点群は「送る時代」へ──点群PNGが変えるのはBIMではなく流通かもしれない
点群データを扱う人なら、一度はこんな経験があるのではないだろうか。
「データが重すぎてダウンロードが終わらない。」「共有するだけで時間がかかる。」「閲覧するために専用ソフトが必要になる。」
点群の価値が高まる一方で、「重さ」は長年の課題だった。
そんな中、産業技術総合研究所(産総研)が開発した新しいファイルフォーマット「点群PNG」が話題になっている。
今回はこちらの記事を読んだ。
※産総研マガジン「点群PNG」で、社会インフラに劇的な変革を産総研発、ウェブ時代の3D空間データ活用
点群PNGとは?
点群PNGは、点群データをPNG画像の可逆圧縮技術を利用して保存する新しいフォーマットだ。
LASのような標準フォーマットと比べると、データサイズを約6分の1から7分の1程度まで小さくできるケースがあるという。
しかも、PNGはブラウザが標準で扱える形式なので、ウェブとの相性が非常に良い。
産総研では、ブラウザ上で閲覧するためのツールや、LASとの相互変換ツールも公開しており、「点群をもっと使いやすくする」ことを目指している。
面白いのは、「保存」ではなく「配信」を考えていること
記事を読んでいて、一番印象に残ったのはここだった。
点群PNGは、単に圧縮率を競うフォーマットではない。
「ウェブブラウザで扱うこと」を前提に設計されている。
つまり、
点群を保存するための技術ではなく、届けるための技術
という発想が強い。
これまでの点群は、
LASをダウンロードし、
専用ソフトで開き、
必要に応じてBIMへ変換する。
そんな流れが当たり前だった。
しかし、点群PNGが普及すれば、
「必要な場所だけをブラウザで読み込み、そのまま閲覧・解析する」
という使い方も現実味を帯びてくる。
これは、点群の”流通”そのものを変える可能性がある。
BIMだけが点群のゴールではない
私は以前、こんな記事を書いた。
「点群はBIMのために存在していない」
点群というと、Scan to BIMを思い浮かべる人が多い。
もちろん、それも重要な用途の一つだ。
しかし、防災、森林管理、都市計画、自動運転、文化財保存など、点群が活躍する場面はもっと広い。
点群PNGも、そうした”BIM以外の世界”を意識した技術に見えた。
だからこそ、この技術はBIMソフトを置き換えるものではなく、点群そのものを社会で使いやすくするための技術なのだと思う。
点群は「専門家だけのデータ」ではなくなるのか
記事の最後に印象的な一文があった。
点群を専門家の道具から社会の素材へ
まさに、その通りだと思う。
私は「空間翻訳」という言葉を使っている。
点群を持つ人と、それを必要とする人の間には、まだ大きな壁がある。
その壁は、技術だけではない。
ファイルサイズや専用ソフト、扱い方といった「使いにくさ」も、その一つだ。
もし点群PNGによって、ブラウザで気軽に点群を見られるようになれば、その壁は少し低くなるかもしれない。
点群を誰もが扱える「社会の素材」にする。
そんな未来への一歩として、点群PNGはとても興味深い技術だと感じた。
「ReCapが対応したらすぐ使う」という技術ではない。
でも、「点群をどう送るか」という発想を変える技術としては、とても面白い。
