仕事と暮らし|「住民税が高いのよ〜」は勘違い?「負担感」の意外な正体
はじめに
こんにちは。
アラ還サラリーマン、そして1級ファイナンシャル・プランニング技能士です。
「私の住んでるところ、住民税が高いのよ〜」
「わかる!うちの自治体も高くて損してる気がする」
給与明細を眺めながら、あるいはご近所さんとの雑談で、こんな会話を耳にしたことはありませんか?
財政難がニュースになる自治体や、大都市のイメージ先行で「あそこは税金が高い」と噂されることはよくあります。
でも、ちょっと待ってください。
「住民税って、本当に住む場所によってそんなに差がつくものなのでしょうか?」
今回は、この「住民税の都市伝説」について、感情論を一切抜きにして「数字ベース」で徹底的に検証してみます。
結論から言うと、私たちが信じ込んでいた“常識”は、見事なまでに崩れ去ることになります。
そもそも住民税って、どんな仕組み?
まずは、前提となる仕組みをざっくりとおさらいしておきましょう。
住民税は、「前年の所得」に対して、いま住んでいる都道府県と市区町村に支払う税金です。
会社員の方は、毎年6月から翌年5月にかけて、毎月の給料から天引き(特別徴収)されています。
この住民税の構造は、大きく「2つのパーツ」でできています。
① 所得割(所得に応じて変動する部分)
前年の所得金額に一定の税率をかけて計算する、住民税の「本体」です。
●都道府県民税:4% 市区町村民税:6% 合計:約10%
「うちは地方だから高い」「東京だから安い」ということはなく、この「10%」という税率は原則として日本全国どこへ行っても同じです。
② 均等割(全員一律で定額の部分)
所得に関わらず、その地域に住む人が一律で負担する「会費」のような部分です。
基本料金:年5,000円前後(※2024年度からは森林環境税の国税1,000円が含まれ、震災復興の特例措置が終了したため、概ね国税・地方税合わせて年5,500円がベースとなっています)
「あれ?じゃあどこで差がつくの?」と思いますよね。
実は、一部の自治体では独自に数百円〜数千円を上乗せする「超過課税」(例:森林保全や緑化のための税)を導入しています。
では、この「微々たる上乗せ」や「一部の減税」が、実際の納税額にどれくらい影響するのか。
具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。
【実験】年収500万円・条件をそろえて5都市を比較!
条件を完全にそろえて、全国の代表的な都市で「年間住民税」を試算してみます。
★ 想定モデル
年収:500万円(独身・会社員)
一般的な社会保険料控除、基礎控除のみ(その他控除なし)
課税所得:約330万円前後
この条件で計算した、各都市の住民税(年額・概算)がこちらです。
【都市:住民税(概算)】
東京23区 約33.5万円
横浜市 約33.6万円
名古屋市 約33.4万円
大阪市 約33.5万円
福岡市 約33.4万円
※名古屋市は、全国でも珍しい「市民税の一律5%減税」を継続しているため、他都市よりわずかに安くなる傾向があります。
※千円未満は四捨五入ベースのイメージです。
実際の税額は個人の控除状況や最新の自治体条例によりわずかに変動します。
……あれ? 思ったより、まったく差がない。
よく「税金が高い」と噂される横浜市と、全国で唯一「市民税一律減税」をアピールしている名古屋市。
この2つを比べてみても、その差は年間でわずか「2,500円」程度です。
月に換算すると約200円。
コンビニのドリップコーヒー1杯分か、ペットボトル飲料1本分程度の違いしかありません。
財政破綻が深刻に報じられた夕張市でさえ、現在は標準税率が適用されているため、住民税単体で見れば他の自治体とほぼ同じです。
つまり、「住民税が高い街、安い街」という基準で引っ越し先を選ぶのは、完全にナンセンスだと言えます。
では「住民税が高い気がする」の正体は何か?
これほど差がないのにもかかわらず、なぜ私たちは「あの街は高い、安い」と感じてしまうのでしょうか?
そこには、巧妙な「脳の錯覚」と、「本当に差がある別のコスト」が隠されています。
体感的な負担の差を生み出している「真犯人」は、以下の4つです。
1. 住民税ではなく「国民健康保険料」の罠
(※自営業・フリーランス等)
会社員ではない方(フリーランス、退職された方など)にとって、自治体格差の最大の真犯人はこれです。
国民健康保険料は、自治体ごとの医療費の状況や財政状態によって計算式が全く異なります。
同じ年収、同じ家族構成であっても、住む場所が違うだけで年間「数万円〜十数万円」も保険料が変わることは日常茶飯事です。
この負担感が、なぜか「住民税が高い」と誤認されがちです。
2. 「ふるさと納税」や「控除」による時差の錯覚
住民税は、前年の所得に対して「翌年」に課税されるシステムです。
「去年はふるさと納税をたくさんしたから、今年の住民税が安くなった」
「一昨年は住宅ローン控除があったのに、期間が終わって急に高くなった」
こうした自分自身のライフイベントや控除の有無による「前年との差」を、自治体の差だと勘違いしてしまうケースが非常に多いのです。
3. 子育て世代を直撃する「隠れコスト」の差
税金の「引き去り額」ではなく、「出ていくお金(出費)」の差です。
保育料・学童保育の料金
子どもの医療費助成の対象年齢(15歳までか、18歳までか)
所得制限の壁(一定以上の年収があると補助金がゼロになるか否か)
これらは自治体の財政力や政策によって天と地ほどの差があります。
税率は同じ10%でも、「行政から戻ってくる恩恵(サービス)」に差があるため、結果として「この街はコストパフォーマンスが悪い=税金が高い気がする」という不満に繋がります。
4. 日常を脅かす「水道料金」の格差
毎日使う水道料金も、自治体によって数倍の開きがあります。
水源が近くにある街と、遠くから引っ張ってこなければいけない街、あるいは人口減少でインフラ維持が苦しい街では、基本料金そのものが全く異なります。
結論:住民税の差はほぼ「誤差」。見るべきは別の場所
今回のまとめです。
住民税の「所得割(10%)」は日本全国ほぼ共通
自治体ごとの差は、出てみても「年間数千円」の誤差レベル
「住民税が高い街」の正体は、イメージ・国保・行政サービスの差
次に誰かが「うちの地域、住民税が高くてさ〜」と言っていたら、心の中でそっと教えてあげてください。
(それ、住民税じゃなくて、国保か水道代か、お子さんの補助金の差かもしれませんよ……!)と。
イメージや噂に惑わされず、数字の正体を見極めると、家計のハテナもすっきり解決しますね。
最後までお読みいただき、
誠にありがとうございました。
【執筆:アラ還FP】
アラ還サラリーマンFPです。
FP目線のお金の話、仕事の話、エッセイなどを、お届けしています。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
『アラ還のぼやき』というエッセイも細々と連載しています。お時間のある時にでも、ふらっと立ち寄っていただけると嬉しいです。
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