【みほとけの「キュンとくる」智山派仏さま巡り#2】お父さんみたい!? 総本山智積院別院真福寺「薬師如来立像」

仏像大好き芸人 みほとけ
仏像大好き芸人。慶應義塾大学卒業。ミス鎌倉などの活動を経て、本名の「みほ」と大好きな「ほとけ」を掛けたみほとけの名で活動。SNSなどで、寺社や仏像の魅力を伝えている。
Instagramアカウント:mihotoke_chan
※本記事は総合教化誌『生きる力SHINGON』126号に掲載された連載の加筆版となります。
薬師如来立像はお父さんみたい!?
今回は大都会東京のど真ん中、港区愛宕にて、ビル群の中で出会える心の拠り所のお話。
近年「なんちゃらヒルズ」がニョキニョキ樹立している高級エリアです。一方で愛宕神社を中心に、古き良きものが息づく寺社も多いことで有名。その中でも存在感を放つのが総本山智積院別院真福寺です。
ご本尊は薬師如来立像。しっかりした体躯に四角いお顔、ボリュームある螺髪(らほつ)、涼しげな目線…。「お父さんみたいに頼りになりそう〜!」と感じました。
薬師如来さまは性別を超越した存在ですが、醸し出される安心感に男性的な雰囲気を感じたのはやむを得ません。チャームポイントは、顎がぷくっと丸く出ているところ。厚めの衣には仏さまのリアリティと威厳を感じます。


別院真福寺は1605年、照海上人が京橋(中央区)にあった小さな庵を移して本格的に寺院としての歩みを始めました。
江戸幕府が開かれると、真言宗智山派の行政的役割を担う寺として発展。幕府の御触れを関連寺院に伝える「触頭(ふれがしら)」に任命されたため、明治維新の廃仏毀釈も免れました。
現在の建物は平成7年に再建されたビル。しかし……二階の本堂に上がってごらんなさい。本尊の薬師如来さまや曼荼羅、超立派な護摩壇などが並ぶ広々としたお堂になっているんです!
高々と炎の上がる護摩法要も行われ、広々した外陣では「阿字観」も体験できます。体験後には本堂内陣を参拝し、目前で本尊の薬師如来さまを拝むことができます。
お薬師さまを拝む時は、ぜひ衣の動きにご注目を。
厚着の衣をうねらせるように大胆にまとって、仏さまの印象を強調しています。前からだと体幹が太く見えるけど、横から見ると体は薄い。肩は四角く張って動きはぎこちない。
仏師は運慶や快慶の仏像をよく学んでいたのでしょうが……ちょっと個性的になっています。
実はこれ桃山時代の仏像によく見られる特徴なんです!(美術史では1615年まで桃山時代)
鎌倉時代前期のリアリティのある仏像を目指そうと彫刻しているのですが、なかなか再現度が低くて個性的になってしまうような見た目です。
完璧に美しいわけではない、だからこそ愛しいのです。
こちらの薬師如来立像は戦国武将・浅野幸長が1605年に造らせたといわれますが、もしかするともう少し古いかも?なんと胎内には弘法大師作と伝わる薬師如来も納められています。
都会に生きながら、歴史と信仰を確かに伝えるありがたいお薬師さまです。

宇宙を感じて心を整える「アジカン体験」
「アジカン」と聞くと、平成1桁代生まれの私は有名バンドの略称が頭に浮かぶお年頃。しかしここでいうアジカンとは、密教式の瞑想方法のこと。
漢字では「阿字観」と書きます。ざっくりとしたイメージで言うと禅宗寺院で行われる坐禅のようなものですが、坐禅とはまた違った、本格的で伝統的な、いま改めて注目されている瞑想体験なのです。
かくいう私は、この度別院真福寺さまで初めて体験してまいりました!定期的に開催され、無料で体験できるのでぜひお越しください。
阿字観とはどんな瞑想かというと、読んで字のごとく「阿」の「字」を「観想する(観ながらイメージする)」というものです。
詳しく言いますね。まずは1人1つ、50cmほどの掛け軸の前に座ります。
座り方は坐禅とほとんど一緒。両足を組みますが、きつい人は片足でも、あぐらでもOKという寛容な形式です。
掛け軸には、紺色の背景に、白いハスの花にのった月輪(ルビ:がちりん。月の輪っか)がぽっかりと浮かんでいます。満月のようです。その月輪の中に梵字で「阿」の字が描かれます。
位置に着いたら、僧侶からとても丁寧に目線・呼吸・姿勢へのレクチャーがあり、いよいよスタート。
私は「このまま坐禅みたいに静かに数分過ごすのかな〜」と思っていたその時、僧侶より瞑想にまつわる心のイメージが語られ始めたのです!
まるで絵本を読み聞かせてくれるように優しく、ゆっくりと。


