芥川龍之介「西郷隆盛」
※ネタバレあり
この作品は、以前読んだことがあり、そのときも印象は良かったのですが、今回再読し、なかなか感銘深いものがあったので、少し語ります。
===========================================
語り手(芥川?)が出会った、「本間さん」が学生のときの話。
本間は、史学科の学生で、寝台急行で旅をしていた。
そこで老紳士と出会う。
老紳士と歴史の話になる。
老紳士は、西郷隆盛は、城山で戦死していず、まだ、生きていると言う。
史料に関する信頼があった本間は、老紳士が、歴史学のズブの素人だと見下す。
そんな中、老紳士は、西郷隆盛が、今、この列車に乗っているのだ……と、明かす。
驚いた本間は、老紳士と共に一等車にいき、眠っている白頭で巨体の老人を見る。
本間は、イメージしていた西郷にピッタリの人物を見せつけられ、自説の「城山戦死説」が揺らぐ……。
そのあとも、本間と老紳士は食堂車で談ずる。
そして、あるタイミングで老紳士は、「一等車の人物は自分の友人の医者」であること明かす。
老紳士は、本間に、歴史の「不可知性」について、悪戯を通して教えたのだ……。
===========================================
と、まぁ、こういったあらすじなのだが、
ぼくにとってこの小説は、
「歴史の不可知性」よりも、
本間が、「西郷隆盛」を見るシーンに惹き付けられた。
芥川の筆の巧さもあいまって、
読者であるぼくにも、老いた(けれども、いまだ英雄のオーラをまとっている)西郷隆盛の姿がまじまじとイメージできたからだ。
老紳士が「あれはドッキリでした」と明かさなければ、この小説は、「西郷隆盛が大正時代にも生きていた(かも)」といった内容になる。
つまり、小説には、「「虚」を「実」に変える魔術的な力」があることを、
期せずして芥川は証明しているのである。
