BIM義務化とScan to BIMは同じではない──実務では分けて考えたい
※本記事は、河本直己さんの「BIM義務化、世界はどこまで来た? ——日本・欧米・韓国・ベトナムの現在地」を読んで、実務者の立場から補足したものである。
河本さんの記事は、各国のBIM導入状況や制度の流れを分かりやすく整理した内容であった。
一方で、実務に携わってきた立場から読むと、少し補足しておきたい点がある。
それは、「BIM義務化」と「Scan to BIM」は同じ話ではないこと、そして「義務化」という言葉から受ける印象と、実際の制度には少し違いがあることである。
「BIM義務化」は新規プロジェクトの情報管理ルールであり、
「Scan to BIM」は既存建物をデータ化する手段である。
「BIM義務化」は何を意味するのか
「BIM義務化」という言葉を聞くと、「これからはすべてBIMで提出しなければならない」と受け取られがちである。
しかし、実際にはそこまで単純ではない。
国によって制度は異なり、公共工事のみを対象とする国もあれば、一定規模以上の建築だけを対象とする国もある。発注者ごとに要件が異なるケースもある。
日本でも、国土交通省のBIM/CIMは2023年度から原則適用となっているが、これは主に国土交通省直轄の土木業務・工事が対象であり、
「全国すべての建築確認申請がBIM必須になった」という話ではない。
つまり、「BIMを活用する方向へ制度が進んでいる」のは確かである一方、「すべての案件でBIM以外認められない」という意味ではないのである。
Scan to BIMとは目的が違う
もう一つ混同されやすいのが、Scan to BIMである。
BIM義務化の話は、多くの場合、新築プロジェクトを前提としている。
これから建てる建物の設計情報をBIMで作成し、情報を管理・受け渡ししていくという考え方である。
当然ながら、まだ存在していない建物をスキャンすることはできない。
つまり、新築案件では点群データを前提としないケースが一般的である。
一方、Scan to BIMは既存建物を対象とする技術である。
改修工事、リノベーション、設備更新、維持管理などで、まず現況をレーザースキャンやLiDARで計測し、その点群データからBIMモデルを作成する。
両者はBIMという言葉を共有していても、スタート地点が異なる。
点群があるだけではBIMにはならない
Scan to BIMについても、一つ誤解されやすい点がある。
点群データは、あくまで三次元計測の結果である。
そこから不要な点を整理し、壁や柱、床、設備などをモデリングし、必要な属性情報を持たせることで、初めてBIMモデルとして活用できる。
点群はBIMの代わりではなく、あくまでBIMを構成するための材料である。
つまり、Scan to BIMとは「点群を取得すること」ではなく、「点群を実務で使えるBIMへ変換すること」を指す。
制度と技術は分けて考えると理解しやすい
BIM義務化が進むことで、BIMを扱える技術者や環境の重要性は今後さらに高まっていくだろう。
その一方で、既存建物の改修や維持管理では、Scan to BIMの需要も確実に広がっていくと考えられる。
ただし、この二つは目的も対象も異なる。
制度としてBIMを求める動きと、既存建物をBIM化する技術は、それぞれ別の文脈で発展してきたものである。
この違いを押さえておくだけで、「BIM義務化」という言葉の見え方はかなり変わるはずである。
