なぜかずっと覚えている!バスの車内アナウンスが持つ「耳に残る」仕組み
通勤や通学、お買い物でバスに乗っているとき。「次は〇〇、〇〇クリニック前です」「お口の健康を守る、〇〇歯科へはこちらでお降りください」といった車内アナウンスのフレーズやメロディが、なぜか一日中頭から離れなくなった……という経験はありませんか?
実はこれ、単なる偶然ではありません。バスの車内アナウンスには、私たちが無意識に覚えてしまう「耳に残る仕組み」が隠されているのです。
今回は、あのフレーズがずっと記憶に残る理由と、地域ビジネスにおける最強の広告戦略について紐解いていきます。
1. 無意識に刷り込まれる「単純接触効果」という仕組み
人間の脳には「ザイオンス効果(単純接触効果)」と呼ばれる仕組みがあります。これは、「繰り返し接するものに対して、無意識のうちに好意度や印象が高まる」という法則です。
バスは、毎日・毎週同じルートを利用する人が多い交通機関です。そのため、「行き」と「帰り」で何度も同じアナウンスを耳にすることになります。最初は気にも留めていなかった「〇〇クリニック」という名前も、何十回と聞くうちに脳が勝手に「おなじみの身近な存在」として認識し始めるのです。
実際にSNSでも、こんな「あるある」がよく投稿されています。
府中2年目にしてちゅうバスの車内アナウンスを全部覚えてしまった
— KUMA!☆ @USCPA勉強中 (@KumaShijima) February 25, 2019
歯並びといえば千葉〇〇歯科
— こえびた (@koebita) August 1, 2023
千葉〇〇歯科といえば歯並び
バス内のアナウンス宣伝が
頭から離れないぞ
熊本バスなう。
— hidamari@心ぴょんぴょん。 (@hidamarisketch3) July 3, 2021
水前寺公園前・県立図書館入り口バス停のテープ広告、たぶん20年以上変わらないセリフ。
もう覚えてる。
蛇島肛門科外科前 pic.twitter.com/MYFR9jcatU
このときも、「次は、東武駅前、東武駅前でございます。(広告放送)東武線ご利用のお客様は、お乗り換えです。このバスは、JR宇都宮駅まで参ります。まいど、市営バスをご利用いただきまして、ありがとうございます。どなた様も、お忘れ物のないように、ご注意願います。」って脳内再生よ() https://t.co/yDFa6pTuLN
— 長門にいろく@駅メモ&まいてつ🍊 (@Nagato_Niroku) October 10, 2022
スキップボタンで飛ばせるスマホの広告などと違い、生活の中で自然と「耳」から入ってくる音声は、無意識の記憶に定着しやすいという大きな強みを持っています。
2. 記憶をさらに増幅させる「有名声優」の起用
こうした「音声」の強みを活かし、最近では乗客の耳を“意図的に”惹きつける工夫も進んでいます。その代表例が、人気アニメなどで活躍する「有名声優」さんの車内アナウンス起用です。
例えば近年では、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』などで活躍する人気声優さんが、期間限定で路線バスの車内アナウンスを担当してSNSで大きな話題を呼びました。全国各地のバス会社でも、ご当地ゆかりのキャラクターや声優を起用する事例が増えています。
プロの魅力的な良い声で「次は〇〇神社前です」と読み上げられると、スマホを見ていても思わずハッと顔を上げてしまいますよね。「あの声が聞きたい!」とわざわざその路線に乗るファンもいるほどで、SNSでの拡散力と記憶への定着において圧倒的な威力を発揮しています。
こんばんは!担当Kです!
— 京王電鉄広報 【公式】 (@keiopr_official) July 9, 2021
声優・『鬼頭明里』さんによる車内アナウンスを7月1日から西東京バスの一部路線でスタートしました✨
実際に私も乗車してきましたので
特別に一部をご紹介しちゃいます👺
車内のバス停名表示機も鬼滅の刃『禰󠄀豆子』の着物デザインにもなった麻の葉文様になっていました♡ pic.twitter.com/dvxCRVdj4x
ま、まさか高槻市交通部がこのようなことをやるとは思わなかった
— 急行ワケコバ (@Exp_wakekoba) October 22, 2021
最近のアニメ作品には疎い当方でも声とお名前は存じている
全国のファンの皆さん これを気に是非高槻市営バスへご乗車を
「イケボバス」運行開始!人気声優・福山潤さんが車内アナウンスを担当/高槻市営バスhttps://t.co/EMzk0CTjdq
3. 地域の一体感を生み出す!「地元スポーツチーム」とのコラボ
「有名声優」の起用だけでなく、地域に根ざした「地元スポーツチーム」の選手や監督が車内アナウンスを担当する事例も非常に人気を集めています。
たとえばプロ野球では、実際にこんなSNSの投稿が見られます。
ただいま、横浜DeNAベイスターズの石田裕太郎選手、山本祐大選手、筒香嘉智選手によるバス車内アナウンス放送中です!
