聖堂
酷く美しい男だ。
私は、彼を知らない。
「人間は、まったく邪悪だよね」
聖堂の真ん中で
端正な顔を歪めながら、笑った。
「僕らほど、信心を知る者はいないのに
それを最大の敵と言うのだもの」
「試されないといけないほどに
君たちのそれは脆いんだ」
「だから、僕らはいる
僕たちは、君たちを見守る試験官のようなものさ」
祈る。
ただただ、祈る。
「君の体にも、心にも欲はあるだろう。
捨てられるものかい
無くなるものかい
でも、闘い続けることは出来るのだろう」
「なら、それを示してご覧よ。
それを見届けるのが僕の
僕らの存在意義なんだから」
声を聞くな。
去れ、立ち去れ。
「ねぇ、君は何を望む
何をしたい、どうしたい
人は、人を救えないぞ
神は、人を救うのかい
さぁ、答えてよ」
真に、人を救うのは…
「信心かな、愛かな
なんだろうね、なんなんだろうね」
「ほら、答えてよ」
『 』だ。
「…答えたね。
耳を傾けた
そして、辿り着いてしまった。
それが君の弱さだよ」
…
聖堂には、誰もいなくなった。
町では、その日に
翼を持った何かが2つ空へと飛ぶのが見えたと
騒ぎになったが
その話も1週間も立たないうちに
消えてしまった。
司祭の行方は、わからない。
『聖堂』
