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謝れるのに、同じことを繰り返す子ども

「そんなこと、ちょっと考えれば分かるよね」
「言っていいことと悪いこと、もう分かる年齢でしょ」

発達に特性のある子どもの中には、思ったことをすぐ言葉にしてしまう子がいます。

これは、ADHDに見られやすい特性のひとつです。

ADHDの子どもに対して、私たちはつい、冒頭のような言葉をかけてしまいがちですが、結論から言うと、この言葉は行動の改善につながりにくいのです。


謝れるのに、なぜ同じことを繰り返すのか

ADHDの子どもの多くは、

・自分の言葉で相手を傷つけたことが分かる。
・「ごめんなさい」と謝ることができる。
・「次は気をつけよう」と言葉で言える。

それでも、時間が経つとまた同じことを言ってしまいます。

これは反省が足りないからではありません

理由は、脳の働きの特性にあります。


「考えれば分かる」が成立しない構造

思考の流れを整理すると、以下のようになります。

<定型発達の子ども>
思う
 ↓
一瞬考える
 ↓
言っていいか判断
 ↓
話す

<ADHDの子ども>
思う
 ↓
話す

ADHDの子どもは、「考える」「判断する」という工程が、話す前に入りにくいのです。

後からなら、「言わなきゃよかった」「傷つけた」と理解することはできます。

でも、言葉が出る前には考えが追いつかないんです。

この状態の子どもに、「ちょっと考えれば分かるよね」と言うのは、まだついていないブレーキを踏め、と言っているのと同じなんです。


この言葉がもたらす、もう一つの問題

「考えれば分かるよね」は、子どもにはこのように伝わってしまいます。

・分かっていない自分はダメ。
・できない自分はおかしい。
・何度も言われる=期待されていない。

結果、子どもの行動は変わらず、自己肯定感だけが下がる。

これは、子どもを支える立場の人間としては一番避けたい結果です。


謝罪ができることと、行動が変わることは別

ADHDの子どもは、言語理解が年齢相応、もしくは高い場合も多くあります。

だから「謝る」「気持ちの言語化」はできます。

ですが、行動をコントロールする力は、別の力です。

謝れる=分かっている=次はできる
この等式は、ADHDの子どもには当てはまりません。


なぜ「謝れば許される」が定着してしまうのか

よくある流れは以下の通りです。

言葉で傷つける
 ↓
注意される
 ↓
相手に謝る
 ↓
許される・関係が戻る

この流れを何度も経験すると、脳はこう学習します。

「取り返しのつかない失敗ではない」
「あとで謝れば大丈夫」

決して悪意があるわけではありませんし、反省していないわけでもありません。

ただ、謝れば許されて、関係も元に戻るという誤学習をしているだけなんです。


支援の考え方を切り替える

ここで大事なのは、「分からせる」ことを目標にしないことです。

目標はただひとつ。

言葉が出る前に、別の行動を入れることなんです。


家庭でできる具体的な支援

① 「言う」判断を本人に任せない

考える前に言葉が出てしまうのを防ぐため、話す前に必ず入れる行動を決めます。

・「今言っていい?」と聞く。
・話す前に一度、大人の顔を見る。
・口に手を当てる、手をぎゅっと握る。

これらの行動は、言っても良いかどうかの許可をもらうためのものではありません。

ブレーキがついていない子どもが、自分で一回止まるための行動です。


② 言葉には「使っていい場所」がある

言葉には使っていい場所があります。

・言わない言葉(見た目・能力・家庭のこと)
・家でだけ言っていい言葉
・どこで言ってもいい言葉

この3種類に分けて、紙に書いて見えることろに貼ります。

「この言葉はどれかな?」と、一緒に確認しましょう。


③ 「ごめんなさい」で終わりにしない

「ごめんなさい」が言えることは、とっても大事です。

でも、それで全部なかったことにはしません。

もし言葉で人を傷つけてしまったら、

・その場を離れる。
・おしゃべりはいったん終了。
・遊びは中断する。

叱らなくて大丈夫です。
自分が言った言葉には結果があることを、経験で覚えていきます。


④ 言わずに済んだときは、必ずほめる

一番大事なところです。

・言いそうだったけど言わなかった。
・言う前に①の行動ができた。

そんなときは、すぐにほめましょう。

「今、止まれたね」
「言わなかったの、すごいね」
「頑張ったね」

発達に特性のある子どもは、成功体験が圧倒的に少なくなりがちです。

だからこそ、できた瞬間を意識的に積み上げる必要があります。


最後に

我慢させることが目標ではありません。
いきなり完璧にできるようにする必要もありません。

大事なのは、言葉が出る前に、一回止まれるようになることです。

そのために、大人が仕組みを作ることが必要なんです。


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