— 横浜市交通局 (@yokohama_koutuu) March 27, 2026
また、相川亮二監督、東克樹選手、牧秀悟選手、筒香嘉智選手ビジュアルで彩られたラッピングバスも走行中!https://t.co/OgqKqHzSRX #横浜市交通局 #横浜市営バス #baystars pic.twitter.com/OSSjci5wUf
さらにこの取り組みは、野球にとどまらず様々な競技へと広がっています。北海道では、プロバスケットボールチームとのこんなコラボも話題になりました。
#富永啓生 選手がバス車内アナウンス‼️
— 【公式】北海道中央バス@観光/Notte.-ノッテ (@Notte_0701) December 2, 2025
今シーズンも実施の#北海道中央バス #レバンガ北海道 車内放送📢
札幌ターミナルから発車の
「02屯田線」と「36篠路駅前団地線」では
なんと!富永啓生選手のアナウンスを
聞くことができます😲😲😲
北海道中央バスはレバンガ北海道を
全緑応援しています❗️ pic.twitter.com/Drz6Yica9v
日常的に利用するバスの中で、地元のスター選手の声が聞こえてくると、乗客は思わず親近感を抱き、ワクワクした気持ちになりますよね。
こうしたスポーツチームとのコラボは、単なる情報の伝達を超えて、「地元チームをみんなで応援しよう!」という機運を高め、地域に一体感を生み出す素晴らしい価値を持っています。広告主となる企業にとっても、地域密着や地域貢献の姿勢を自然な形でアピールできる効果的な手法と言えます。
4. ご当地感で記憶に刻む!九州・沖縄の「BGM付きバス」
さらに、地域ならではのユニークな「聴覚へのアプローチ」もあります。九州や沖縄の一部路線バスでは、なんと車内アナウンスと一緒に「BGM」が流れる車両が存在するのをご存知でしょうか?
例えば沖縄では、ご当地感あふれる琉球民謡や三線(さんしん)のゆったりとしたメロディが車内に流れていることがあります。九州でも、特定の路線で独自のBGMやジングルを流して運行しているバスがあります。
音楽(BGM)には、人の感情をリラックスさせ、記憶を強く結びつける効果があります。心地よいご当地メロディを背景に「〇〇クリニックはこちらです」という案内が耳に入ってくることで、無機質な音声よりも何倍も深く、あたたかい記憶として乗客の頭にインプットされるのです。
那覇のバスすげ〜 車内広告アナウンスで音楽が流れる(笑)
— Toshi Yoshida(Yossy・よしこ) (@toshiyoshida123) January 7, 2012
西肥バス 重尾→佐世保駅前→大野 https://t.co/V3s73ZZMvC @YouTubeより
— ばすてい!🚏 (@nagabus_busstop) November 2, 2020
西肥バスの車内アナウンスは、音楽が流れるアナウンスが多いなぁと子供心に思ってた
5. 最強の組み合わせは「耳」+「目」の相乗効果
「なるほど、じゃあ音声アナウンスだけ出稿すればいいんだ!」と思われるかもしれませんが、実はさらに効果を跳ね上げる方法があります。
それが、「音声(アナウンス)」と「視覚(車内ポスター・ステッカー)」の掛け合わせです。



人間の脳は、複数の感覚から同時に情報を得ると、記憶への定着率が劇的にアップします。
ぼんやりとバスに乗っているとき、アナウンスで「次は〇〇〜」と耳から情報が入る。その瞬間にふと顔を上げた先、あるいは降りようと立ち上がった先に、このような「アナウンスと同じお店のポスター」が貼ってあったらどうでしょうか。
「あ、今アナウンスで言っていた病院(お店)だ」と、脳内で情報がカチッと繋がり、圧倒的な納得感とともに記憶に刻み込まれるのです。
6. 地域密着ビジネスを支える見えないインフラ
派手な話題を呼ぶことはなくても、バス広告は地域の人々の「無意識」に寄り添い、じわじわと信頼感を築き上げるのが得意です。
「そういえば、歯医者に行かなきゃな…」と思ったとき、ふと無意識に思い浮かぶあの名前。それこそが、バスの車内アナウンスとポスターが日々生み出している確かな広告効果の証なのです。
次にバスに乗る際は、ぜひ車内に流れる「音声」にも少し耳を傾けてみてください。「このフレーズ、覚えやすいな」「この声、なんだか安心するな」といった、地元ならではの面白い発見があるはずです。
「バス広告って意外と奥が深いんだな」と少しでも感じていただけたら嬉しいです!今回のコラムを楽しんでくださった方は、ぜひ♡(スキ)をタップして応援していただけると励みになります。

