【映画】「シラート」感想・レビュー・解説

面白かった。のだけど、個人的には「予告で煽りすぎじゃない?」と思った。確かに煽りたくなる気持ちは分かるけど、ただ、これ煽られた上で観た場合、期待を超えるかなぁ。いや、人によっては超えると思うけど、「予告詐欺じゃない?」と感じる人も結構いるんじゃないかな。

というのも本作には、「ほぼストーリー」が存在しないからだ。いや、ほぼストーリーが存在しなくてもいいのだけど、問題は「ストーリーが存在しそうな感じで始まっていく」という点にある。

本作は、「砂漠で行われているレイブパーティーに娘を探しに親子がやってくる」みたいなところから始まっていく。となれば当然だが、この「娘探し」が物語の本筋になる、と考えるのが自然じゃないだろうか?

しかし、全然そんなことはない。まったくと言っていいほど「娘探し」は関係ないのだ。まあ、「関係ない」と言い切ってしまうのも違うだろうが、物語全体としてはマジで、この「娘探し」は大した意味を持たない。

個人的には、この点がちょっと嫌だったなあ、と思う。「娘探し」という設定なしで本作のような物語が展開されていればもっと違った見方が出来たように思うのだけど、僕は基本的に「娘探しはどう展開するんだろう?」という興味で物語を追おうとしていたので、そういう人間からすると「おいおい」って感じである。

本作を映画『マッドマックス』と比較する声もあるようだが、僕が観た『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は最初の最初からストーリーなんかなかった記憶があって、だからそのぶっ飛んだ展開とか映像が良いと思えた。『マッドマックス』、クソ面白かったんだよなぁ。一方、本作『シラート』では、「娘探し」は物語の導入の道具にすぎず、「主人公がイカれた状況に存在する理由付け」程度に意味合いしかない。だったら『マッドマックス』ぐらい振り切って、「ストーリーなんか皆無」みたいに展開させてくれた方が良かった。

僕的にはどうしてもこの点への違和感が拭えず、だから、本作を高く評価することは出来ない。「体験」としてはなかなか凄かったと思うし、臨場感とか緊迫感なんかも圧倒的で、中盤以降確かに「すげぇな」って感じにはなるのだけど、「ストーリーを置き去りにするなら、最初から意味ありげな設定を置くなよ」という部分がどうしても引っかかって、何なら怒りさえ覚えるぐらいである。

映像と音楽はとにかく凄くて、特に、普段全然音楽を聴かない僕のテンションも上げてくるような音楽は素晴らしかった。全編砂漠で展開される物語も凄まじいし、「これ実際に車走らせてるんだよな?」と思うような状況での撮影も多々あって、「自然の脅威」的な意味でも迫るものがある。正直なところ、ちょうど半分ぐらいのところである衝撃的な出来事が起こるまで、展開はほぼ存在しないと言っていいのだが(物語的にも映像的にも)、中盤のその衝撃と、あとラスト30分かな、ここはやはり衝撃的だ。

さて、冒頭で「シラート」の説明があった。これは「地獄と天国を繋ぐ橋」なのだそうだ。しかしその橋は「髪の毛ほど細く、剣ほど鋭い」らしい。要するに、「ルートは存在するが、現実には渡れない」ということだろう。日本でいうと「蜘蛛の糸」みたいなものなんだろうなと思う。

で、ラスト30分の展開は、まさに「シラート」「蜘蛛の糸」を想起させるような展開で、タイトルズバリという感じだった。ここは確かに圧巻である。

まあとにかく、「ストーリー展開とか別に気にしない」みたいな人にはメチャクチャ良い映画だろう。逆に、ストーリー展開大事だよね、という人は、マジで観なくてもいいと思う。


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