」の違いだった。「アラブやイランだと、リンゴとかミント、ブドウが定番じゃないですか。でもトルコは違っていて、カプチーノとかローズ、レモンが人気なんですよ」

コーヒーの煙を吸う――その発想に、最初は違和感を覚えたという。「正直、最初はちょっと抵抗がありました。でも、試してみたらすごく美味しくて」

とくに印象に残っているのは、イスタンブール・カラキョイのカフェで体験したカプチーノ味のシーシャだという。「トルココーヒーを飲みながら、カプチーノ味の煙を吸うんです。考えてみると不思議なんですけど、それがすごく合う」

水タバコのボトルにミルクを入れて、よりクリーミーに仕上げる店もあるという。ここまでくると、単なる嗜好品というより、「飲食文化」の一部といってもいいかも知れない。

「朝・昼・晩」と通う場所

山崎さんは、アリ・パシャ・メドレセに、朝・昼・晩と通っていた時期があるという。

「当時は24時間営業だったので、本当に一日三回行っていました」。そこでは、特別なことをするわけではない。本を読む。サッカーを眺める。隣に座った人と話す。

「タイル職人のおじさんと知り合って、焼いたタイルを砕いて装飾を作るやり方を教えてもらったこともあります」

カフェで、技術を教わる。この何気ないエピソードの中に、イスタンブールのカフェの本質があるように思う。そこでは、知識も時間も、ゆるやかに共有される。

ざわめきの中に身を置く

ヨーロッパのカフェが「議論の場」として語られることがあるとすれば、イスタンブールのカフェは、もう少し違った仕方で人を結びつける。

そこでは、何かを結論づける必要はない。ただ同じ空間にいて、同じ煙を吸い、同じ時間を過ごす。

山崎さんの話を聞いていると、そのことがよくわかる。彼がカフェでしていたのは、特別な活動ではない。本を読み、誰かと話し、そして何もせずにいることだった。だが、その「何もなさ」の中に、都市の時間が濃く流れている。

来月、私は再びイスタンブールを訪れる予定だ。おそらく、あの入り口のわかりにくいドームの前に立ち、少し迷いながら中に入ることになるだろう。そして中庭に出た瞬間、あのざわめきの中に身を置く。そこで私は、しばらく、何もせずに過ごすことになるはずだ。山崎さんがそうしていたように。

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