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誇りを手放した両親へ、今伝えたい感謝の言葉

#いまあなたに伝えたいこと

父と母へ。

決して裕福ではなかったけれど、家の中はいつもあたたかかった。

朝早くから畑へ出て、夜暗くなっても納屋で作業を続けていた二人。


私の遊び相手は、納屋にある工具や農具だった。

金槌や鋸、鍬にスコップ。


見よう見まねで空いている土地に柵を作り、自分だけの畑を作る。
それを見て目一杯褒めてくれる父と母が、大好きだった。

小学4年生の頃だろうか。
少しずつ、大人の事情がわかるようになっていた。

「今年は農協から、どのくらい借金をしないといけないか」
「米は採算が合わない。もう今年でやめよう」

そんな会話を耳にして、子ども心にドキンとした。

毎年整備していた田植え機やコンバインはどうなるんだろう。
籾種を蒔く機械や、納屋を改造して作った米の乾燥機は。

そして何より、「今年も美味しい米ができた」と誇らしげに笑う二人は、どうなってしまうんだろう。

その年から、田植え機やコンバインが車庫から出ることはなくなった。
秋の夜通し響いていた、やかましい乾燥機の音も消えた。


クリスマスを間近に控えたある日、母が「サンタさんに何を頼むの?」と聞いてきた。

「僕は、スキーの手袋が欲しい」

母は重ねて聞いた。「何かゲームとか、他に欲しいものはないのかい?」

「うん、今年はスキーをいっぱいしたいから、手袋がいいんだ」

本当は、友達が持っているラジコンが欲しかった。
けれど、言えるわけがなかった。

自分たちの誇りを諦めて、田んぼも手放した親に、わがままなんて言えるわけがないじゃないか……。

クリスマス当日、ご馳走とケーキを囲んで楽しく過ごした。
翌朝、目が覚めると枕元にプレゼントが置いてあった。

そこには、スキーの手袋と一緒に、ラジコンがあった。

欲しかったものとは少し形が違ったけれど、涙が止まらなかった。
私は一生懸命にサンタへの返事の手紙を書き、母に手渡した。


そんな私も今は家族を持ち、それなりに社会人をやっている。

父は長年の農作業がたたり、膝を壊して両手に杖がないと歩けない。
母は、そんな父を支えながら介護のような生活を送っている。

今更、面と向かって「ありがとう」なんて、照れくさくて言えない。

けれど、そうだ。
父さん、母さん。

今度、私の嫁や子どもたちと一緒に、温泉でも行かないか。


そこで、昔の話をたくさん聞かせてほしい。

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