築城500年の洲本城を、点群で測ってみる準備をする
Navisworks Freedomで、点群を使った距離測定の教材を作ろうと思った。
せっかくなら、サンプルデータではなく、実際に公開されている点群を使いたい。
そこで、無料で利用できる点群データを探してみた。
見つけたのが、兵庫県洲本市の洲本城跡三次元点群データだった。
2026年は、洲本城が築かれてから500年という節目の年でもある。
これはちょっと面白い。
洲本城って、どんな城?
洲本城は、淡路島の南東にある三熊山に築かれた山城。
1526年、安宅氏によって築かれたと伝えられている。
その後、1585年に脇坂安治が入城し、現在に残る大規模な石垣などが整備された。
洲本城の特徴のひとつが、山の斜面を縦方向に石垣で登っていく「登り石垣」。
現在も、石垣や曲輪、天守台などの城郭遺構が残っている。
そして今回見つけた点群データは、単純に「お城だけ」をスキャンしたものではない。
山麓から山頂まで、周辺の地形も含んだかなり広域のデータだった。
つまり、
山のふもと
↓
山道
↓
斜面
↓
曲輪
↓
石垣
↓
山頂の洲本城
という空間そのものが、点群になっている。
これは教材として面白そうだ。
洲本城の点群を見つけた
洲本市では、洲本城跡の三次元点群データを公開している。
地上レーザスキャナやLidarSLAMなどを使って計測されたデータで、全域で400点/㎡以上という高密度な点群になっている。
公開されている資料やデータはこちら。
洲本城跡三次元点群データ
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/sumotojoseki
洲本城跡|洲本市公式サイト
https://www.city.sumoto.lg.jp/site/tunagarumachi/16885.html
洲本城PR動画について|洲本市公式サイト
https://www.city.sumoto.lg.jp/soshiki/19/24182.html
PR動画もYouTubeで公開されている。
この動画では、点群から植生を取り除き、石垣などの城郭遺構を見せる表現がされている。
まずは、データを手に入れなければならない
ここからが大変だった。
洲本城跡のデータは、広範囲を分割して公開されている。
今回取得したのは、LAS形式の点群データ。
46ファイル。
合計すると、約60GB。
1ファイルが約300MB。
無料公開されているデータだからといって、クリック一回で教材が完成するわけではない。
結局、ダウンロードだけで1日がかりになった。
無料とは、必ずしも「手間がかからない」という意味ではないらしい。
CloudCompareで統合する
翌日、ダウンロードした46ファイルをCloudCompareで確認した。
ここで、ひとつ助かったことがあった。
46個のLASは、最初から同じ基点を持っていた。
つまり、ファイルごとに位置を合わせる必要がなかった。
もしそれぞれの基点がバラバラだったら、単純にMerge(結合)するだけでは済まない。
位置を移動するだけでなく、回転も含めて点群同士の位置関係を合わせる必要がある。
CADのように、面やエッジを基準にして「ここを合わせる」という作業が簡単にできるわけでもない。
46ファイルともなると、これはかなり大変な作業になる。
今回は、その工程が必要なかった。
46ファイルを一度に扱うのは負荷が大きいため、まず10ファイル程度ずつMerge。
途中のデータをBIN形式で保存しながら、段階的に統合していった。
最終的に、
①:約11億点
まで統合することができた。
さらに、残っていた②データは、
約8億点。
①と②を合わせると、約19億点になる。
そこで、19億点をひとつのPointCloudとしてMergeしてみた。
結果は、
Not enough memory!
私の環境の64GBのメモリでは、単一PointCloudとしての統合はできなかった。
ただし、ここでひとつ分かったことがある。
「全部を一つのPointCloudにする必要があるのか?」
ReCapで試してみる
そこで、CloudCompareで作ったデータをLASとして書き出し、Autodesk ReCap Proで試すことにした。
①は、
約11億点
約27.9GB
のLAS。
これをReCapに読み込ませた。
処理には約30分。
CPUを大きく使いながら、無事に読み込みが完了した。
次に、約8億点、約15.8GBの②データを同じReCapプロジェクトへ追加。
こちらは15~20分ほどかかった。
途中、進捗ゲージが50%付近でなかなか進まない時間があった。
ただ、処理自体は止まっていなかった。
最終的に、②の追加も完了。
つまり、
約11億点+約8億点
という、約19億点相当の点群を、CloudCompareでひとつのPointCloudにMergeすることはできなかったが、ReCapでは同じプロジェクトに取り込むことができた。
ここは今回の検証で、かなり面白かったところ。
「巨大な点群を一つにすること」と「複数の点群を一つのプロジェクトで扱うこと」は、同じではない。
ここまで来た
現在は、ReCap上で洲本城跡の広域点群を扱える状態になった。
次は、このデータをNavisworks Freedomで扱える形にしてみる。
さらに、
フルデータ版
間引き・軽量化したデータ版
を作り、実際の操作感やデータサイズなどを比較してみたい。
最終的な目的は、Navisworks Freedomで点群を使って距離を測定する教材を作ること。
ただ、実際にFreedomでこの約19億点相当のデータを扱えるのか。
そこは、まだ分からない。
今回はここまで。
無料公開されている一つの点群データをきっかけに、
データを探す
↓
46ファイルをダウンロードする
↓
CloudCompareで統合する
↓
メモリの限界に当たる
↓
ReCapで別の方法を試す
↓
約19億点相当をプロジェクトに取り込む
というところまで来た。
点群は、データを手に入れたら終わりではない。
どのソフトで、どの形式で、どのくらいのデータ量を、どう扱うのか。
実際に触ってみると、そのあたりが少しずつ見えてくる。
そして、ようやく次はNavisworks Freedom。
果たして、この洲本城の点群を測れるのか。
続きは、次の検証で。
今回は、洲本市が公開している点群データを使わせてもらいました。こうした実データが無料で公開されていること自体、とてもありがたいことだと思います。
参考
洲本市「洲本城跡」
G空間情報センター「洲本城跡三次元点群データ」
洲本市「洲本城PR動画」
Autodesk ReCap Pro
CloudCompare