内容は、自分の心、体、位置の意識が今ここにあるところから、だんだんと拡大していき地球を飛び出して、宇宙に行きます。
そこまで行ったら、逆行して今のサイズ感に戻ってきます。
わぁ、びっくり、心だけで宇宙旅行をしたのです。すごい。自分の心の壁を取り払って、また戻ってくるという行為で、なんだかストレスが軽くなった気持ちになりました。
私は、密教って、この世界を宇宙全体ぐらい広く捉えて、かつ量子学レベルで緻密にも見ていて、その万物の働きの中に仏さまを見出しているなと思っています。
この広くて小さい世界観を、阿字観を通じて体で覚えた気がしました。あ、いま私は仏さまになりきっているのかも!?と思った次第です。
初体験で初めての感覚でしたが、繰り返しやってみたくなりました。何度もやるときっと感覚が違ってくるのでしょう。
ともかく、心の荷物がちょっと減ったことがいちばん嬉しいことでした。
終わった後、本堂の奥へ行ってご本尊や曼荼羅、弘法大師像などをまじかに参拝させていただきます。
大きな護摩壇の真横を歩いた時、足の裏で何か小さくて硬いものを踏みました。ん・・・?これは・・・小豆だ!
なぜこんなところに小豆が!妖怪あずき洗いの仕業か!?

いいえ、これは護摩法要で使うもの。大きな炎に焚べる複数のお供物のうちの一つに、小豆があるんだとか。
僧侶が投げ入れるので、いくつか散らばってしまうみたいです。まさにパワフルな護摩焚きが行われていることを実感した、楽しい発見でした。(お掃除ご苦労様です!)
阿字観体験については別院真福寺のSNS等で情報が出るのでチェックお願いします!
別院真福寺へ行ってみよう
東京メトロ虎ノ門駅から徒歩5分で(というか地下道を使えばほぼ直結で)来られます。
虎ノ門ヒルズでお買い物をした後に立ち寄ってみるもの良いかもしれません。本格的な密教の本堂を参拝できます。

また、建物の左側には「勝軍地蔵」という珍しいお地蔵さまもいます。駆け抜ける馬に、若武者のようなキリッとしたお顔のお地蔵さまがまたがります。
銅像なので近代アートにも見えるのですが、実は歴史ある本格的な仏像です。
元は戦国時代に”伊賀越え”をする徳川家康の身を護った勝軍地蔵なのです。
かつては、お隣の愛宕神社にあって、円福寺というお寺が別当として護持していました。ただ、明治の廃仏毀釈で円福寺が廃されると、別院真福寺に移されました。
しかし不運なことに、関東大震災で失われてしまいます。時を経て昭和9年(1934年)に、銅像で再び作られたのが現在のお姿です。
「いざ行かん〜!」と言っていそうな勇猛なお地蔵さまは唯一無二です。お外にいるのでいつでも拝めますのでね。合わせてご参拝ください。


今回の“キュンとくる”ポイント

次回のキュンとくる仏さまもお楽しみに!
写真/別院真福寺提供
別院真福寺

アクセス:JR新橋駅 徒歩15分
地下鉄虎ノ門駅 徒歩8分
虎ノ門ヒルズ駅 徒歩3分
住所:東京都港区愛宕1-3-8
電話:03-3431-5218
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