記憶にまつわる映画2

「妻への家路」(14年中国)チャン・イーモウ監督

中国の巨匠チャン・イーモウと人気女優コン・リーが、8年ぶりにタッグを組んだヒューマンドラマ。記憶障害で夫を他人だと思い込む妻と、そんな妻に寄り添い続ける夫の姿を描いた作品。

【1977年、文化大革命が終結し、収容所から解放されたルー・イエンチー(チェン・ダオミン)は、妻のフォン・ワンイー(コン・リー)のもとに帰還するとの手紙を出す。

ワンイーは毎日、駅へ夫を迎えに通う。「五日に帰る」と手紙に書いたとおり、イエンチーは駅に着き列車から降りてくるが、プレートを掲げたワンイーは全く気づいてくれない。

夫を待ちわびるあまり、その心労から記憶障害となっていたワンイーは、イエンチーを夫だと認識することができなかった。

イエンチーは、いつか妻の記憶が戻ることを信じて、他人として向かいの家に住み始める。写真を見せて思い出させようとするが、イエンチーの写真は全て娘によって切り取られていた。ピアノ好きだった夫のために調律したいとワンイーが言うので、イエンチーは調律師に扮して修理するが、ワンイーは曲だけを思い出してイエンチーを夫だと思い出してはくれない。

イエンチーからのワンイー宛ての、大量の手紙が入った荷物がようやく届く。今度こそ思い出してもらえるのではと、イエンチーはワンイーに手紙を読んであげるが、ワンイーにとってイエンチーは「手紙を読む人」にすぎない。

そうして何年もの年月が巡る。雪の中、いつものようにイエンチーは幌付きの自転車でワンイーを迎えにくる。ふたりで駅へ”夫”を迎えに行くが、今日も虚しく待つだけの”五日”が終わる。】


この映画には参りました。脱帽です。おみそれしました。

しんしんと降り積もる雪景色、凍える駅舎を見上げて佇む”夫婦”である男女。温め合えるはずの2人なのに越えられない壁の前で途方に暮れるばかり。

冷たく透き通るような儚さと美しさに、私はただ泣きました。いつまでも心を離れず、胸の奥底を揺さぶり続ける哀しい愛に泣きました。

とりわけ、夫を演じた中国の国民的俳優チェン・ダオミンの、思慮深い佇まいと涙ぐましい努力のいじらしさには、堪えきれない感情が溢れてどうしようもありませんでした。

これも夫婦のカタチといってしまえばそうなのでしょう。深く愛していたがために精神を蝕まれた妻と、他人のまま傍でひたすら見守り続ける夫。

そのままでいいから、この先もずっと2人の関係が、粛々と続いていけばいいと願わずにいられませんでした。

ところで、以前どこかで聞いた某ケアマネさんの言によると、認知症になった”お姑さん”が最後まで覚えているのは”お嫁さん”で、あっさり忘れられてしまうのは圧倒的に配偶者だそうです。

憎しみ(その他の悪感情)は、愛情より強し、手ごわし、ねちっこし・・・ということでしょうか。くわばらくわばら

いいなと思ったら応援しよう!